〔問題〕
建物及びその敷地の鑑定評価に関する次のイからホまでの記述のうち、誤っているものをすべて掲げた組合せはどれか。
イ 貸家及びその敷地の鑑定評価額は、収益価格を標準に積算価格及び比準価格を比較考量して決定するが、建物が賃貸されている場合の借地権付建物も同様である。
ロ 貸家及びその敷地の鑑定評価に当たっては、契約に当たって授受された預り金的性格を有する一時金の額及びこれに関する契約内容を勘案する必要があるが、譲渡的性格を有する一時金については勘案する必要はない。
ハ 建物を取り壊すことが最有効使用と認められる自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、建物の解体による発生材料の価格から取壊し、除去、運搬等に必要な経費を控除した額を、当該敷地の最有効使用に基づく価格に加減して決定する。
ニ 区分所有者の管理費等の滞納の有無が、区分所有建物及びその敷地の価格形成に影響することがある。
ホ 自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、積算価格を標準に比準価格及び収益価格を比較考量して決定するが、建物が自用の場合の借地権付建物も同様である。
⑴ イとハ
⑵ イとニ
⑶ ロとニ
⑷ ロとホ
⑸ ハとホ
解答
解説
この問題は、各論第1章第2節「建物及びその敷地」から問われている問題です。
イ:正
貸家及びその敷地の鑑定評価額は、収益価格を標準に積算価格及び比準価格を比較考量して決定するが、
この部分は正しい記載がされており、「貸家及びその敷地の鑑定評価」について基準には以下のように記載されています。
基準・留意貸家及びその敷地の鑑定評価額は、実際実質賃料(売主が既に受領した一時金のうち売買等に当たって買主に承継されない部分がある場合には、当該部分の運用益及び償却額を含まないものとする。)に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定するものとする【684】
建物が賃貸されている場合の借地権付建物も同様である。
「建物が賃貸されている場合の借地権付建物の鑑定評価」について基準には以下のように記載されています。
基準・留意借地権付建物で、当該建物が賃貸されているものについての鑑定評価額は、実際実質賃料(売主が既に受領した一時金のうち売買等に当たって買主に承継されない部分がある場合には、当該部分の運用益及び償却額を含まないものとする。)に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定するものとする【691】
これも本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ロ:誤
貸家及びその敷地の鑑定評価に当たっては、契約に当たって授受された預り金的性格を有する一時金の額及びこれに関する契約内容を勘案する必要があるが、譲渡的性格を有する一時金については勘案する必要はない。
「貸家及びその敷地の総合的勘案事項」について述べられた選択肢であり、基準には「契約に当たって授受された一時金の額及びこれに関する契約条件【685】」が記載されています。
契約に当たって授受された権利金の額が高いことにより賃料が低廉となっている場合等があるため、賃料の前払的性格を有する一時金(譲渡的性格を有する一時金)の額及びこれに関する契約条件についても勘案する必要があります。
従って、「勘案する必要はない」とする本肢は誤りです。
ハ:正
建物を取り壊すことが最有効使用と認められる自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、建物の解体による発生材料の価格から取壊し、除去、運搬等に必要な経費を控除した額を、当該敷地の最有効使用に基づく価格に加減して決定する。
「取り壊しが最有効使用の場合の鑑定評価」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意建物を取り壊すことが最有効使用と認められる場合における自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、建物の解体による発生材料の価格から取壊し、除去、運搬等に必要な経費を控除した額を、当該敷地の最有効使用に基づく価格に加減して決定するものとする【682】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ニ:正
区分所有者の管理費等の滞納の有無が、区分所有建物及びその敷地の価格形成に影響することがある。
「専有部分に係る個別的要因」について述べられた選択肢であり、基準には「区分所有者の管理費等の滞納の有無【704】」が記載されています。
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ホ:誤
自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、積算価格を標準に比準価格及び収益価格を比較考量して決定するが、建物が自用の場合の借地権付建物も同様である。
「自用の建物及びその敷地の鑑定評価」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定するものとする【680】
従って、「比較考量して」とする本肢は誤りです。