不動産鑑定評価基準

各論第1章:価格に関する鑑定評価

第1章 価格に関する鑑定評価

第1節 土地

Ⅰ 宅地【626】
1.更地【627】
更地の鑑定評価額は、更地並びに配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。当該更地の面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等においては、さらに次に掲げる価格を比較考量して決定するものとする(この手法を開発法という。)。【628】
(1)一体利用をすることが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更地に最有効使用の建物が建築されることを想定し、販売総額から通常の建物建築費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格【629】
(2)分割利用をすることが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更地を区画割りして、標準的な宅地とすることを想定し、販売総額から通常の造成費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格【630】
なお、配分法及び土地残余法を適用する場合における取引事例及び収益事例は、敷地が最有効使用の状態にあるものを採用すべきである。【631】
2.建付地【632】
建付地は、建物等と結合して有機的にその効用を発揮しているため、建物等と密接な関連を持つものであり、したがって、建付地の鑑定評価は、建物等と一体として継続使用することが合理的である場合において、その敷地(建物等に係る敷地利用権原のほか、地役権等の使用収益を制約する権利が付着している場合にはその状態を所与とする。)について部分鑑定評価をするものである。【633】
建付地の鑑定評価額は、更地の価格をもとに当該建付地の更地としての最有効使用との格差、更地化の難易の程度等敷地と建物等との関連性を考慮して求めた価格を標準とし、配分法に基づく比準価格及び土地残余法による収益価格を比較考量して決定するものとする。【634】
ただし、建物及びその敷地としての価格(以下「複合不動産価格」という。)をもとに敷地に帰属する額を配分して求めた価格を標準として決定することもできる。【635】
3.借地権及び底地【636】
借地権及び底地の鑑定評価に当たっては、借地権の価格と底地の価格とは密接に関連し合っているので、以下に述べる諸点を十分に考慮して相互に比較検討すべきである。【637】
① 宅地の賃貸借等及び借地権取引の慣行の有無とその成熟の程度は、都市によって異なり、同一都市内においても地域によって異なることもあること。【638】
② 借地権の存在は、必ずしも借地権の価格の存在を意味するものではなく、また、借地権取引の慣行について、借地権が単独で取引の対象となっている都市又は地域と、単独で取引の対象となることはないが建物の取引に随伴して取引の対象となっている都市又は地域とがあること。【639】
③ 借地権取引の態様【640】
ア 借地権が一般に有償で創設され、又は継承される地域であるか否か。【641】
イ 借地権の取引が一般に借地権設定者以外の者を対象として行われる地域であるか否か。
ウ 堅固建物の所有を目的とする借地権の多い地域であるか否か。
エ 借地権に対する権利意識について借地権者側が強い地域であるか否か。
オ 一時金の授受が慣行化している地域であるか否か。
カ 借地権の譲渡に当たって名義書替料を一般に譲受人又は譲渡人のいずれが負担する地域であるか。
④ 借地権の態様【642】
ア 創設されたものか継承されたものか。【643】
イ 地上権か賃借権か。
ウ 転借か否か。
エ 堅固の建物の所有を目的とするか、非堅固の建物の所有を目的とするか。
オ 主として居住用建物のためのものか、主として営業用建物のためのものか。
カ 契約期間の定めの有無
キ 特約条項の有無
ク 契約は書面か口頭か。
ケ 登記の有無
コ 定期借地権等(借地借家法第二章第四節に規定する定期借地権等)
(1)借地権【644】
① 借地権の価格【645】
借地権の価格は、借地借家法(廃止前の借地法を含む。)に基づき土地を使用収益することにより借地権者に帰属する経済的利益(一時金の授受に基づくものを含む。)を貨幣額で表示したものである。【646】
借地権者に帰属する経済的利益とは、土地を使用収益することによる広範な諸利益を基礎とするものであるが、特に次に掲げるものが中心となる。【647】
ア 土地を長期間占有し、独占的に使用収益し得る借地権者の安定的利益【648】
イ 借地権の付着している宅地の経済価値に即応した適正な賃料と実際支払賃料との乖離(以下「賃料差額」という。)及びその乖離の持続する期間を基礎にして成り立つ経済的利益の現在価値のうち、慣行的に取引の対象となっている部分
② 借地権の鑑定評価【649】
借地権の鑑定評価は、借地権の取引慣行の有無及びその成熟の程度によってその手法を異にするものである。【650】
ア 借地権の取引慣行の成熟の程度の高い地域【651】
借地権の鑑定評価額は、借地権及び借地権を含む複合不動産の取引事例に基づく比準価格、土地残余法による収益価格、当該借地権の設定契約に基づく賃料差額のうち取引の対象となっている部分を還元して得た価格及び借地権取引が慣行として成熟している場合における当該地域の借地権割合により求めた価格を関連づけて決定するものとする。【652】
この場合においては、次の(ア)から(キ)までに掲げる事項(定期借地権の評価にあっては、(ア)から(ケ)までに掲げる事項)を総合的に勘案するものとする。【653】
(ア)将来における賃料の改定の実現性とその程度【654】
(イ)借地権の態様及び建物の残存耐用年数
(ウ)契約締結の経緯並びに経過した借地期間及び残存期間
(エ)契約に当たって授受された一時金の額及びこれに関する契約条件
(オ)将来見込まれる一時金の額及びこれに関する契約条件
(カ)借地権の取引慣行及び底地の取引利回り
(キ)当該借地権の存する土地に係る更地としての価格又は建付地としての価格
(ク)借地期間満了時の建物等に関する契約内容
(ケ)契約期間中に建物の建築及び解体が行われる場合における建物の使用収益が期待できない期間
イ 借地権の取引慣行の成熟の程度の低い地域【655】
借地権の鑑定評価額は、土地残余法による収益価格、当該借地権の設定契約に基づく賃料差額のうち取引の対象となっている部分を還元して得た価格及び当該借地権の存する土地に係る更地又は建付地としての価格から底地価格を控除して得た価格を関連づけて決定するものとする。【656】
この場合においては、前記ア(ア)から(キ)までに掲げる事項(定期借地権の評価にあっては、(ア)から(ケ)までに掲げる事項)を総合的に勘案するものとする。【657】
(2)底地【658】
底地の価格は、借地権の付着している宅地について、借地権の価格との相互関連において借地権設定者に帰属する経済的利益を貨幣額で表示したものである。【659】
借地権設定者に帰属する経済的利益とは、当該宅地の実際支払賃料から諸経費等を控除した部分の賃貸借等の期間に対応する経済的利益及びその期間の満了等によって復帰する経済的利益の現在価値をいう。なお、将来において一時金の授受が見込まれる場合には、当該一時金の経済的利益も借地権設定者に帰属する経済的利益を構成する場合があることに留意すべきである。【660】
底地の鑑定評価額は、実際支払賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格及び比準価格を関連づけて決定するものとする。この場合においては、前記(1)②ア(ア)から(キ)までに掲げる事項(定期借地権の付着している宅地の評価に当たっては、(ア)から(ク)までに掲げる事項)を総合的に勘案するものとする。【661】
また、底地を当該借地権者が買い取る場合における底地の鑑定評価に当たっては、当該宅地又は建物及びその敷地が同一所有者に帰属することによる市場性の回復等に即応する経済価値の増分が生ずる場合があることに留意すべきである。【662】
4.区分地上権【663】
区分地上権の価格は、一般に区分地上権の設定に係る土地(以下「区分地上権設定地」という。)の経済価値を基礎として、権利の設定範囲における権利利益の内容により定まり、区分地上権設定地全体の経済価値のうち、平面的・立体的空間の分割による当該権利の設定部分の経済価値及び設定部分の効用を保持するため他の空間部分の利用を制限することに相応する経済価値を貨幣額で表示したものである。【664】
この場合の区分地上権の鑑定評価額は、設定事例等に基づく比準価格、土地残余法に準じて求めた収益価格及び区分地上権の立体利用率により求めた価格を関連づけて得た価格を標準とし、区分地上権の設定事例等に基づく区分地上権割合により求めた価格を比較考量して決定するものとする。【665】
Ⅱ 農地【666】
公共事業の用に供する土地の取得等農地を農地以外のものとするための取引に当たって、当該取引に係る農地の鑑定評価を求められる場合がある。【667】
この場合における農地の鑑定評価額は、比準価格を標準とし、収益価格を参考として決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。【668】
なお、公共事業の用に供する土地の取得に当たっては、土地の取得により通常生ずる損失の補償として農業補償が別途行われる場合があることに留意すべきである。【669】
Ⅲ 林地【670】
公共事業の用に供する土地の取得等林地を林地以外のものとするための取引に当たって、当該取引に係る林地の鑑定評価を求められる場合がある。【671】
この場合における林地の鑑定評価額は、比準価格を標準とし、収益価格を参考として決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。【672】
なお、公共事業の用に供する土地の取得に当たっては、土地の取得により通常生ずる損失の補償として立木補償等が別途行われる場合があることに留意すべきである。【673】
Ⅳ 宅地見込地【674】
宅地見込地の鑑定評価額は、比準価格及び当該宅地見込地について、価格時点において、転換後・造成後の更地を想定し、その価格から通常の造成費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除し、その額を当該宅地見込地の熟成度に応じて適切に修正して得た価格を関連づけて決定するものとする。この場合においては、特に都市の外延的発展を促進する要因の近隣地域に及ぼす影響度及び次に掲げる事項を総合的に勘案するものとする。【675】
1.当該宅地見込地の宅地化を助長し、又は阻害している行政上の措置又は規制【676】
2.付近における公共施設及び公益的施設の整備の動向
3.付近における住宅、店舗、工場等の建設の動向
4.造成の難易及びその必要の程度
5.造成後における宅地としての有効利用度
また、熟成度の低い宅地見込地を鑑定評価する場合には、比準価格を標準とし、転換前の土地の種別に基づく価格に宅地となる期待性を加味して得た価格を比較考量して決定するものとする。【677】
【678】

第2節 建物及びその敷地

Ⅰ 自用の建物及びその敷地【679】
自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定するものとする。【680】
なお、建物の用途を変更し、又は建物の構造等を改造して使用することが最有効使用と認められる場合における自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、用途変更等を行った後の経済価値の上昇の程度、必要とされる改造費等を考慮して決定するものとする。【681】
また、建物を取り壊すことが最有効使用と認められる場合における自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、建物の解体による発生材料の価格から取壊し、除去、運搬等に必要な経費を控除した額を、当該敷地の最有効使用に基づく価格に加減して決定するものとする。【682】
Ⅱ 貸家及びその敷地【683】
貸家及びその敷地の鑑定評価額は、実際実質賃料(売主が既に受領した一時金のうち売買等に当たって買主に承継されない部分がある場合には、当該部分の運用益及び償却額を含まないものとする。)に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定するものとする。この場合において、次に掲げる事項を総合的に勘案するものとする。【684】
1.将来における賃料の改定の実現性とその程度【685】
2.契約に当たって授受された一時金の額及びこれに関する契約条件
3.将来見込まれる一時金の額及びこれに関する契約条件
4.契約締結の経緯、経過した借家期間及び残存期間並びに建物の残存耐用年数
5.貸家及びその敷地の取引慣行並びに取引利回り
6.借家の目的、契約の形式、登記の有無、転借か否かの別及び定期建物賃貸借(借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借をいう。)か否かの別
7.借家権価格
また、貸家及びその敷地を当該借家人が買い取る場合における貸家及びその敷地の鑑定評価に当たっては、当該貸家及びその敷地が自用の建物及びその敷地となることによる市場性の回復等に即応する経済価値の増分が生ずる場合があることに留意すべきである。【686】
Ⅲ 借地権付建物【687】
1.建物が自用の場合【688】
借地権付建物で、当該建物を借地権者が使用しているものについての鑑定評価額は、積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定するものとする。この場合において、前記借地権②ア(ア)から(キ)までに掲げる事項(借地権が定期借地権の場合には、(ア)から(ケ)までに掲げる事項)を総合的に勘案するものとする。【689】
2.建物が賃貸されている場合【690】
借地権付建物で、当該建物が賃貸されているものについての鑑定評価額は、実際実質賃料(売主が既に受領した一時金のうち売買等に当たって買主に承継されない部分がある場合には、当該部分の運用益及び償却額を含まないものとする。)に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定するものとする。【691】
この場合において、前記借地権②ア(ア)から(キ)までに掲げる事項(借地権が定期借地権の場合には、(ア)から(ケ)までに掲げる事項)及び前記Ⅱ1.から7.までに掲げる事項を総合的に勘案するものとする。【692】
Ⅳ 区分所有建物及びその敷地【693】
1.区分所有建物及びその敷地の価格形成要因【694】
区分所有建物及びその敷地における固有の個別的要因を例示すれば次のとおりである。【695】
(1)区分所有建物が存する一棟の建物及びその敷地に係る個別的要因【696】
① 建物に係る要因【697】
ア 建築(新築、増改築等又は移転)の年次【698】
イ 面積、高さ、構造、材質等
ウ 設計、設備等の機能性
エ 施工の質と量
オ 玄関、集会室等の施設の状態
カ 建物の階数
キ 建物の用途及び利用の状態
ク 維持管理の状態
ケ 居住者、店舗等の構成の状態
コ 耐震性、耐火性等建物の性能
サ 有害な物質の使用の有無及びその状態
② 敷地に係る要因【699】
ア 敷地の形状及び空地部分の広狭の程度【700】
イ 敷地内施設の状態
ウ 敷地の規模
エ 敷地に関する権利の態様
③ 建物及びその敷地に係る要因【701】
ア 敷地内における建物及び附属施設の配置の状態【702】
イ 建物と敷地の規模の対応関係
ウ 長期修繕計画の有無及びその良否並びに修繕積立金の額
(2)専有部分に係る個別的要因【703】
① 階層及び位置【704】
② 日照、眺望及び景観の良否
③ 室内の仕上げ及び維持管理の状態
④ 専有面積及び間取りの状態
⑤ 隣接不動産等の利用の状態
⑥ エレベーター等の共用施設の利便性の状態
⑦ 敷地に関する権利の態様及び持分
⑧ 区分所有者の管理費等の滞納の有無
2.区分所有建物及びその敷地の鑑定評価【705】
(1)専有部分が自用の場合【706】
区分所有建物及びその敷地で、専有部分を区分所有者が使用しているものについての鑑定評価額は、積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定するものとする。【707】
積算価格は、区分所有建物の対象となっている一棟の建物及びその敷地の積算価格を求め、当該積算価格に当該一棟の建物の各階層別及び同一階層内の位置別の効用比により求めた配分率を乗ずることにより求めるものとする。【708】
(2)専有部分が賃貸されている場合【709】
区分所有建物及びその敷地で、専有部分が賃貸されているものについての鑑定評価額は、実際実質賃料(売主が既に受領した一時金のうち売買等に当たって買主に承継されない部分がある場合には、当該部分の運用益及び償却額を含まないものとする。)に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定するものとする。【710】
この場合において、前記Ⅱ1.から7.までに掲げる事項を総合的に勘案するものとする。【711】
【712】

第3節 建物

建物は、その敷地と結合して有機的に効用を発揮するものであり、建物とその敷地とは密接に関連しており、両者は一体として鑑定評価の対象とされるのが通例であるが、鑑定評価の依頼目的及び条件により、建物及びその敷地が一体として市場性を有する場合における建物のみの鑑定評価又は建物及びその敷地が一体として市場性を有しない場合における建物のみの鑑定評価がある。【713】
Ⅰ 建物及びその敷地が一体として市場性を有する場合における建物のみの鑑定評価【714】
この場合の建物の鑑定評価は、その敷地と一体化している状態を前提として、その全体の鑑定評価額の内訳として建物について部分鑑定評価を行うものである。【715】
この場合における建物の鑑定評価額は、積算価格を標準とし、配分法に基づく比準価格及び建物残余法による収益価格を比較考量して決定するものとする。【716】
ただし、複合不動産価格をもとに建物に帰属する額を配分して求めた価格を標準として決定することもできる。【717】
Ⅱ 建物及びその敷地が一体として市場性を有しない場合における建物のみの鑑定評価【718】
この場合の建物の鑑定評価は、一般に特殊価格を求める場合に該当するものであり、文化財の指定を受けた建造物、宗教建築物又は現況による管理を継続する公共公益施設の用に供されている不動産のうち建物について、その保存等に主眼をおいて行うものであるが、この場合における建物の鑑定評価額は、積算価格を標準として決定するものとする。【719】
Ⅲ 借家権【720】
借家権とは、借地借家法(廃止前の借家法を含む。)が適用される建物の賃借権をいう。【721】
借家権の取引慣行がある場合における借家権の鑑定評価額は、当事者間の個別的事情を考慮して求めた比準価格を標準とし、自用の建物及びその敷地の価格から貸家及びその敷地の価格を控除し、所要の調整を行って得た価格を比較考量して決定するものとする。借家権割合が求められる場合は、借家権割合により求めた価格をも比較考量するものとする。この場合において、前記貸家及びその敷地の1.から6.までに掲げる事項を総合的に勘案するものとする。【722】
さらに、借家権の価格といわれているものには、賃貸人から建物の明渡しの要求を受け、借家人が不随意の立退きに伴い事実上喪失することとなる経済的利益等、賃貸人との関係において個別的な形をとって具体に現れるものがある。この場合における借家権の鑑定評価額は、当該建物及びその敷地と同程度の代替建物等の賃借の際に必要とされる新規の実際支払賃料と現在の実際支払賃料との差額の一定期間に相当する額に賃料の前払的性格を有する一時金の額等を加えた額並びに自用の建物及びその敷地の価格から貸家及びその敷地の価格を控除し、所要の調整を行って得た価格を関連づけて決定するものとする。この場合において当事者間の個別的事情を考慮するものとするほか、前記貸家及びその敷地の1.から6.までに掲げる事項を総合的に勘案するものとする。【723】
【724】

第4節 特定価格を求める場合に適用する鑑定評価の手法

Ⅰ 各論第3章第1節に規定する証券化対象不動産に係る鑑定評価目的の下で、投資家に示すための投資採算価値を表す価格を求める場合【725】
この場合は、基本的に収益還元法のうちDCF法により求めた試算価格を標準とし、直接還元法による検証を行って求めた収益価格に基づき、比準価格及び積算価格による検証を行い鑑定評価額を決定する。【726】
Ⅱ 民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、早期売却を前提とした価格を求める場合【727】
この場合は、通常の市場公開期間より短い期間で売却されるという前提で、原則として比準価格と収益価格を関連づけ、積算価格による検証を行って鑑定評価額を決定する。なお、比較可能な事例資料が少ない場合は、通常の方法で正常価格を求めた上で、早期売却に伴う減価を行って鑑定評価額を求めることもできる。【728】
Ⅲ 会社更生法又は民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、事業の継続を前提とした価格を求める場合【729】
この場合は、原則として事業経営に基づく純収益のうち不動産に帰属する純収益に基づく収益価格を標準とし、比準価格を比較考量の上、積算価格による検証を行って鑑定評価額を決定する。【730】
 

Ⅷ 「各論第1章価格に関する鑑定評価」について

1.宅地について【2435】
(1)更地について【2436】
開発法によって求める価格は、建築を想定したマンション等又は細区分を想定した宅地の販売総額を価格時点に割り戻した額から建物の建築費及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用又は土地の造成費及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を価格時点に割り戻した額をそれぞれ控除して求めるものとする。この場合において、マンション等の敷地又は細区分を想定した宅地は一般に法令上許容される用途、容積率等の如何によって土地価格が異なるので、敷地の形状、道路との位置関係等の条件のほか、マンション等の敷地については建築基準法等に適合した建物の概略設計、配棟等に関する開発計画を、細区分を想定した宅地については細区分した宅地の規模及び配置等に関する開発計画をそれぞれ想定し、これに応じた事業実施計画を策定することが必要である。【2437】
開発法の基本式を示すと次のようになる。【2438】
P = S/(1+r)n1 - B/(1+r)n2 - M/(1+r)n3【2439】
P:開発法による試算価格【2440】
S:販売総額【2441】
B:建物の建築費又は土地の造成費【2442】
M:付帯費用【2443】
r:投下資本収益率【2444】
n1:価格時点から販売時点までの期間【2445】
n2:価格時点から建築代金の支払い時点までの期間【2446】
n3:価格時点から付帯費用の支払い時点までの期間【2447】
(2)建付地について【2448】
複合不動産価格をもとに敷地に帰属する額を配分する方法には主として次の二つの方法があり、対象不動産の特性に応じて適切に適用しなければならない。【2449】
① 割合法【2450】
割合法とは、複合不動産価格に占める敷地の構成割合を求めることができる場合において、複合不動産価格に当該構成割合を乗じて求める方法である。【2451】
② 控除法【2452】
控除法とは、複合不動産価格を前提とした建物等の価格を直接的に求めることができる場合において、複合不動産価格から建物等の価格を控除して求める方法である。【2453】
(3)借地権及び底地について【2454】
借地権及び底地の鑑定評価に当たって留意すべき事項は次のとおりである。【2455】
① 借地権単独では取引の対象とされないものの、建物の取引に随伴して取引の対象となり、借地上の建物と一体となった場合に借地権の価格が顕在化する場合がある。【2456】
② 宅地の賃貸借契約等に関連して、借地権者から借地権設定者へ支払われる一時金には、一般に、(ア)預り金的性格を有し、通常、保証金と呼ばれているもの、(イ)借地権の設定の対価とみなされ、通常、権利金と呼ばれているもの、(ウ)借地権の譲渡等の承諾を得るための一時金に分類することができる。これらのほか、定期借地権に係る賃貸借契約等においては、賃料の前払的性格を有し、通常、前払地代と呼ばれているものがある。【2457】
これらの一時金が借地権価格又は底地価格を構成するか否かはその名称の如何を問わず、一時金の性格、社会的慣行等を考察して個別に判定することが必要である。【2458】
③ 定期借地権及び定期借地権が付着した底地の鑑定評価に当たって留意すべき事項は次のとおりである。【2459】
(ア)定期借地権は、契約期間の満了に伴う更新がなされないこと【2460】
(イ)契約期間満了時において、借地権設定者に対し、更地として返還される場合又は借地上の建物の譲渡が行われる場合があること
④ 借地権及び底地の鑑定評価においては、預り金的性格を有する一時金についてはその運用益を、前払地代に相当する一時金については各期の前払地代及び運用益を、それぞれ考慮するものとする。【2461】
(4)区分地上権について【2462】
区分地上権の鑑定評価に当たって留意すべき事項は次のとおりである。【2463】
① 区分地上権の特性に基づく経済価値【2464】
区分地上権の鑑定評価においては、特に次に掲げる区分地上権の特性に基づく経済価値に留意することが必要である。【2465】
ア 区分地上権設定地の経済価値は、当該設定地の最有効使用に係る階層等に基づいて生ずる上下空間の効用の集積である。したがって、区分地上権の経済価値は、その設定地全体の効用との関数関係に着目して、その設定地全体の経済価値に占める割合として把握される。【2466】
イ 区分地上権は、他人の土地の地下又は空間の一部に工作物を設置することを目的として設定する権利であり、その工作物の構造、用途、使用目的、権利の設定期間等により、その経済価値が特定される。【2467】
② 区分地上権の設定事例等に基づく比準価格【2468】
区分地上権の設定事例等に基づく比準価格は、近隣地域及び同一需給圏内の類似地域等において設定形態が類似している区分地上権の設定事例等を収集して、適切な事例を選択し、必要に応じ事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因及び個別的要因の比較を行って求めた価格を比較考量して決定するものとする。【2469】
この手法の適用に当たっては、特に次に掲げる事項に留意しなければならない。【2470】
ア 区分地上権設定地に係る区分地上権の経済価値には、当該区分地上権に係る工作物の保全のため必要な他の空間の使用制限に係る経済価値を含むことが多いので、区分地上権の態様、設定期間等設定事例等の内容を的確に把握すべきである。【2471】
イ 時点修正において採用する変動率は、事例に係る不動産の存する用途的地域又は当該地域と相似の価格変動過程を経たと認められる類似の地域における土地の変動率を援用することができるものとする。【2472】
ウ 地域要因及び個別的要因の比較においては、次に掲げる区分地上権に特有な諸要因について留意する必要がある。【2473】
(ア)地域要因については、近隣地域の地域要因にとどまらず、一般に当該区分地上権の効用に寄与する他の不動産(例えば、地下鉄の区分地上権の設定事例の場合における連たんする一団の土地のように、一般に広域にわたって存在することが多い。)の存する類似地域等との均衡を考慮する必要がある。【2474】
(イ)個別的要因については、区分地上権に係る地下又は空間の部分についての立体的及び平面的位置、規模、形状等が特に重要であり、区分地上権設定地全体との関連において平面的及び立体的分割の状態を判断しその影響の程度を考慮する必要がある。【2475】
③ 区分地上権の設定事例等に基づく区分地上権割合により求める価格【2476】
近隣地域及び同一需給圏内の類似地域等において設定形態が類似している区分地上権の設定事例等を収集して、適切な事例を選択し、これらに係る設定時又は譲渡時における区分地上権の価格が区分地上権設定地の更地としての価格に占める割合をそれぞれ求め、これらを総合的に比較考量の上適正な割合を判定し、価格時点における当該区分地上権設定地の更地としての価格にその割合を乗じて求めるものとする。【2477】
なお、この手法の適用に当たっては、特に、前記②のウに掲げる事項に留意する必要がある。【2478】
④ 土地残余法に準じて求める収益価格【2479】
土地残余法に準じて求める収益価格は、区分地上権設定地について、当該区分地上権の設定がないものとして、最有効使用を想定して求めた当該設定地全体に帰属する純収益から、当該区分地上権設定後の状態を所与として最有効使用を想定して求めた当該設定地に帰属する純収益を控除して得た差額純収益を還元利回りで還元して得た額について、さらに当該区分地上権の契約内容等による修正を行って求めるものとする。【2480】
⑤ 区分地上権の立体利用率により求める価格【2481】
区分地上権の立体利用率により求める価格は、区分地上権設定地の更地としての価格に、最有効使用を想定して求めた当該区分地上権設定地全体の立体利用率を基準として求めた当該区分地上権に係る立体利用率(当該区分地上権設定地の最有効使用を前提とした経済価値に対する区分地上権の設定部分の経済価値及び当該設定部分の効用を保持するため他の空間部分の利用を制限することに相応する経済価値の合計の割合をいう。)を乗じて得た額について、さらに当該区分地上権の契約内容等による修正を行って求めるものとする。【2482】
なお、この手法の適用に当たっては、特に、前記②のウに掲げる事項に留意する必要がある。【2483】
(5)対象不動産について土壌汚染が存することが判明している場合等の鑑定評価について【2484】
土壌汚染が存することが判明している不動産については、原則として汚染の分布状況、汚染の除去等の措置に要する費用等を他の専門家が行った調査結果等を活用して把握し鑑定評価を行うものとする。ただし、この場合でも総論第5章第1節及び本留意事項Ⅲに定める条件設定に係る一定の要件を満たすときは、依頼者の同意を得て、汚染の除去等の措置がなされるものとする想定上の条件を設定し、又は調査範囲等条件を設定して鑑定評価を行うことができる。また、総論第8章第6節及び本留意事項Ⅵに定める客観的な推定ができると認められるときは、土壌汚染が存することによる価格形成上の影響の程度を推定して鑑定評価を行うことができる。【2485】
なお、汚染の除去等の措置が行われた後でも、心理的嫌悪感等による価格形成への影響を考慮しなければならない場合があることに留意する。【2486】
2.建物及びその敷地について【2487】
(1)削除【2488】
(2)区分所有建物及びその敷地について【2489】
区分所有建物及びその敷地の確認に当たっては、登記事項証明書、建物図面(さらに詳細な図面が必要な場合は、設計図書等)、管理規約、課税台帳、実測図等に基づき物的確認と権利の態様の確認を行う。【2490】
また、確認に当たって留意すべき主な事項は、次のとおりである。【2491】
① 専有部分【2492】
ア 建物全体の位置、形状、規模、構造及び用途【2493】
イ 専有部分の一棟の建物における位置、形状、規模及び用途
ウ 専有部分に係る建物の附属物の範囲
② 共用部分【2494】
ア 共用部分の範囲及び共有持分【2495】
イ 一部の区分所有者のみに属する共用部分
③ 建物の敷地【2496】
ア 敷地の位置、形状及び規模【2497】
イ 敷地に関する権利の態様
ウ 対象不動産が存する一棟の建物に係る規約敷地の範囲
エ 敷地の共有持分
④ 管理費等【2498】
管理費及び修繕積立金の額【2499】
3.建物について【2500】
複合不動産価格をもとに建物に帰属する額を配分する方法は、「1.(2)建付地について」で述べる方法に準ずるものとする。【2501】

その他

※国土交通省が公開している不動産鑑定評価基準(平成26年5月1日一部改正)をサイトに対して最適化するよう、必要に応じて一部を改変しています。正確な記載については、国土交通省が公開している不動産鑑定評価基準をご参照ください。また、誤りだと思われる部分を発見した際には、お問い合わせフォームよりご指摘いただけますと幸いでございます。

Ⅴ 「総論第7章鑑定評価の方式」について

1.価格を求める鑑定評価の手法について【2164】
(1)試算価格を求める場合の一般的留意事項について【2165】
① 取引事例等の選択について【2166】
ア 必要やむを得ない場合に近隣地域の周辺地域に存する不動産に係るものを選択する場合について【2167】
この場合における必要やむを得ない場合とは、近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産について収集した取引事例等の大部分が特殊な事情による影響を著しく受けていることその他の特別な事情により当該取引事例等のみによっては鑑定評価を適切に行うことができないと認められる場合をいう。【2168】
イ 対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等において同一需給圏内の代替競争不動産に係るものを選択する場合について【2169】
この場合における対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等とは、次のような場合として例示される対象不動産の個別性のために近隣地域の制約の程度が著しく小さいと認められるものをいう。【2170】
(ア)戸建住宅地域において、近辺で大規模なマンションの開発がみられるとともに、立地に優れ高度利用が可能なことから、マンション適地と認められる大規模な画地が存する場合【2171】
(イ)中高層事務所として用途が純化された地域において、交通利便性に優れ広域的な集客力を有するホテルが存する場合
(ウ)住宅地域において、幹線道路に近接して、広域的な商圏を持つ郊外型の大規模小売店舗が存する場合
(エ)中小規模の事務所ビルが集積する地域において、敷地の集約化により完成した卓越した競争力を有する大規模事務所ビルが存する場合
ウ 代替、競争等の関係を判定する際の留意点について【2172】
イの場合において選択する同一需給圏内の代替競争不動産に係る取引事例等は、次に掲げる要件に該当するものでなければならない。【2173】
(ア)対象不動産との間に用途、規模、品等等からみた類似性が明確に認められること。【2174】
(イ)対象不動産の価格形成に関して直接に影響を与えていることが明確に認められること。
② 地域要因の比較及び個別的要因の比較について【2175】
取引事例等として同一需給圏内の代替競争不動産に係るものを選択する場合において、価格形成要因に係る対象不動産との比較を行う際には、個別的要因の比較だけでなく市場の特性に影響を与えている地域要因の比較もあわせて行うべきことに留意すべきである。【2176】
(2)原価法について【2177】
① 再調達原価を求める方法について【2178】
ア 建物の増改築・修繕・模様替等は、その内容を踏まえ、再調達原価の査定に適切に反映させなければならない。【2179】
イ 資金調達費用とは、建築費及び発注者が負担すべき費用に相当する資金について、建物引渡しまでの期間に対応する調達費用をいう。【2180】
ウ 開発リスク相当額とは、開発を伴う不動産について、当該開発に係る工事が終了し、不動産の効用が十分に発揮されるに至るまでの不確実性に関し、事業者(発注者)が通常負担する危険負担率を金額で表示したものである。【2181】
② 減価修正の方法について【2182】
ア 対象不動産が建物及びその敷地である場合において、土地及び建物の再調達原価についてそれぞれ減価修正を行った上で、さらにそれらを加算した額について減価修正を行う場合があるが、それらの減価修正の過程を通じて同一の減価の要因について重複して考慮することのないよう留意するべきである。【2183】
イ 耐用年数に基づく方法及び観察減価法を適用する場合においては、対象不動産が有する市場性を踏まえ、特に、建物の増改築・修繕・模様替等の実施が耐用年数及び減価の要因に与える影響の程度について留意しなければならない。【2184】
(3)取引事例比較法について【2185】
この手法の適用に当たっては、多数の取引事例を収集し、価格の指標となり得る事例の選択を行わなければならないが、その有効性を高めるため、取引事例はもとより、売り希望価格、買い希望価格、精通者意見等の資料を幅広く収集するよう努めるものとする。【2186】
なお、これらの資料は、近隣地域等の価格水準及び地価の動向を知る上で十分活用し得るものである。【2187】
① 事例の収集について【2188】
豊富に収集された取引事例の分析検討は、個別の取引に内在する特殊な事情を排除し、時点修正率を把握し、及び価格形成要因の対象不動産の価格への影響の程度を知る上で欠くことのできないものである。特に、選択された取引事例は、取引事例比較法を適用して比準価格を求める場合の基礎資料となるものであり、収集された取引事例の信頼度は比準価格の精度を左右するものである。【2189】
取引事例は、不動産の利用目的、不動産に関する価値観の多様性、取引の動機による売主及び買主の取引事情等により各々の取引について考慮されるべき視点が異なってくる。したがって、取引事例に係る取引事情を始め取引当事者の属性【2190】
(本留意事項の「Ⅳ「総論第6章地域分析及び個別分析」について」に掲げる市場参加者の属性に同じ。)及び取引価格の水準の変動の推移を慎重に分析しなければならない。【2191】
② 事情補正について【2192】
事情補正の必要性の有無及び程度の判定に当たっては、多数の取引事例等を総合的に比較対照の上、検討されるべきものであり、事情補正を要すると判定したときは、取引が行われた市場における客観的な価格水準等を考慮して適切に補正を行わなければならない。【2193】
事情補正を要する特殊な事情を例示すれば、次のとおりである。【2194】
ア 補正に当たり減額すべき特殊な事情【2195】
(ア)営業上の場所的限定等特殊な使用方法を前提として取引が行われたとき。【2196】
(イ)極端な供給不足、先行きに対する過度に楽観的な見通し等特異な市場条件の下に取引が行われたとき。
(ウ)業者又は系列会社間における中間利益の取得を目的として取引が行われたとき。
(エ)買手が不動産に関し明らかに知識や情報が不足している状態において過大な額で取引が行われたとき。
(オ)取引価格に売買代金の割賦払いによる金利相当額、立退料、離作料等の土地の対価以外のものが含まれて取引が行われたとき。
イ 補正に当たり増額すべき特殊な事情【2197】
(ア)売主が不動産に関し明らかに知識や情報が不足している状態において、過少な額で取引が行われたとき。【2198】
(イ)相続、転勤等により売り急いで取引が行われたとき。
ウ 補正に当たり減額又は増額すべき特殊な事情【2199】
(ア)金融逼迫、倒産時における法人間の恩恵的な取引又は知人、親族間等人間関係による恩恵的な取引が行われたとき。【2200】
(イ)不相応な造成費、修繕費等を考慮して取引が行われたとき。
(ウ)調停、清算、競売、公売等において価格が成立したとき。
③ 時点修正について【2201】
ア 時点修正率は、価格時点以前に発生した多数の取引事例について時系列的な分析を行い、さらに国民所得の動向、財政事情及び金融情勢、公共投資の動向、建築着工の動向、不動産取引の推移等の社会的及び経済的要因の変化、土地利用の規制、税制等の行政的要因の変化等の一般的要因の動向を総合的に勘案して求めるべきである。【2202】
イ 時点修正率は原則として前記アにより求めるが、地価公示、都道府県地価調査等の資料を活用するとともに、適切な取引事例が乏しい場合には、売り希望価格、買い希望価格等の動向及び市場の需給の動向等に関する諸資料を参考として用いることができるものとする。【2203】
(4)収益還元法について【2204】
① 直接還元法の適用について【2205】
ア 一期間の純収益の算定について【2206】
直接還元法の適用において還元対象となる一期間の純収益と、それに対応して採用される還元利回りは、その把握の仕方において整合がとれたものでなければならない。【2207】
すなわち、還元対象となる一期間の純収益として、ある一定期間の標準化されたものを採用する場合には、還元利回りもそれに対応したものを採用することが必要である。また、建物その他の償却資産(以下「建物等」という。)を含む不動産の純収益の算定においては、基本的に減価償却費を控除しない償却前の純収益を用いるべきであり、それに対応した還元利回りで還元する必要がある。【2208】
P = a/R【2209】
P:建物等の収益価格【2210】
a:建物等の償却前の純収益【2211】
R:償却前の純収益に対応する還元利回り【2212】
一方、減価償却費を控除した償却後の純収益を用いる場合には、還元利回りも償却後の純収益に対応するものを用いなければならない。【2213】
減価償却費の算定方法には定額法、償還基金率を用いる方法等があり、適切に用いることが必要である。【2214】
P = a’/R’【2215】
P:建物等の収益価格【2216】
a:建物等の償却後の純収益【2217】
R:償却後の純収益に対応する還元利回り【2218】
なお、減価償却費と償却前の純収益に対応する還元利回りを用いて償却後の純収益に対応する還元利回りを求める式は以下のとおりである。【2219】
R’ = a’/(a’+d) × R【2220】
R’:償却後の純収益に対応する還元利回り【2221】
R:償却前の純収益に対応する還元利回り【2222】
a’:償却後の純収益【2223】
d:減価償却費【2224】
イ 土地残余法【2225】
対象不動産が更地である場合において、当該土地に最有効使用の賃貸用建物等の建築を想定し、収益還元法以外の手法によって想定建物等の価格を求めることができるときは、当該想定建物及びその敷地に基づく純収益から想定建物等に帰属する純収益を控除した残余の純収益を還元利回りで還元する手法(土地残余法という。)を適用することができる。【2226】
また、不動産が敷地と建物等との結合によって構成されている場合において、収益還元法以外の手法によって建物等の価格を求めることができるときは、土地残余法を適用することができるが、建物等が古い場合には複合不動産の生み出す純収益から土地に帰属する純収益が的確に求められないことが多いので、建物等は新築か築後間もないものでなければならない。【2227】
土地残余法は、土地と建物等から構成される複合不動産が生み出す純収益を土地及び建物等に適正に配分することができる場合に有効である。【2228】
土地残余法を適用して土地の収益価格を求める場合は、基本的に次の式により表される。【2229】
PL = a-B×RB/RL【2230】
PL:土地の収益価格【2231】
a:建物等及びその敷地の償却前の純収益【2232】
B:建物等の価格【2233】
RB:償却前の純収益に対応する建物等の還元利回り【2234】
RL:土地の還元利回り【2235】
なお、土地残余法の適用に当たっては、賃貸事業におけるライフサイクルの観点を踏まえて、複合不動産が生み出す純収益及び土地に帰属する純収益を適切に求める必要がある。【2236】
ウ 建物残余法【2237】
不動産が敷地と建物等との結合によって構成されている場合において、収益還元法以外の手法によって敷地の価格を求めることができるときは、当該不動産に基づく純収益から敷地に帰属する純収益を控除した残余の純収益を還元利回りで還元する手法(建物残余法という。)を適用することができる。【2238】
建物残余法は、土地と建物等から構成される複合不動産が生み出す純収益を土地及び建物等に適正に配分することができる場合に有効である。【2239】
建物残余法を適用して建物等の収益価格を求める場合は、基本的に次の式により表される。【2240】
PB = a-L×RL/RB【2241】
PB:建物等の収益価格【2242】
a:建物等及びその敷地の償却前の純収益【2243】
L:土地の価格【2244】
RL:土地の還元利回り【2245】
RB:償却前の純収益に対応する建物等の還元利回り【2246】
エ 有期還元法【2247】
不動産が敷地と建物等との結合により構成されている場合において、その収益価格を、不動産賃貸又は賃貸以外の事業の用に供する不動産経営に基づく償却前の純収益に割引率と有限の収益期間とを基礎とした複利年金現価率を乗じて求める方法があり、基本的に次の式により表される。【2248】
P = a × (1+Y)N-1/Y(1+Y)N【2249】
P:建物等及びその敷地の収益価格【2250】
a:建物等及びその敷地の償却前の純収益【2251】
Y:割引率【2252】
N:収益期間(収益が得られると予測する期間であり、ここでは建物等の経済的残存耐用年数と一致する場合を指す。)【2253】
(1+Y)N-1/Y(1+Y)N:複利年金現価率【2254】
なお、複利年金現価率を用い、収益期間満了時における土地の価格、及び建物等の残存価格又は建物等の撤去費をそれぞれ現在価値に換算した額を加減する方法(インウッド式)がある。この方法の考え方に基づき、割引率を用いた式を示すと次のようになる。【2255】
P = a × (1+Y)n-1/Y(1+Y)n + PLn+PBn/(1+Y)n 又は【2256】
P = a × (1+Y)N-1/Y(1+Y)N + PLn-E/(1+Y)N【2257】
P:建物等及びその敷地の収益価格【2258】
a:建物等及びその敷地の償却前の純収益【2259】
Y:割引率【2260】
N,n:収益期間(収益が得られると予測する期間であり、ここでは建物等の経済的残存耐用年数と一致する場合にはN、建物等の経済的残存耐用年数より短い期間である場合はnとする。)【2261】
PLn:n年後の土地価格【2262】
PBn:n年後の建物等の価格【2263】
PLN:N年後の土地価格【2264】
E:建物等の撒去費【2265】
また、上記複利年金現価率の代わりに蓄積利回り等を基礎とした償還基金率と割引率とを用いる方法(ホスコルド式)がある。【2266】
この方法の考え方に基づき、割引率を用いた式を示すと次のようになる。【2267】
P = a × 1/{Y + i/(1+i)n-1} + PLn+PBn/(1+Y)n 又は【2268】
P = a × 1/{Y + i/(1+i)N-1} + PLN-E/(1+Y)N【2269】
※式の一部は分かりやすいよう、{}をつけるなどの改変をしている。【2270】
P:建物等及びその敷地の収益価格【2271】
a:建物等及びその敷地の償却前の純収益【2272】
Y:割引率【2273】
i:蓄積利回り【2274】
N,n:収益期間(収益が得られると予測する期間であり、ここでは建物等の経済的残存耐用年数と一致する場合にはN、建物等の経済的残存耐用年数より短い期間である場合はnとする。)【2275】
i/(1+n)n-1:償還基金率【2276】
PLn:n年後の土地価格【2277】
PBn:n年後の建物等の価格【2278】
PLN:N年後の土地価格【2279】
E:建物等の撒去費【2280】
オ 還元利回りの求め方【2281】
還元利回りは、市場の実勢を反映した利回りとして求める必要があり、還元対象となる純収益の変動予測を含むものであることから、それらの予測を的確に行い、還元利回りに反映させる必要がある。還元利回りを求める方法を例示すれば次のとおりであるが、適用に当たっては、次の方法から一つの方法を採用する場合又は複数の方法を組み合わせて採用する場合がある。また、必要に応じ、投資家等の意見や整備された不動産インデックス等を参考として活用する。【2282】
(ア)類似の不動産の取引事例との比較から求める方法【2283】
取引事例の収集及び選択については、総論第7章に定める取引事例比較法の適用方法に準ずる。【2284】
取引事例から得られる利回り(以下「取引利回り」という。)については、償却前後のいずれの純収益に対応するものであるかに留意する必要がある。あわせて純収益について特殊な要因(新築、建替え直後で稼働率が不安定である等)があり、適切に補正ができない取引事例は採用すべきでないことに留意する必要がある。【2285】
この方法は、対象不動産と類似性の高い取引事例に係る取引利回りが豊富に収集可能な場合には特に有効である。【2286】
(イ)借入金と自己資金に係る還元利回りから求める方法【2287】
この方法は、不動産の取得に際し標準的な資金調達能力を有する需要者の資金調達の要素に着目した方法であり、不動産投資に係る利回り及び資金調達に際する金融市場の動向を反映させることに優れている。【2288】
上記による求め方は基本的に次の式により表される。【2289】
R = RM×WM+RE×WE【2290】
R:還元利回り【2291】
RM:借入金還元利回り【2292】
WM:借入金割合【2293】
RE:自己資金還元利回り【2294】
WE:自己資金割合【2295】
(ウ)土地と建物等に係る還元利回りから求める方法【2296】
この方法は、対象不動産が土地及び建物等により構成されている場合に、土地及び建物等に係る利回りが異なるものとして把握される市場においてそれらの動向を反映させることに優れている。【2297】
上記による求め方は基本的に次の式により表される。【2298】
R = RL×WL+RB×WB【2299】
R:還元利回り【2300】
RL:土地の還元利回り【2301】
WL:土地の価格割合【2302】
RB:建物等の還元利回り【2303】
WB:建物等の価格割合【2304】
(エ)割引率との関係から求める方法【2305】
この方法は、純収益が永続的に得られる場合で、かつ純収益が一定の趨勢を有すると想定される場合に有効である。【2306】
還元利回りと割引率との関係を表す式の例は、次のように表される。【2307】
R = Y-g【2308】
R:還元利回り【2309】
Y:割引率【2310】
g:純収益の変動率【2311】
(オ)借入金償還余裕率の活用による方法【2312】
この方法は、借入金還元利回りと借入金割合をもとに、借入金償還余裕率(ある期間の純収益を同期間の借入金元利返済額で除した値をいう。)を用いて対象不動産に係る純収益からみた借入金償還の安全性を加味して還元利回りを求めるものである。【2313】
この場合において用いられる借入金償還余裕率は、借入期間の平均純収益をもとに算定すべきことに留意する必要がある。この方法は、不動産の購入者の資金調達に着目し、対象不動産から得られる収益のみを借入金の返済原資とする場合に有効である。【2314】
上記による求め方は基本的に次の式により表される。【2315】
R = RM×WM×DSCR【2316】
R:還元利回り【2317】
RM:借入金還元利回り【2318】
WM:借入金割合【2319】
DSCR:借入金償還余裕率(通常は1.0以上であることが必要。)【2320】
② DCF法の適用について【2321】
DCF法は、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を予測しそれらを明示することから、収益価格を求める過程について説明性に優れたものである。【2322】
なお、対象不動産が更地である場合においても、当該土地に最有効使用の賃貸用建物等の建築を想定することによりこの方法を適用することができる。【2323】
ア 毎期の純収益の算定について【2324】
建物等の純収益の算定においては、基本的には減価償却費を控除しない償却前の純収益を用いるものとし、建物等の償却については復帰価格において考慮される。【2325】
(ア)総収益の算定【2326】
一時金のうち預り金的性格を有する保証金等については、全額を返還準備金として預託することを想定しその運用益を発生時に計上する方法と全額を受渡時の収入又は支出として計上する方法とがある。【2327】
(イ)総費用の算定【2328】
大規模修繕費等の費用については、当該費用を毎期の積み立てとして計上する方法と、実際に支出される時期に計上する方法がある。実際に支出される時期の予測は、対象不動産の実態に応じて適切に行う必要がある。【2329】
イ 割引率の求め方について【2330】
割引率は、市場の実勢を反映した利回りとして求める必要があり、一般に1年を単位として求める。また、割引率は収益見通しにおいて考慮されなかった収益予測の不確実性の程度に応じて異なることに留意する。【2331】
割引率を求める方法を例示すれば次のとおりであるが、適用に当たっては、下記の方法から一つの方法を採用する場合又は複数の方法を組み合わせて採用する場合がある。また、必要に応じ、投資家等の意見や整備された不動産インデックス等を参考として活用する。【2332】
(ア)類似の不動産の取引事例との比較から求める方法【2333】
取引事例の収集及び選択については、総論第7章に定める取引事例比較法に係る適用方法に準ずる。【2334】
取引事例に係る割引率は、基本的に取引利回りをもとに算定される内部収益率(Internal Rateof Return(IRR)。将来収益の現在価値と当初投資元本とを等しくする割引率をいう。)として求める。適用に当たっては、取引事例について毎期の純収益が予測可能であることが必要である。【2335】
この方法は、対象不動産と類似性を有する取引事例に係る利回りが豊富に収集可能な場合には特に有効である。【2336】
(イ)借入金と自己資金に係る割引率から求める方法【2337】
この方法は、不動産の取得に際し標準的な資金調達能力を有する需要者の資金調達の要素に着目した方法であり、不動産投資に係る利回り及び資金調達に際する金融市場の動向を反映させることに優れている。適用に当たっては、不動産投資において典型的な投資家が想定する借入金割合及び自己資金割合を基本とすることが必要である。【2338】
上記による求め方は基本的に次の式により表される。【2339】
Y = YM×WM×YE×WE【2340】
Y:割引率【2341】
YM:借入金割引率【2342】
WM:借入金割合【2343】
YE:自己資金割引率【2344】
WE:自己資金割合【2345】
(ウ)金融資産の利回りに不動産の個別性を加味して求める方法【2346】
比較の対象となる金融資産の利回りとしては、一般に10年物国債の利回りが用いられる。また、株式や社債の利回り等が比較対象として用いられることもある。【2347】
不動産の個別性として加味されるものには、投資対象としての危険性、非流動性、管理の困難性、資産としての安全性があり、それらは自然災害等の発生や土地利用に関する計画及び規制の変更によってその価値が変動する可能性が高いこと、希望する時期に必ずしも適切な買い手が見つかるとは限らないこと、賃貸経営管理について専門的な知識と経験を必要とするものであり管理の良否によっては得られる収益が異なること、特に土地については一般に滅失することがないことなどをいう。【2348】
この方法は、対象不動産から生ずる収益予測の不確実性が金融資産との比較において把握可能な場合に有効である。【2349】
ウ 保有期間(売却を想定しない場合には分析期間)について【2350】
保有期間は、毎期の純収益及び復帰価格について精度の高い予測が可能な期間として決定する必要があり、不動産投資における典型的な投資家が保有する期間を標準とし、典型的な投資家が一般に想定しないような長期にわたる期間を設定してはならない。【2351】
エ 復帰価格の求め方について【2352】
保有期間満了時点において売却を想定する場合には、売却に要する費用を控除することが必要である。【2353】
復帰価格を求める際に、n+1期の純収益を最終還元利回りで還元して求める場合においては、n+1期以降の純収益の変動予測及び予測に伴う不確実性をn+1期の純収益及び最終還元利回りに的確に反映させることが必要である。【2354】
なお、保有期間満了時点以降において、建物の取壊しや用途変更が既に計画されている場合又は建物が老朽化していること等により取壊し等が見込まれる場合においては、それらに要する費用を考慮して復帰価格を求めることが必要である。【2355】
オ 最終還元利回りの求め方について【2356】
最終還元利回りは、価格時点の還元利回りをもとに、保有期間満了時点における市場動向並びにそれ以降の収益の変動予測及び予測に伴う不確実性を反映させて求めることが必要である。【2357】
③ 事業用不動産について【2358】
ア 賃貸用不動産又は賃貸以外の事業の用に供する不動産のうち、その収益性が当該事業(賃貸用不動産にあっては賃借人による事業)の経営の動向に強く影響を受けるもの(以下「事業用不動産」という。)を例示すれば、次のとおりである。【2359】
(ア)ホテル等の宿泊施設【2360】
(イ)ゴルフ場等のレジャー施設
(ウ)病院、有料老人ホーム等の医療・福祉施設
(エ)百貨店や多数の店舗により構成されるショッピングセンター等の商業施設
イ 事業用不動産の特性【2361】
(ア)運営形態の多様性【2362】
事業用不動産に係る事業の運営形態については、その所有者の直営による場合、外部に運営が委託される場合、当該事業用不動産が賃貸される場合等多様であり、こうした運営形態の違いにより、純収益の把握の仕方や、当該純収益の実現性の程度が異なる場合があることに留意すべきである。【2363】
(イ)事業用不動産に係る収益性の分析【2364】
事業用不動産に係る収益性の分析に当たっては、事業経営に影響を及ぼす社会経済情勢、当該不動産の存する地域において代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度等について中長期的な観点から行うことが重要である。【2365】
また、依頼者等から提出された事業実績や事業計画等は、上記の分析における資料として有用であるが、当該資料のみに依拠するのではなく、当該事業の運営主体として通常想定される事業者(以下「運営事業者」という。)の視点から、当該実績・計画等の持続性・実現性について十分に検討しなければならない。【2366】
ウ 事業用不動産に係る総収益の把握における留意点【2367】
事業用不動産については、その利用方法において個別性が高く、賃貸借の市場が相対的に成熟していないため、賃貸借の事例をもとに適正な賃料を把握することが困難な場合が多い。したがって、当該事業による売上高をもとに支払賃料等相当額を算定する場合には、その事業採算性の観点から、適正な賃料水準を把握する必要がある。【2368】
また、事業用不動産が現に賃貸借に供されている場合においても、現行の賃貸借契約における賃料と、事業採算性の観点から把握した適正な賃料水準との関係について分析を行うことが有用である。【2369】
これらの場合においては、将来における事業経営の動向を中長期的な観点から分析し、当該賃料等が、相当の期間、安定的に収受可能な水準であるかについて検討する必要がある。【2370】
なお、運営事業者が通常よりも優れた能力を有することによって生じる超過収益は、本来、運営事業者の経営等に帰属するものであるが、賃貸借契約において当該超過収益の一部が不動産の所有者に安定的に帰属することについて合意があるときには、当該超過収益の一部が当該事業用不動産に帰属する場合があることに留意すべきである。【2371】
2.賃料を求める鑑定評価の手法について【2372】
(1)積算法について【2373】
基礎価格を求めるに当たっては、次に掲げる事項に留意する必要がある。【2374】
①宅地の賃料(いわゆる地代)を求める場合【2375】
ア 最有効使用が可能な場合は、更地の経済価値に即応した価格である。【2376】
イ 建物の所有を目的とする賃貸借等の場合で契約により敷地の最有効使用が見込めないときは、当該契約条件を前提とする建付地としての経済価値に即応した価格である。
②建物及びその敷地の賃料(いわゆる家賃)を求める場合【2377】
建物及びその敷地の現状に基づく利用を前提として成り立つ当該建物及びその敷地の経済価値に即応した価格である。【2378】
(2)賃貸事例比較法について【2379】
①事例の選択について【2380】
ア 賃貸借等の事例の選択に当たっては、新規賃料、継続賃料の別又は建物の用途の別により賃料水準が異なるのが一般的であることに留意して、できる限り対象不動産に類似した事例を選択すべきである。【2381】
イ 契約内容の類似性を判断する際の留意事項を例示すれば、次のとおりである。【2382】
(ア)賃貸形式【2383】
(イ)賃貸面積
(ウ)契約期間並びに経過期間及び残存期間
(エ)一時金の授受に基づく賃料内容
(オ)賃料の算定の期間及びその支払方法
(カ)修理及び現状変更に関する事項
(キ)賃貸借等に供される範囲及びその使用方法
② 地域要因の比較及び個別的要因の比較について【2384】
賃料を求める場合の地域要因の比較に当たっては、賃料固有の価格形成要因が存すること等により、価格を求める場合の地域と賃料を求める場合の地域とでは、それぞれの地域の範囲及び地域の格差を異にすることに留意することが必要である。【2385】
賃料を求める場合の個別的要因の比較に当たっては、契約内容、土地及び建物に関する個別的要因等に留意することが必要である。【2386】

その他

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