規模に関する収穫──大きくすれば得なのか

ミクロ S2-18 規模に関する収穫 のアイキャッチ ミクロ経済学

Q.会社や工場の規模を2倍にしたら、生産量も2倍になるのですか?

A.場合によります。2倍を超えれば収穫逓増、ちょうど2倍なら収穫一定、2倍に届かなければ収穫逓減です。分業や大型設備は逓増を、管理の複雑化は逓減を生みます。

⭐ 重要度:S / 出題頻度:A

📘 テキスト対応:第3章 3-3、第18章 18-1

📗 前提記事:なし

⏱ 読了目安:6分

身近な例で考える

小さなパン屋が、人も機械も店もすべて2倍にしたとします。パンの生産量は、ちょうど2倍でしょうか、それとも2倍より多い?少ない?この問いが「規模に関する収穫」です。

3つのタイプ

すべての生産要素を同じ倍率で増やしたとき、生産量がどうなるかで3つに分かれます。

  • 収穫逓増:2倍にすると生産は2倍より多い。
  • 収穫一定:2倍にすると生産もちょうど2倍。
  • 収穫逓減:2倍にしても生産は2倍未満。

なぜ逓増するのか

規模が大きいほど得になる理由は、分業が進む(一人ひとりが専門に集中できる)、大型の設備が使える(機械は小さく分けられないので、大きく回すほどむだが減る)、工程を細かく専門化できる、などです。なお「まとめ買いで仕入れが安くなる」は、投入するものの値段が下がる話なので、量どうしの関係である規模に関する収穫ではなく、後で見る「規模の経済」の側に入ります。

なぜ逓減するのか

逆に、大きくなりすぎると管理が複雑になり、意思決定が遅れ、目が届かなくなります。人を増やしても連絡や調整の手間ばかり増える――こうして規模が大きすぎると効率が落ちます。

まとめ

「大きくすれば得」とは限りません。逓増・一定・逓減の3タイプがあり、分業や設備は得を、管理の複雑化は損を生む。どの規模が有利かは産業によって違う、というのが答えです。

「規模の経済」とは似ているが同じではない

収穫逓増とよく似た言葉に規模の経済があります。混同しやすいので、ここで分けておきます。

  • 規模に関する収穫…すべての生産要素を同じ倍率で増やしたとき、生産量がどう変わるか。
  • 規模の経済…生産量を増やしたとき、1個あたりの費用(平均費用)が下がるかどうか。

片方は「量」の話、もう片方は「費用」の話です。収穫逓増があれば規模の経済が生じやすいのは確かですが、費用は要素の値段にも左右されるため、2つは常に一致するとは限りません。

※ この説明が成り立つ前提

ここまでの説明は、話を分かりやすくするために次のような単純化をしています。細かい条件なので、はじめのうちは読み飛ばしても構いません。

  • 「すべての要素を同じ倍率で増やしたら」という思考実験です。1つの要素だけを増やす限界生産力逓減(S2-15)とは別の話です。
  • 収穫逓増でも、要素の値段しだいで1個あたりの費用が下がらないことがあります。費用の話である「規模の経済」とは区別します。

○×で確認

ここまでの内容を、○×で確かめます。5問すべてに答えてから、次の解説へ進んでください。

問1 すべての生産要素を2倍にしたとき、生産量が2倍を超えるなら収穫逓増、ちょうど2倍なら収穫一定である。

問2 すべての生産要素を2倍にすれば、生産量は必ずちょうど2倍になる。

問3 分業が進むことや大型の設備が使えることは、収穫逓増が生まれる理由である。

問4 規模が大きくなるほど管理はかえって簡単になるので、規模はどこまでも大きいほど得である。

問5 「規模に関する収穫」と「規模の経済」は同じ意味の言葉であり、両者は常に一致する。

○×の解説

問1 すべての生産要素を2倍にしたとき、生産量が2倍を超えるなら収穫逓増、ちょうど2倍なら収穫一定である。

答え:○

すべての生産要素を同じ倍率で増やしたときの生産量の変化で分類します。2倍を超えれば収穫逓増、ちょうど2倍なら収穫一定、2倍に届かなければ収穫逓減です。

問2 すべての生産要素を2倍にすれば、生産量は必ずちょうど2倍になる。

答え:×

ちょうど2倍になるのは収穫一定の場合だけです。2倍を超える収穫逓増や、2倍に届かない収穫逓減もあり、結果は場合によって異なります。

問3 分業が進むことや大型の設備が使えることは、収穫逓増が生まれる理由である。

答え:○

規模が大きいほど分業が進んで一人ひとりが専門に集中でき、大型の設備も無駄なく回せます。いずれも「同じ投入から、より多く作れるようになる」という技術の話です。

問4 規模が大きくなるほど管理はかえって簡単になるので、規模はどこまでも大きいほど得である。

答え:×

大きくなりすぎると管理が複雑になり、意思決定が遅れて効率が落ちます。だから「大きいほど得」とは限らず、ちょうどよい規模があるというのが答えです。

問5 「規模に関する収穫」と「規模の経済」は同じ意味の言葉であり、両者は常に一致する。

答え:×

規模に関する収穫は生産量がどう変わるかの話、規模の経済は1個あたりの費用(平均費用)が下がるかの話です。費用は要素の値段にも左右されるため、2つは常に一致するとは限りません。


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