Q.土地の供給曲線が垂直になるのはなぜですか。
A.土地の総量が決まっていて、値段が上がっても量を増やせないからです。ふつうの品物は、値段が上がると作る量を増やせるので供給曲線は右上がりになります。ところが土地は新しく作り出せません。値段がいくら上がっても、供給できる量は同じままです。そのため、量が一定の位置で縦にまっすぐ立つ「垂直」な線になります。(正確には「その地点の土地そのもの」の話です。宅地として市場に出る量は、埋立てや用途変更などで増えることがあります。)
⭐ 重要度:S / 出題頻度:A
📘 テキスト対応:第5章 5-3、第10章 10-1(土地の供給)
📗 前提記事:なし
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まず、どこでつまずくのか
経済学を学び始めると、早い段階で「供給曲線」という線が出てきます。ふつうは右上がりの線として習います。値段が上がると、売り手はもっとたくさん売ろうとする。だから量が増える。そういう線です。
ところが土地の話になると、突然「供給曲線は垂直(縦にまっすぐ)」と書かれています。ここで多くの人が止まります。さっきまで右上がりだったのに、なぜ土地だけ縦なのか。理由の説明がないまま、線の形だけ覚えさせられて、もやもやする。ここがつまずきの入口です。
この記事では、線の形を暗記するのではなく、「なぜその形になるのか」を、身近な場面からゆっくりたどります。用語よりも先に、まずイメージを作ります。
身近な例で考える
近所のパン屋さんを思い浮かべてみます。パンがよく売れて、値段を少し高くしても買ってもらえる。そうなると、お店はどうするでしょうか。小麦をもっと仕入れ、オーブンを長く回し、パンを増やして焼きます。値段が上がれば、作る量を増やせます。これがふつうの品物の姿です。
では、土地はどうでしょうか。ある町の土地が人気になり、値段が2倍になったとします。だからといって、その町の土地が2倍に増えるでしょうか。増えません。町の広さは決まっています。値段がどれだけ上がっても、地面を新しく作り出すことはできません。
パンは「増やせる品物」、土地は「増やせない品物」。この違いが、線の形の違いにそのまま出てきます。
「量が増えない」とはどういうことか
もう少していねいに見てみます。品物の量が増えるとは、作る力を足せば量が増える、ということです。人手を増やす、材料を増やす、機械を回す。すると量が増える。パンも、服も、スマートフォンもそうです。
土地はここが根本的に違います。地球の陸地の量は、ほぼ決まっています。値段が上がったからといって、どこかから新しい土地が湧いてくるわけではありません。もちろん、海を埋め立てて土地を作る例はあります。ですが、それはごくわずかで、時間も費用も莫大です。町全体、国全体で見れば、土地の総量は「ほぼ一定」と考えて差し支えありません。
この「総量が決まっている」という性質を、経済学では土地の大きな特徴の一つとして扱います。値段という合図をどれだけ強くしても、量が応えてくれない。ここが土地の特別なところです。
グラフにするとなぜ垂直なのか
いよいよグラフの形を考えます。グラフの横軸を「量」、縦軸を「価格(値段・円)」とします。供給曲線とは、「ある値段のとき、どれだけの量が供給されるか」を点でつないだ線です。
ふつうの品物では、値段が上がると量が増えます。だから点は右上へずれていき、線は右上がりになります。値段(縦)が上がるほど、量(横)も右へ動く、という関係です。
土地では、値段が上がっても量が変わりません。値段が安くても高くても、供給される量はいつも同じ。だから点は、真上へ一直線に並びます。横(量)は動かず、縦(価格)だけが動く。その結果、線は縦にまっすぐ立ちます。これが「土地の供給曲線は垂直」の正体です。
右上がりは「値段が上がると量が増える」、垂直は「値段が上がっても量は同じ」。線の形は、この一言の違いをそのまま絵にしたものです。
経済学ではこう使う
経済学では、この垂直な供給曲線に「需要曲線」を組み合わせて使います。需要曲線とは、買いたい人の側の線で、ふつう右下がりです。値段が安いほど、買いたい量が増えるからです。
供給が垂直で量が動かないとき、値段は何で決まるのでしょうか。答えは「買いたい側の勢い」です。土地を欲しがる人が増えると、需要曲線が右へずれます。供給は垂直のまま動きません。すると、線の交わる点は真上へ上がります。つまり、量は同じでも値段だけが大きく上がります。
これは不動産の現実とよく合います。人気の地域では、土地の量は増えないのに、欲しがる人が集まって地価だけが上がっていきます。逆に人が減る地域では、需要が左へずれ、量は同じまま値段が下がります。土地の値動きが「欲しがる人の数」で大きく振れるのは、供給が垂直だからです。この見方は不動産の価格を考えるときの土台になります。
ただし「宅地の供給」は増えることがある
ここまでは土地そのものの面積の話でした。地球の面積は変わらないので、垂直というのはその意味では正しい説明です。
いっぽう、実際の不動産市場で取引されるのは「宅地」「商業地」「賃貸できる床」です。これらは増やすことができます。
- 埋立てや造成で、新しく使える土地をつくる
- 農地を宅地に変えるなど、用途を変える
- 容積率の緩和や高層化で、同じ面積から取れる床を増やす
つまり「土地の面積」は垂直でも、「宅地としての供給」や「床の供給」は完全な垂直ではありません。また、短い期間ほど垂直に近く、長い期間では調整の余地が出てきます。鑑定の実務では、この区別がとても大切になります。
※ この説明が成り立つ前提
ここまでの説明は、話を分かりやすくするために次のような単純化をしています。細かい条件なので、はじめのうちは読み飛ばしても構いません。
- 垂直なのは「その場所にある土地そのものの量」を考えた場合です。
- 宅地として市場に出る量や、建物の床の広さは、埋立て・用途変更・高層化などで変わり得ます。
- 期間を長くとるほど、調整の余地は大きくなります。
○×で確認
ここまでの内容を、○×で確かめます。5問すべてに答えてから、次の解説へ進んでください。
問1 土地の供給曲線が垂直になるのは、値段が上がっても供給できる量を増やせないからである。
問2 土地の供給曲線は垂直なので、土地の値段の決まり方に供給は関係していない。
問3 供給が垂直である以上、土地の値段はいつも高い水準になる。
問4 供給が垂直なとき、土地を欲しがる人が増えて需要曲線が右へずれると、量は同じままで値段だけが上がる。
問5 マンションの部屋数を増やせば、その下の敷地面積も増える。
○×の解説
問1 土地の供給曲線が垂直になるのは、値段が上がっても供給できる量を増やせないからである。
答え:○
ふつうの品物は値段が上がれば作る量を増やせるので右上がりになります。土地は総量が決まっていて量が応えてくれないため、量が一定の位置で縦にまっすぐ立つ線になります。
問2 土地の供給曲線は垂直なので、土地の値段の決まり方に供給は関係していない。
答え:×
供給は「量が一定」という形でしっかり効いています。供給が消えたのではなく量が固定されているからこそ、値段が需要の側で決まるのです。
問3 供給が垂直である以上、土地の値段はいつも高い水準になる。
答え:×
垂直が意味するのは「量が動かない」ことだけです。値段が高いか安いかは需要の側で決まり、人が集まれば高く、離れれば安くなります。
問4 供給が垂直なとき、土地を欲しがる人が増えて需要曲線が右へずれると、量は同じままで値段だけが上がる。
答え:○
供給が垂直なので交わる点は真上へ動きます。人気の地域で土地の量は増えないのに地価だけが上がるのは、この形のためです。
問5 マンションの部屋数を増やせば、その下の敷地面積も増える。
答え:×
建物は建てれば増やせますが、増やせないという垂直の話は地面そのものの量についてです。部屋数が増えても敷地面積は変わりません。
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