リカードの等価定理──減税されても使わない?

マクロ S3-09 リカードの等価定理 のアイキャッチ マクロ経済学

Q.国が借金(国債)をして減税したら、人はそのお金を使いますか、貯めますか?

A.理屈では貯めるとされます。「今の減税は、将来の増税の先送り」と見抜けば、将来の増税に備えて貯金するから。すると減税の景気刺激効果は消えます(等価定理)。ただし現実には完全には成り立ちません。

⭐ 重要度:B / 出題頻度:B

📘 テキスト対応:第12章 12-4、第15章 15-3

📗 前提記事S3-08「2期間モデル」

⏱ 読了目安:7分

身近な例で考える

政府が「景気対策で1人10万円減税します」と発表したとします。ただし、その財源は国債(国の借金)。あなたはこの10万円を使いますか?それとも「どうせ将来、増税で取り返される」と考えて貯めますか?

国債での減税=将来の増税

国債はいつか返さねばならず、その返済は将来の増税でまかなわれます。つまり「今の国債減税」は、実質的に税の支払いを未来に先送りしただけ。国全体で見れば、もらえる総額は増えていません。

合理的なら貯蓄に回る

将来の増税を見抜く合理的な人は、今の減税ぶんを将来の増税に備えて貯金します。すると消費は増えず、減税の景気刺激効果は打ち消されて消えてしまう。これがリカードの等価定理――「国債で払っても税金で払っても同じ(等価)」という主張です。

現実にはどこまで成り立つか

実際には、完全には成り立たないと考えられています。理由は――

  • 将来の増税を正確には予想できない(人は近視眼的)。
  • 借金できない人は、目の前の減税を使わざるを得ない(借入制約)。
  • 増税を払うのは将来世代で、今の自分は関係ないと考える人もいる。

だから減税は、等価定理が言うほど完全には無効化されず、ある程度は消費を刺激する、というのが実務的な見方です。

まとめ

リカードの等価定理は「国債減税は将来の増税=合理的な人は貯めるから効果ゼロ」という主張。現実には借入制約などで部分的にしか成り立たないが、財政政策を考える重要な出発点です。

※ この説明が成り立つ前提

ここまでの説明は、話を分かりやすくするために次のような単純化をしています。細かい条件なので、はじめのうちは読み飛ばしても構いません。

  • 家計が将来の増税を正しく見通し、そのために貯蓄できること(借りる制約がないこと)
  • 税が働き方や買い物をゆがめない形であること(一括税)
  • 自分の代だけでなく、子や孫の世代のことまで考えて行動すること
  • これらが崩れると、減税にはある程度の効果が残ります。だから現実には「まったく効かない」とまでは言えません。

○×で確認

ここまでの内容を、○×で確かめます。5問すべてに答えてから、次の解説へ進んでください。

問1 国債を財源に減税をすると、リカードの等価定理では、人々はその分だけ消費を増やすと考える。

問2 リカードの等価定理では、国債による減税を「税の支払いを将来へ先送りしたもの」と考える。

問3 等価定理が完全に成り立つには、人々が将来の増税を見通して行動するなど、強い条件が必要である。

問4 現実の世界でも、国債による減税の景気刺激効果は常に完全にゼロになる。

問5 減税分を貯蓄に回す人が多いほど、減税による消費刺激の効果は小さくなる。

○×の解説

問1 国債を財源に減税をすると、リカードの等価定理では、人々はその分だけ消費を増やすと考える。

答え:×

逆です。「今の減税は将来の増税の先送り」と見抜いた人々は、将来の増税に備えて貯蓄します。だから消費は増えない、というのが定理の主張です。

問2 リカードの等価定理では、国債による減税を「税の支払いを将来へ先送りしたもの」と考える。

答え:○

そのとおりです。国債はいずれ将来の増税でまかなわれるため、国全体で見ればもらえる総額は増えていない、という見方をします。

問3 等価定理が完全に成り立つには、人々が将来の増税を見通して行動するなど、強い条件が必要である。

答え:○

そのとおりです。将来を正確に見通すこと、必要なら借入れができること、子や孫の世代まで考えて行動することなど、強い条件がそろってはじめて完全に成り立ちます。

問4 現実の世界でも、国債による減税の景気刺激効果は常に完全にゼロになる。

答え:×

現実には、将来を正確に予想できない人や、目の前の減税を使わざるを得ない人(借入制約のある人)がいるため、ある程度の効果は残ると考えられています。

問5 減税分を貯蓄に回す人が多いほど、減税による消費刺激の効果は小さくなる。

答え:○

そのとおりです。等価定理はこの傾向を極限まで進めた主張であり、貯蓄に回る割合が大きいほど、減税の効果は薄まります。


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