「需要が増える」と「需要量が増える」は別物 グラフの線で見分ける

つまずき S5-01 需要と需要量は別物 のアイキャッチ つまずき・誤解

Q.グラフの線が「動く」って、2種類あるって本当?

A.あります。「線の上をすべって動く」場合と、「線そのものが左右にずれる(シフト)」場合です。原因がちがうので、区別がとても大切です。

⭐ 重要度:S / 出題頻度:B

📘 テキスト対応:第1章 1-1-6「需要曲線・供給曲線のシフトと比較静学」

📗 前提記事S0-02「右上がり・右下がり」

⏱ 読了目安:8分

まず、どこでつまずくのか

グラフの上で「線が動く」という話が、これからよく出てきます。多くの人は、この「線が動く」を1種類だと思っています。ところが実際には2種類あって、この2つを見分けられるかどうかが、経済学の最初の関門になります。

むずかしい言葉はまだ使いません。身近な例から、ゆっくり見ていきましょう。

レモネードの屋台を出してみる

夏祭りでレモネードを売る屋台を出したとします。1杯の値段は自分で決められます。値段を高くすると「高いなあ」と買う人は減り、安くすると「じゃあ買おうかな」と買う人が増えます。ある日の売れ方を表にすると、たとえばこうなりました。

1杯の値段 売れた数
300円 20杯
200円 40杯
100円 60杯

この3つの組を、横に「売れる数」・縦に「値段」をとって点で打ち、結んでみます。すると右下がりの線になります(軸と点の読み方は S0-01S0-02)。この線は「値段をいくらにすると、だいたい何杯売れるか」を表しています。

値段と売れる数の3つの組(300円で20杯、200円で40杯、100円で60杯)を打点し、結ぶと右下がりの線になる。 値段(円) 売れる数(杯) 300 200 100 20 40 60
図1 3つの組(300円→20杯/200円→40杯/100円→60杯)を打点して結ぶと、右下がりの線になる

パターン① 値段を変える → 点が線の上をすべる

まず、値段を200円から100円に下げてみます。すると、売れる数は40杯から60杯に増えます。このときグラフの上では、同じ線の上を、点が右下へすべって移動しただけです(図2の点A→点B)。線そのものは動いていません。

値段を200円から100円に下げると、同じ線の上を点AからBへすべって動く。値段は縦軸で確認できる。 値段 売れる数 200円 100円 A B
図2 値段を200円→100円に下げると、同じ線の上を点AからBへすべる(線そのものは動かない)

これが1つ目のパターン。「値段が変わったので、線の上をすべる」動きです。原因は値段にあります。

パターン② 値段以外が変わる → 線ごと動く(シフト)

次は、値段を変えません。100円のままにします。ところが、その日がとても暑くなったとします。すると、同じ100円でも、さっきより多く売れます

これは「同じ線の上の移動」では表せません。だって、値段(縦の位置)は同じなのに、売れる数(横の位置)が増えたのですから。このときは、線そのものが右へずれます(図3)。これが2つ目のパターンで、シフトと呼びます。

暑い日になると、線そのものが右へ動く(シフト)。点線が元の線、実線が暑い日の線。 値段 売れる数 元の線 暑い日
図3 暑い日になると、線そのものが右へ動く=シフト(点線=元の線/実線=暑い日の線)

暑さのほかにも、「テレビで紹介された」「近くのライバル店が閉まった」なども、線を右へずらす理由になります。いずれも値段以外の理由である点が共通しています。

経済学の言葉に翻訳する

この「値段と売れる数の関係を表す線」を、経済学では需要曲線(じゅようきょくせん)と呼びます(くわしくは別の記事であつかいます)。そして、2つの動きに、それぞれ別の名前がついています。

  • 値段が変わって線の上をすべる動き → 「需要量の変化」(図2)
  • 値段以外が変わって線ごとずれる動き → 「需要の変化(シフト)」(図3)

同じ「動く」でも、言葉まで分けているのです。「需要が増えた」と「需要量が増えた」は、まったく別の意味になります。

経済学ではこう使う

外から何かの条件が変わったとき、線がどう動くかを調べる作業を比較静学(ひかくせいがく)といいます。ここで大事なのは、「線の上をすべるのか、線ごとシフトするのか」を正しく見分けること。そして線がシフトするときは、「なぜその向きにずれるのか」を必ず一言そえて説明します(例:暑くなったから右へ)。この考え方は、あとで出てくるIS曲線やAD曲線でも、まったく同じように使います。

※ この説明が成り立つ前提

ここまでの説明は、話を分かりやすくするために次のような単純化をしています。細かい条件なので、はじめのうちは読み飛ばしても構いません。

  • 「需要が増える=曲線ごと動く」「需要量が増える=同じ曲線の上を動く」という区別は、価格以外の条件を一定とした需給グラフでの整理です。

○×で確認

ここまでの内容を、○×で確かめます。5問すべてに答えてから、次の解説へ進んでください。

問1 値段が変わって線の上を点がすべる動きを「需要量の変化」と呼ぶ。

問2 レモネードの値段を200円から100円に下げて売れる数が増えたのは、需要曲線のシフトである。

問3 暑くなって、同じ100円のままでも多く売れるようになったのは、線の上をすべる動きである。

問4 線の上の移動かシフトかは、動いた原因が値段なのか値段以外なのかで見分ける。

問5 「需要が増えた」と「需要量が増えた」は、どちらも同じ意味である。

○×の解説

問1 値段が変わって線の上を点がすべる動きを「需要量の変化」と呼ぶ。

答え:○

このとき線そのものは動いていません。原因が値段にあるときは、同じ線の上を点が移動するだけです。

問2 レモネードの値段を200円から100円に下げて売れる数が増えたのは、需要曲線のシフトである。

答え:×

これは線の上の移動です。原因が値段なので、同じ線の上を点が右下へすべっただけで、線そのものは動いていません。

問3 暑くなって、同じ100円のままでも多く売れるようになったのは、線の上をすべる動きである。

答え:×

これはシフトです。値段(縦の位置)は同じなのに売れる数が増えているので、線そのものが右へずれています。

問4 線の上の移動かシフトかは、動いた原因が値段なのか値段以外なのかで見分ける。

答え:○

原因が値段なら線の上をすべり、値段以外なら線ごとずれます。シフトのときは「暑くなったから右へ」のように、なぜその向きにずれるのかを必ず一言そえて説明します。

問5 「需要が増えた」と「需要量が増えた」は、どちらも同じ意味である。

答え:×

経済学ではこの2つをまったく別の意味で使い分けます。「需要量の変化」は線の上の移動、「需要の変化」は線ごとのシフトを指します。


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