Q.国が借金(国債)をして減税したら、人はそのお金を使いますか、貯めますか?
A.理屈では貯めるとされます。「今の減税は、将来の増税の先送り」と見抜けば、将来の増税に備えて貯金するから。すると減税の景気刺激効果は消えます(等価定理)。ただし現実には完全には成り立ちません。
身近な例で考える
政府が「景気対策で1人10万円減税します」と発表したとします。ただし、その財源は国債(国の借金)。あなたはこの10万円を使いますか?それとも「どうせ将来、増税で取り返される」と考えて貯めますか?
国債での減税=将来の増税
国債はいつか返さねばならず、その返済は将来の増税でまかなわれます。つまり「今の国債減税」は、実質的に税の支払いを未来に先送りしただけ。国全体で見れば、もらえる総額は増えていません。
合理的なら貯蓄に回る
将来の増税を見抜く合理的な人は、今の減税ぶんを将来の増税に備えて貯金します。すると消費は増えず、減税の景気刺激効果は打ち消されて消えてしまう。これがリカードの等価定理――「国債で払っても税金で払っても同じ(等価)」という主張です。
現実にはどこまで成り立つか
実際には、完全には成り立たないと考えられています。理由は――
- 将来の増税を正確には予想できない(人は近視眼的)。
- 借金できない人は、目の前の減税を使わざるを得ない(借入制約)。
- 増税を払うのは将来世代で、今の自分は関係ないと考える人もいる。
だから減税は、等価定理が言うほど完全には無効化されず、ある程度は消費を刺激する、というのが実務的な見方です。
まとめ
リカードの等価定理は「国債減税は将来の増税=合理的な人は貯めるから効果ゼロ」という主張。現実には借入制約などで部分的にしか成り立たないが、財政政策を考える重要な出発点です。
※ この説明が成り立つ前提
ここまでの説明は、話を分かりやすくするために次のような単純化をしています。細かい条件なので、はじめのうちは読み飛ばしても構いません。
- 家計が将来の増税を正しく見通し、そのために貯蓄できること(借りる制約がないこと)
- 税が働き方や買い物をゆがめない形であること(一括税)
- 自分の代だけでなく、子や孫の世代のことまで考えて行動すること
- これらが崩れると、減税にはある程度の効果が残ります。だから現実には「まったく効かない」とまでは言えません。
○×で確認
ここまでの内容を、○×で確かめます。5問すべてに答えてから、次の解説へ進んでください。
問1 国債を財源に減税をすると、リカードの等価定理では、人々はその分だけ消費を増やすと考える。
問2 リカードの等価定理では、国債による減税を「税の支払いを将来へ先送りしたもの」と考える。
問3 等価定理が完全に成り立つには、人々が将来の増税を見通して行動するなど、強い条件が必要である。
問4 現実の世界でも、国債による減税の景気刺激効果は常に完全にゼロになる。
問5 減税分を貯蓄に回す人が多いほど、減税による消費刺激の効果は小さくなる。
○×の解説
問1 国債を財源に減税をすると、リカードの等価定理では、人々はその分だけ消費を増やすと考える。
答え:×
逆です。「今の減税は将来の増税の先送り」と見抜いた人々は、将来の増税に備えて貯蓄します。だから消費は増えない、というのが定理の主張です。
問2 リカードの等価定理では、国債による減税を「税の支払いを将来へ先送りしたもの」と考える。
答え:○
そのとおりです。国債はいずれ将来の増税でまかなわれるため、国全体で見ればもらえる総額は増えていない、という見方をします。
問3 等価定理が完全に成り立つには、人々が将来の増税を見通して行動するなど、強い条件が必要である。
答え:○
そのとおりです。将来を正確に見通すこと、必要なら借入れができること、子や孫の世代まで考えて行動することなど、強い条件がそろってはじめて完全に成り立ちます。
問4 現実の世界でも、国債による減税の景気刺激効果は常に完全にゼロになる。
答え:×
現実には、将来を正確に予想できない人や、目の前の減税を使わざるを得ない人(借入制約のある人)がいるため、ある程度の効果は残ると考えられています。
問5 減税分を貯蓄に回す人が多いほど、減税による消費刺激の効果は小さくなる。
答え:○
そのとおりです。等価定理はこの傾向を極限まで進めた主張であり、貯蓄に回る割合が大きいほど、減税の効果は薄まります。
次に読む:S3-11「IS曲線」
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