Q.グラフの線が「動く」って、2種類あるって本当?
A.あります。「線の上をすべって動く」場合と、「線そのものが左右にずれる(シフト)」場合です。原因がちがうので、区別がとても大切です。
まず、どこでつまずくのか
グラフの上で「線が動く」という話が、これからよく出てきます。多くの人は、この「線が動く」を1種類だと思っています。ところが実際には2種類あって、この2つを見分けられるかどうかが、経済学の最初の関門になります。
むずかしい言葉はまだ使いません。身近な例から、ゆっくり見ていきましょう。
レモネードの屋台を出してみる
夏祭りでレモネードを売る屋台を出したとします。1杯の値段は自分で決められます。値段を高くすると「高いなあ」と買う人は減り、安くすると「じゃあ買おうかな」と買う人が増えます。ある日の売れ方を表にすると、たとえばこうなりました。
| 1杯の値段 | 売れた数 |
|---|---|
| 300円 | 20杯 |
| 200円 | 40杯 |
| 100円 | 60杯 |
この3つの組を、横に「売れる数」・縦に「値段」をとって点で打ち、結んでみます。すると右下がりの線になります(軸と点の読み方は S0-01・S0-02)。この線は「値段をいくらにすると、だいたい何杯売れるか」を表しています。
パターン① 値段を変える → 点が線の上をすべる
まず、値段を200円から100円に下げてみます。すると、売れる数は40杯から60杯に増えます。このときグラフの上では、同じ線の上を、点が右下へすべって移動しただけです(図2の点A→点B)。線そのものは動いていません。
これが1つ目のパターン。「値段が変わったので、線の上をすべる」動きです。原因は値段にあります。
パターン② 値段以外が変わる → 線ごと動く(シフト)
次は、値段を変えません。100円のままにします。ところが、その日がとても暑くなったとします。すると、同じ100円でも、さっきより多く売れます。
これは「同じ線の上の移動」では表せません。だって、値段(縦の位置)は同じなのに、売れる数(横の位置)が増えたのですから。このときは、線そのものが右へずれます(図3)。これが2つ目のパターンで、シフトと呼びます。
暑さのほかにも、「テレビで紹介された」「近くのライバル店が閉まった」なども、線を右へずらす理由になります。いずれも値段以外の理由である点が共通しています。
経済学の言葉に翻訳する
この「値段と売れる数の関係を表す線」を、経済学では需要曲線(じゅようきょくせん)と呼びます(くわしくは別の記事であつかいます)。そして、2つの動きに、それぞれ別の名前がついています。
- 値段が変わって線の上をすべる動き → 「需要量の変化」(図2)
- 値段以外が変わって線ごとずれる動き → 「需要の変化(シフト)」(図3)
同じ「動く」でも、言葉まで分けているのです。「需要が増えた」と「需要量が増えた」は、まったく別の意味になります。
経済学ではこう使う
外から何かの条件が変わったとき、線がどう動くかを調べる作業を比較静学(ひかくせいがく)といいます。ここで大事なのは、「線の上をすべるのか、線ごとシフトするのか」を正しく見分けること。そして線がシフトするときは、「なぜその向きにずれるのか」を必ず一言そえて説明します(例:暑くなったから右へ)。この考え方は、あとで出てくるIS曲線やAD曲線でも、まったく同じように使います。
※ この説明が成り立つ前提
ここまでの説明は、話を分かりやすくするために次のような単純化をしています。細かい条件なので、はじめのうちは読み飛ばしても構いません。
- 「需要が増える=曲線ごと動く」「需要量が増える=同じ曲線の上を動く」という区別は、価格以外の条件を一定とした需給グラフでの整理です。
○×で確認
ここまでの内容を、○×で確かめます。5問すべてに答えてから、次の解説へ進んでください。
問1 値段が変わって線の上を点がすべる動きを「需要量の変化」と呼ぶ。
問2 レモネードの値段を200円から100円に下げて売れる数が増えたのは、需要曲線のシフトである。
問3 暑くなって、同じ100円のままでも多く売れるようになったのは、線の上をすべる動きである。
問4 線の上の移動かシフトかは、動いた原因が値段なのか値段以外なのかで見分ける。
問5 「需要が増えた」と「需要量が増えた」は、どちらも同じ意味である。
○×の解説
問1 値段が変わって線の上を点がすべる動きを「需要量の変化」と呼ぶ。
答え:○
このとき線そのものは動いていません。原因が値段にあるときは、同じ線の上を点が移動するだけです。
問2 レモネードの値段を200円から100円に下げて売れる数が増えたのは、需要曲線のシフトである。
答え:×
これは線の上の移動です。原因が値段なので、同じ線の上を点が右下へすべっただけで、線そのものは動いていません。
問3 暑くなって、同じ100円のままでも多く売れるようになったのは、線の上をすべる動きである。
答え:×
これはシフトです。値段(縦の位置)は同じなのに売れる数が増えているので、線そのものが右へずれています。
問4 線の上の移動かシフトかは、動いた原因が値段なのか値段以外なのかで見分ける。
答え:○
原因が値段なら線の上をすべり、値段以外なら線ごとずれます。シフトのときは「暑くなったから右へ」のように、なぜその向きにずれるのかを必ず一言そえて説明します。
問5 「需要が増えた」と「需要量が増えた」は、どちらも同じ意味である。
答え:×
経済学ではこの2つをまったく別の意味で使い分けます。「需要量の変化」は線の上の移動、「需要の変化」は線ごとのシフトを指します。
次に読む:S5-02「限界≠限度」
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