〔問題〕
借地権及び底地の鑑定評価に係る次の記述のうち、正しいものはどれか。
⑴ 借地権の存在は、必ずしも借地権の価格の存在を意味するものではなく、また、借地権取引の慣行について、借地権が単独で取引の対象となっている都市又は地域と、単独で取引の対象となることはないが、底地の取引に随伴して取引の対象となっている都市又は地域とがある。
⑵ 定期借地権の鑑定評価に当たって、定期借地権は契約期間の満了に伴い同一条件で更新されることがあることに留意すべきである。
⑶ 借地権及び底地の鑑定評価においては、預り金的性格を有する一時金についてはその運用益及び償却額を、前払地代に相当する一時金については各期の前払地代及び運用益を、それぞれ考慮するものとする。
⑷ 借地権者に帰属する経済的利益には、土地を長期間占有し、独占的に使用収益し得る借地権者の安定的利益も含まれる。
⑸ 借地権の取引慣行の成熟の程度の高い地域における借地権の鑑定評価額は、借地権及び借地権を含む複合不動産の取引事例に基づく比準価格を標準に、土地残余法による収益価格を比較考量して決定するものとする。
解答
解説
この問題は、各論第1章第1節「土地」から問われている問題です。
(1):誤
借地権の存在は、必ずしも借地権の価格の存在を意味するものではなく、また、借地権取引の慣行について、借地権が単独で取引の対象となっている都市又は地域と、単独で取引の対象となることはないが、底地の取引に随伴して取引の対象となっている都市又は地域とがある。
「借地権の取引慣行」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意借地権の存在は、必ずしも借地権の価格の存在を意味するものではなく、また、借地権取引の慣行について、借地権が単独で取引の対象となっている都市又は地域と、単独で取引の対象となることはないが建物の取引に随伴して取引の対象となっている都市又は地域とがある【639】
従って、「底地の」とする本肢は誤りです。
(2):誤
定期借地権の鑑定評価に当たって、定期借地権は契約期間の満了に伴い同一条件で更新されることがあることに留意すべきである。
「定期借地権の特徴」について述べられた選択肢であり、留意事項には「定期借地権は、契約期間の満了に伴う更新がなされないこと【2460】」と記載されています。
従って、「更新される」とする本肢は誤りです。
(3):誤
借地権及び底地の鑑定評価においては、預り金的性格を有する一時金についてはその運用益及び償却額を、前払地代に相当する一時金については各期の前払地代及び運用益を、それぞれ考慮するものとする。
「一時金の扱い」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意借地権及び底地の鑑定評価においては、預り金的性格を有する一時金についてはその運用益を、前払地代に相当する一時金については各期の前払地代及び運用益を、それぞれ考慮するものとする【2461】
従って、「運用益及び償却額」とする本肢は誤りです。
(4):正
借地権者に帰属する経済的利益には、土地を長期間占有し、独占的に使用収益し得る借地権者の安定的利益も含まれる。
「借地権者に帰属する経済的利益」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意土地を長期間占有し、独占的に使用収益し得る借地権者の安定的利益【648】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
(5):誤
借地権の取引慣行の成熟の程度の高い地域における借地権の鑑定評価額は、借地権及び借地権を含む複合不動産の取引事例に基づく比準価格を標準に、土地残余法による収益価格を比較考量して決定するものとする。
「借地権の鑑定評価」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意借地権の鑑定評価額は、借地権及び借地権を含む複合不動産の取引事例に基づく比準価格、土地残余法による収益価格、当該借地権の設定契約に基づく賃料差額のうち取引の対象となっている部分を還元して得た価格及び借地権取引が慣行として成熟している場合における当該地域の借地権割合により求めた価格を関連づけて決定するものとする【652】
従って、「収益価格を比較考量して」とする本肢は誤りです。