地価の公式 P=R/(i−g) を1行ずつ読む

不動産 S4-02 地価の公式 のアイキャッチ 不動産へのブリッジ

Q.金利iが下がると、なぜ地価Pは上がるのですか。

A.式P=R/(i−g)では、金利iは分母(下の数字)に入っています。分母が小さくなると、割り算の答えは大きくなります。たとえば同じ地代Rでも、分母が3から2に減れば答えは1.5倍です。金利iが下がると分母(i−g)が小さくなり、その結果として地価Pが上がる、という関係になります。

⭐ 重要度:S / 出題頻度:S

📘 テキスト対応:第20章(地価と割引現在価値)

📗 前提記事S0-13「R÷iになる理由」S0-12「割引現在価値」

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まず、どこでつまずくのか

土地の値段は、どうやって決まるのでしょうか。経済学の教科書には、よくこんな式が出てきます。

P = R ÷ (i − g)

記号が4つも並んで、見た瞬間に手が止まる方が多いはずです。つまずく理由は、だいたい3つに分かれます。

  • 1つ目は、記号が何を指すのか分からないこと。
  • 2つ目は、なぜ「割り算」で値段が出るのか、しっくりこないこと。
  • 3つ目は、なぜ「i から g を引く」のか、その引き算の意味が見えないことです。

この記事では、この式を1行ずつ、いえ1文字ずつほどいていきます。数式そのものより、「毎年入るお金から、その土地の値段を逆算する」という考え方をつかむことが目標です。

P = R ÷ ( i − g ) P=地価 R=毎年の地代 i=割引率(金利) g=地代の期待上昇率 分母(i−g)が小さいほど、地価Pは大きい 1年後2年後3年後4年後5年後6年後7年後 将来ずっと入る地代を「今の価値」に直して合計=地価P 遠い将来ほど小さい →
図 地価の公式 P=R÷(i−g)。将来ずっと入る地代を今の価値に直して合計したものが地価

身近な例で考える:毎年お金が入る土地

まず、土地を「毎年お金を生む道具」として見てみます。

ある土地を人に貸すと、毎年いくらかの地代(rent、土地を借りるための料金)が入ります。ここでは地代を記号Rで表します。かりに、毎年100万円の地代が入る土地があるとします。

ここで素朴な質問です。「毎年100万円が入る土地は、いくらで買うのが妥当でしょうか」

もし「100万円」と答えると、それは1年ぶんだけの値段です。土地は来年も、再来年も、その先もずっと地代を生みます。ですから、土地の値段Pは、これから先ずっと入る地代を、全部足し合わせたもののはずです。

この「ずっと先まで足し合わせる」という発想が、公式の出発点になります。

「割る」とはどういうことか:現在価値の合計

ここで1つ、大事な事実があります。同じ100万円でも、今もらう100万円と、10年後にもらう100万円は、価値が違うということです。

今の100万円は、銀行に預けたり運用したりすれば、10年後には少し増えています。逆に言うと、10年後の100万円は、今の価値に直すと100万円より少なくなります。この「今の価値に直すこと」を割引(discount)と呼びます。そして、どれくらい割り引くかの強さを表すのが割引率i(interest rate、ここでは金利に近いもの)です。

遠い将来の地代ほど、今の価値に直すと小さくなります。1年後の地代、2年後の地代、3年後の地代…と、少しずつ小さくしながら全部足していきます。

この「小さくしながら無限に足し算する」という面倒な計算を、実はたった1回の割り算にまとめられます。それが「R ÷ i」という形です。割り算は、無限の足し算の近道だと考えると、気持ちが楽になります。

なぜ i から g を引くのか:地代が育つぶんを差し引く

ここまでは、地代Rが毎年ずっと同じ、という前提でした。でも現実の地代は、少しずつ上がっていくことがあります。物価が上がれば、家賃や地代も上がりやすいからです。

この「地代が毎年伸びていく率」を、期待上昇率g(expected growth rate、期待成長率)と呼びます。かりに地代が毎年2%ずつ伸びるなら、gは0.02です。

地代が育っていくなら、土地の値段はさらに高くてよいはずです。将来もらえる金額が、どんどん大きくなるからです。そこで公式は、割引率iから期待上昇率gを引いて、分母を「i − g」とします。

  • iは「将来のお金を小さく見積もる力」。
  • gは「地代がふくらんでいく力」。
  • この2つがせめぎ合った差し引きが、分母になります。

gが大きい(よく育つ)ほど、分母のi − gは小さくなります。分母が小さいほど、割り算の答えである地価Pは大きくなります。「よく育つ土地ほど高い」という感覚と、ちゃんと一致します。

経済学ではこう使う:鑑定・不動産との接続

この公式は、机の上の理屈ではありません。不動産の値段を求める実務、とくに収益還元法という考え方の土台になっています。収益還元法とは、その不動産が生む収益から逆算して価格を求める方法です。

不動産鑑定士の試験でも、この「毎年の収益 ÷ 利回り = 価格」という関係が繰り返し登場します。P = R ÷ (i − g) は、その最もシンプルな形だと言えます。

実務では、割引率iをもう少し細かく分けて考えます。安全利子率rf(risk-free rate、ほぼ確実にもらえる運用の利回り)に、リスクプレミアムρ(risk premium、危険を引き受ける見返り)を足して作ります。

  • 安全利子率rfは、国債などの安全な運用の利回りが目安です。
  • リスクプレミアムρは、空室や値下がりなど、不動産ならではの不確実さへの上乗せです。

つまり割引率iは、おおよそ「i = rf + ρ」という形で組み立てられます。この式と地価の公式をつなげると、金利や景気の動きが、土地の値段にどう伝わるかを筋道立てて説明できます。ここが、鑑定士試験で経済学を学ぶ大きな理由の1つです。

金利が下がると地価が上がる、を式で確かめる

公式のいちばんの見どころは、金利iが下がると地価Pが上がるという関係です。ニュースで「低金利で地価が上昇」と聞くことがありますが、その理屈がこの式で説明できます。

簡単な数字で確かめます。地代Rを100万円、期待上昇率gを0に固定します。

  • 割引率iが5%(0.05)のとき、P = 100万円 ÷ 0.05 = 2000万円。
  • 割引率iが4%(0.04)に下がると、P = 100万円 ÷ 0.04 = 2500万円。

同じ地代でも、金利が1%下がっただけで、地価が2000万円から2500万円へ上がりました。理由は単純で、iは分母にあるからです。分母が小さくなると、割り算の答えは大きくなる。それだけのことです。

反対に、金利が上がれば分母は大きくなり、地価は下がる方向に動きます。金利と地価は、シーソーのように反対に動く、とイメージすると覚えやすいです。

※ この説明が成り立つ前提

ここまでの説明は、話を分かりやすくするために次のような単純化をしています。細かい条件なので、はじめのうちは読み飛ばしても構いません。

  • Rは「これから1年間に入る純収益」、iは投資家が求める利回り(割引率)と考えます。単なる預金金利ではありません。
  • 収益が毎年一定の率gで伸び続け、iがgより大きいことが必要です。
  • 金利が下がれば必ず地価が上がるとは限りません。景気が悪くてRやgも下がる場合があるためです。

○×で確認

ここまでの内容を、○×で確かめます。5問すべてに答えてから、次の解説へ進んでください。

問1 金利iが下がると分母(i−g)が小さくなり、地価Pは大きくなる。

問2 公式P=R÷(i−g)のPは、1年ぶんの地代とほぼ同じ金額になる。

問3 地代の期待上昇率gは、分母で割引率iに足す。

問4 この公式は、割引率iが期待上昇率gより大きいこと(i>g)を前提にしている。

問5 金利iが上がると、地価Pも上がる。

○×の解説

問1 金利iが下がると分母(i−g)が小さくなり、地価Pは大きくなる。

答え:○

割り算は、分母が小さくなるほど答えが大きくなります。「低金利で地価が上昇」という話は、この関係で説明できます。

問2 公式P=R÷(i−g)のPは、1年ぶんの地代とほぼ同じ金額になる。

答え:×

Pは1年ぶんではなく、将来ずっと入る地代を今の価値に直して合計したものです。だからRよりずっと大きな金額になります。

問3 地代の期待上昇率gは、分母で割引率iに足す。

答え:×

正しくは引き算で、分母はi+gではなくi−gです。符号を間違えると、値段の大小があべこべになります。

問4 この公式は、割引率iが期待上昇率gより大きいこと(i>g)を前提にしている。

答え:○

gがiに近づいたり追い越したりすると、分母がゼロや負になり、式が意味を失います。地代が金利以上の勢いで永遠に伸び続けるという前提は、現実には成り立ちにくいからです。

問5 金利iが上がると、地価Pも上がる。

答え:×

逆です。iは分母にあるので、iが上がれば分母が大きくなり、地価Pは下がります。


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