〔問題〕
取引事例比較法に関する次のイからホまでの記述のうち、正しいものをすべて掲げた組合せはどれか。
イ 近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産について収集した取引事例の大部分が、特殊な事情による影響を著しく受けていることその他の特別な事情により当該取引事例のみによって鑑定評価を適切に行うことができないと認められる場合には、取引事例比較法の適用はできない。
ロ 地域要因及び個別的要因の比較について、それぞれの地域における個別的要因が標準的な土地を設定して行う方法は、取引事例に係る不動産が近隣地域に存するものである場合においても行うことができる方法である。
ハ 借地権付建物の取引事例において、配分法を適用することにより、底地の事例資料を求めることができる。
ニ 取引事例が競売において価格が成立したものであるときは、事情補正の必要の有無を判定し、事情補正を要すると判定したときは、取引が行われた市場における客観的な価格水準等を考慮して、減額又は増額すべきである。
ホ 時点修正率を求めるに当たって、適切な取引事例が乏しい場合には、売り希望価格、買い希望価格等の動向及び市場の需給動向に関する諸資料を参考として用いることができる。
⑴ イとロとハ
⑵ イとロとニ
⑶ イとハとホ
⑷ ロとニとホ
⑸ ハとニとホ
解答
解説
この問題は、総論第7章第1節「価格を求める鑑定評価の手法」から問われている問題です。
イ：誤
近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産について収集した取引事例の大部分が、特殊な事情による影響を著しく受けていることその他の特別な事情により当該取引事例のみによって鑑定評価を適切に行うことができないと認められる場合には、取引事例比較法の適用はできない。
「取引事例の選択」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意取引事例は、原則として近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産に係るもののうちから選択するものとし、必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺の地域に存する不動産に係るもののうちから、【365】
「必要やむを得ない場合」について、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意この場合における必要やむを得ない場合とは、近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産について収集した取引事例等の大部分が特殊な事情による影響を著しく受けていることその他の特別な事情により当該取引事例等のみによっては鑑定評価を適切に行うことができないと認められる場合をいう【2168】
つまり、近隣地域又は類似地域の事例が使えない場合には近隣地域の周辺の地域の事例を活用することによって取引事例比較法を適用することができるとういことです。
従って、「適用できない」とする本肢は誤りです。
ロ：正
地域要因及び個別的要因の比較について、それぞれの地域における個別的要因が標準的な土地を設定して行う方法は、取引事例に係る不動産が近隣地域に存するものである場合においても行うことができる方法である。
本肢は、「間接的な要因比較」について述べられた選択肢です。
地域要因及び個別的要因の比較について、それぞれの地域における個別的要因が標準的な土地を設定して行う方法は、取引事例に係る不動産が近隣地域に存するものである場合においても行うことができる方法です。この場合、①取引事例と標準的な土地を比較し(標準化補正)、②標準的な土地と対象不動産で個別的要因の比較を行います。
従って、本肢の内容は正しいです。
ハ：誤
借地権付建物の取引事例において、配分法を適用することにより、底地の事例資料を求めることができる。
本肢は、「配分法の適用の可否」について述べられた選択肢です。
配分法は建物及びその敷地の事例から土地の事例又は建物の事例を抽出する方法で、複合不動産を物理的に分割するものです。宅地を権利面で分割した借地権と底地については適用できません。借地権付建物の事例から抽出できる事例は、借地権と建物です。
従って、「底地の事例を求められる」とする本肢は誤りです。
ニ：正
取引事例が競売において価格が成立したものであるときは、事情補正の必要の有無を判定し、事情補正を要すると判定したときは、取引が行われた市場における客観的な価格水準等を考慮して、減額又は増額すべきである。
「事情補正の留意点」について述べられた選択肢であり、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意事情補正の必要性の有無及び程度の判定に当たっては、多数の取引事例等を総合的に比較対照の上、検討されるべきものであり、事情補正を要すると判定したときは、取引が行われた市場における客観的な価格水準等を考慮して適切に補正を行わなければならない【2193】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ホ：正
時点修正率を求めるに当たって、適切な取引事例が乏しい場合には、売り希望価格、買い希望価格等の動向及び市場の需給動向に関する諸資料を参考として用いることができる。
「時点修正率の求め方」について述べられた選択肢であり、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意適切な取引事例が乏しい場合には、売り希望価格、買い希望価格等の動向及び市場の需給の動向等に関する諸資料を参考として用いることができるものとする【2203】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
