為替レートはどう決まるのか:円高・円安の意味から

マクロ S3-28 為替はどう決まる マクロ経済学

Q.「円高」とは、円の金額が大きくなることですか。

A.いいえ、金額の大小ではありません。円高とは、同じ1ドルを買うのに必要な円が「少なくて済む」状態を指します。たとえば1ドル150円から1ドル100円になると、少ない円でドルが買えます。これが円高です。円の価値が上がった、と言いかえられます。数字が小さくなるのに「高」と呼ぶので、ここが最初のつまずきどころです。

⭐ 重要度:A / 出題頻度:B

📘 テキスト対応:第17章 17-1(為替レート)

📗 前提記事:なし

⏱ 読了目安:9分

まず、どこでつまずくのか

為替(かわせ、foreign exchange)の話には、つまずきやすい点があります。理由ははっきりしています。

それは、「円高」なのに数字が小さくなるという点です。

ニュースでは「1ドル150円から100円になった」と言います。数字は下がっています。それなのに「円高」と呼びます。ここで頭が混乱します。

もう一つのつまずきは、言葉の主語です。「円が高い」「ドルが高い」と、何と何を比べているのかが見えにくいのです。

この記事では、この2つのつまずきをほどいていきます。用語よりも先に、まずイメージを作ります。

為替レートは「交換の値段」

為替レート(exchange rate)とは、むずかしく言えばお金とお金を交換する比率です。でも、まずは身近な言いかえで考えます。

それは「1ドルを買うのに、円がいくら要るか」という値段です。

りんご1個が100円、と同じ感覚です。ドル1個が150円、という値段だと思ってください。

だから「1ドル150円」は、ドルというものの値段が150円だ、という意味になります。

ここが分かると、次の話がすっと入ります。ドルの値段が上がるか下がるか、それだけを追えばよいのです。

身近な例で考える:人気が値段を動かす

海外旅行のおみやげで、ある外国のお菓子が大人気になったとします。

みんなが買いに走ると、そのお菓子はどうなるでしょうか。品薄になり、値段が上がります。

お金も同じです。ドルを欲しがる人が増えると、ドルの値段が上がります。

ドルの値段が上がるとは、1ドルを買うのに、より多くの円が要るということです。たとえば150円から160円に上がります。

このとき、ドルは高く、円は安くなっています。これが円安(えんやす)です。

逆に、ドルを欲しがる人が減れば、ドルの値段は下がります。1ドル150円から140円になります。これが円高です。

円高・円安の言葉を整理する

ここで言葉を整理します。混乱しやすいので、ゆっくり進みます。

  • 円安:1ドルを買うのに、より多くの円が要る状態(例:150円→160円)。円の価値が下がっています。
  • 円高:1ドルを買うのに、より少ない円で済む状態(例:150円→140円)。円の価値が上がっています。

コツは、円を主語にせず、まずドルの値段を見ることです。

ドルが高くなれば円安、ドルが安くなれば円高。こう覚えると、数字の向きに惑わされにくくなります。

「安いほうが得」という日常の感覚は、ここでは一度わきに置きます。円高・円安に、良い悪いの意味はありません。

経済学ではこう使う:お金が動く2つの理由

では、ドルを欲しがる人はなぜ増えたり減ったりするのでしょうか。経済学では、大きく2つの流れで考えます。

1つ目は輸出入(ゆしゅつにゅう)です。日本の会社が外国のものを買うとき、支払いにドルが要ります。輸入が増えると、ドルを欲しがる動きが強まります。すると円安に向かいます。

逆に、日本のものが外国でよく売れると、その代金として円が欲しがられます。円高に向かいます。

2つ目は金利差(きんりさ、interest rate差)です。金利とは、お金を預けたときに増える割合のことです。

ある国の金利が高いと、その国にお金を置くと多く増えます。だから、そこにお金が集まります。お金を移すには、その国のお金を買う必要があります。

たとえばアメリカの金利が高いと、ドルを欲しがる人が増えます。すると円安に向かいやすくなります。

つまり為替レートは、ものの取引お金を置く場所選びの、2つの流れが押し合って決まります。

※ この説明が成り立つ前提

ここまでの説明は、話を分かりやすくするために次のような単純化をしています。細かい条件なので、はじめのうちは読み飛ばしても構いません。

  • 為替は貿易だけで決まるわけではなく、金利の予想、リスクの見方、資金の移動にも大きく左右されます。
  • 「金利が高い国にお金が集まる」は、将来の為替の予想を考えに入れると単純には言えません(S3-30で扱います)。
  • 固定相場制の国や、政府が介入する場合もあります。

○×で確認

ここまでの内容を、○×で確かめます。5問すべてに答えてから、次の解説へ進んでください。

問1 1ドル150円から1ドル100円へと数字が小さくなるのは、円安である。

問2 円高とは、1ドルを買うのに必要な円が少なくて済む状態のことである。

問3 円高はいつでも良いことで、円安はいつでも悪いことである。

問4 ドルを欲しがる人が増えると、ドルの値段が上がり、円安に向かう。

問5 日々の為替レートは、政府がその値段を直接決めている。

○×の解説

問1 1ドル150円から1ドル100円へと数字が小さくなるのは、円安である。

答え:×

少ない円で1ドルが買えるようになったので、これは円高です。数字が小さくなるのに「高」と呼ぶため、いちばん間違えやすい点です。

問2 円高とは、1ドルを買うのに必要な円が少なくて済む状態のことである。

答え:○

為替レートは「1ドルを買うのに円がいくら要るか」という値段だと考えます。必要な円が少なくなった=円の価値が上がった状態が円高です。

問3 円高はいつでも良いことで、円安はいつでも悪いことである。

答え:×

良し悪しは立場によって変わります。輸入をする人には円高が助かりますが、輸出をする人には円安のほうが助かるので、一概には言えません。

問4 ドルを欲しがる人が増えると、ドルの値段が上がり、円安に向かう。

答え:○

人気が出た品物の値段が上がるのと同じ理屈です。1ドルを買うのにより多くの円が要るようになるので、円安になります。

問5 日々の為替レートは、政府がその値段を直接決めている。

答え:×

多くの国では、日々のレートは市場での売り買いで動きます。政府が値段そのものを決めているわけではありません。


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