解答
解説
この問題は、総論第7章第1節「価格を求める鑑定評価の手法」から問われている問題です。
イ：誤
対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合における取引事例比較法の適用において、同一需給圏内の代替競争不動産に係る取引事例と対象不動産との価格形成要因の比較を行う場合には、各不動産の存する用途的地域の特性の影響を受ける度合いが低いため、個別的要因の比較のみで足りる。
「最有効使用が標準的使用と異なる場合」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意取引事例等として同一需給圏内の代替競争不動産に係るものを選択する場合において、価格形成要因に係る対象不動産との比較を行う際には、個別的要因の比較だけでなく市場の特性に影響を与えている地域要因の比較もあわせて行うべきことに留意すべきである【2176】
従って、「個別的要因の比較のみで足りる」としている本肢は誤りです。
ロ：正
価格形成要因のうち一般的要因は、不動産の価格形成全般に影響を与えるものであり、鑑定評価手法の適用における各手順において常に考慮されるべきものである。
「一般的要因の活用」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意価格形成要因のうち一般的要因は、不動産の価格形成全般に影響を与えるものであり、鑑定評価手法の適用における各手順において常に考慮されるべきものであり、価格判定の妥当性を検討するために活用しなければならない【298】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ハ：正
自己資金で自社ビルを建設した場合であっても、原価法の適用における再調達原価には、建物引渡しまでに発注者が負担する通常の資金調達費用や標準的な開発リスク相当額が含まれる場合がある。
「資金調達費用と開発リスク相当額」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意これらの場合における通常の付帯費用には、建物引渡しまでに発注者が負担する通常の資金調達費用や標準的な開発リスク相当額等が含まれる場合があることに留意する必要がある【326】
自己資金で自社ビルを建設した場合であっても、再調達原価には、建物引渡しまでに発注者が負担する通常の資金調達費用や標準的な開発リスク相当額が含まれる場合があります。
従って、本肢の内容は正しいです。
ニ：誤
事業用不動産についての収益還元法の適用において、運営事業者が通常よりも優れた能力を有することによって生じる超過収益は、本来、運営事業者の経営等に帰属するものであるから、当該超過収益が当該事業用不動産に帰属することはない。
「超過収益」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています
基準・留意運営事業者が通常よりも優れた能力を有することによって生じる超過収益は、本来、運営事業者の経営等に帰属するものであるが、賃貸借契約において当該超過収益の一部が不動産の所有者に安定的に帰属することについて合意があるときには、当該超過収益の一部が当該事業用不動産に帰属する場合があることに留意すべきである【2371】
従って、「帰属することはない」とする本肢は誤りです。
ホ：正
文化財の指定を受けた建造物について、その保存等に主眼をおいて行う建物の鑑定評価に当たっては、原価法の適用における減価修正は、主として物理的要因に着目して行う。
「特殊価格を求める鑑定評価」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意特殊価格を求める場合を例示すれば、文化財の指定を受けた建造物、宗教建築物又は現況による管理を継続する公共公益施設の用に供されている不動産について、その保存等に主眼をおいた鑑定評価を行う場合である【217】
特殊価格を求める減価修正では、歴史的価値などを考慮せずに物理的要因に着目して行います。
従って、本肢の内容は正しいです。
