Q.電気や水道が1社なのはなぜ?そして「効率的な価格」にすると何が起きる?
A.規模が大きいほど1個あたり安くなる産業では、1社が全部作るのが最も効率的(自然独占)。でも効率的な価格=P=MCにすると、価格が平均費用を下回り赤字になります。ここがジレンマです。
身近な例で考える
電気・水道・鉄道は、ふつう地域に1社です。もし何社もが別々に電線や水道管を引いたら、二重三重の無駄になります。こうした産業では、1社にまとめたほうが安くつく。これが自然独占の出発点です。
規模が大きいほど安い=ACがずっと右下がり
最初に巨大な設備(発電所、水道網、線路)が必要な産業では、使う量が増えるほど1単位あたりの費用(平均費用AC)が下がり続けます。大きい1社ほど安く供給できるので、自然に1社に集約される――だから“自然”独占です。
図で見る:P=MCにすると赤字
経済学的に効率的な価格は「価格=限界費用(P=MC)」です。ところが自然独占では、ACがずっと右下がりなのでMCは常にACより下。P=MCにすると価格がACを下回り、1個作るごとに赤字になってしまいます。効率を追うと会社がつぶれる――これがジレンマです。
現実の対応:平均費用価格形成
そこで実際には、価格=平均費用(P=AC)にする方法がよく使われます(平均費用価格形成)。これなら赤字は出ませんが、効率的なP=MCよりは価格が高く、供給量は少なめ。あるいは政府が赤字を補助する、料金を規制するなどで折り合いをつけます。
まとめ
自然独占は規模の経済で1社が最も効率的な産業。でも効率的なP=MCにすると赤字になる。だから料金規制や平均費用価格形成が必要になる――公益事業を考える基本の型です。
※ この説明が成り立つ前提
ここまでの説明は、話を分かりやすくするために次のような単純化をしています。細かい条件なので、はじめのうちは読み飛ばしても構いません。
- ACがずっと右下がり、MCがその下、という形は標準的な単純モデルです。あらゆる生産量で永遠に下がり続ける必要はありません。
- P=MCによる赤字は「1個ごとに赤字」というより、価格が平均費用を下回るため総収入で総費用をまかなえない、という意味です。
- 補助金で埋める方法にも、その財源をどこから取るかという別の問題があります。
○×で確認
ここまでの内容を、○×で確かめます。5問すべてに答えてから、次の解説へ進んでください。
問1 自然独占とは、規模が大きいほど1単位あたりの費用が下がるため、1社が全部作るのが最も効率的になる産業のことである。
問2 自然独占の産業で効率的な価格P=MCをつけると、企業には大きな黒字が出る。
問3 自然独占では平均費用ACがずっと右下がりで、限界費用MCは常にACより下にある。
問4 平均費用価格形成(P=AC)にすると赤字は出ず、価格もP=MCの場合より安くなる。
問5 電気や水道が地域に1社であることは、費用の構造とは関係がない。
○×の解説
問1 自然独占とは、規模が大きいほど1単位あたりの費用が下がるため、1社が全部作るのが最も効率的になる産業のことである。
答え:○
最初に巨大な設備が必要な産業では、使う量が増えるほど平均費用が下がり続けます。大きい1社ほど安く供給できるので、自然に1社へ集約されるのです。
問2 自然独占の産業で効率的な価格P=MCをつけると、企業には大きな黒字が出る。
答え:×
逆に赤字になります。自然独占では限界費用MCが常に平均費用ACより下にあるため、P=MCにすると価格がACを下回ってしまうのです。
問3 自然独占では平均費用ACがずっと右下がりで、限界費用MCは常にACより下にある。
答え:○
規模が大きいほど安く供給できるので、ACはずっと右下がりです。このときMCは常にACより下を走る、というのが自然独占の基本の形です。
問4 平均費用価格形成(P=AC)にすると赤字は出ず、価格もP=MCの場合より安くなる。
答え:×
P=ACなら赤字は出ませんが、価格は効率的なP=MCの場合より高くなり、供給量は少なめになります。安くなるわけではありません。
問5 電気や水道が地域に1社であることは、費用の構造とは関係がない。
答え:×
費用の構造こそが理由です。何社もが別々に電線や水道管を引くと二重三重の無駄になり、1社にまとめたほうが安くつくからです。
次に読む:S2-27「クールノー均衡」
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