〔問題〕
証券化対象不動産の鑑定評価に関する次のイからホまでの記述のうち、誤っているものをすべて掲げた組合せはどれか。
イ 依頼者からエンジニアリング・レポートの提出がない場合で、不動産鑑定士が鑑定評価に必要となる専門性の高い個別的要因に関する調査を行うことが困難な場合には、原則として調査範囲等条件を付して鑑定評価を行う必要がある。
ロ 入手したエンジニアリング・レポートについては、鑑定評価への活用に際してその内容を客観的に検討・分析し、その妥当性を主体的に判断する必要があるが、入手したエンジニアリング・レポートの活用の有無に関わらず、当該エンジニアリング・レポートについて鑑定評価を行う上での対応方針を鑑定評価報告書に記載しなければならない。
ハ 専門性の高い個別的要因について、直近に行った鑑定評価の価格時点と比較して重要な変化があると認められる場合であっても、同一の不動産鑑定士が同一の証券化対象不動産の再評価を行う場合で、依頼者の承諾を得た場合には、内覧の全部又は一部の実施について省略することができる。
ニ 鑑定評価報告書には、エンジニアリング・レポートの調査が行われた日及び作成された日のほか、エンジニアリング・レポートを入手した日についても記載しなければならない。
ホ 不動産鑑定評価基準各論第3章において、「鑑定評価に必要となる専門性の高い個別的要因に関する調査」として具体的に挙げられている要因は、「公法上及び私法上の規制、制約等(法令遵守状況調査を含む。)」、「修繕計画」、「再調達価格」、「有害な物質(アスベスト等)に係る建物環境」、「土壌汚染」、「地震リスク」、「耐震性」、「地下埋設物」の8項目である。
⑴ イとハ
⑵ イとホ
⑶ ロとハ
⑷ ロとニ
⑸ ニとホ
解答
解説
この問題は、各論第3章第4節「証券化対象不動産の個別的要因の調査等」から問われている問題です。
イ:誤
依頼者からエンジニアリング・レポートの提出がない場合で、不動産鑑定士が鑑定評価に必要となる専門性の高い個別的要因に関する調査を行うことが困難な場合には、原則として調査範囲等条件を付して鑑定評価を行う必要がある。
「条件設定の可否」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意証券化対象不動産(各論第3章第1節において規定するものをいう。)の鑑定評価及び会社法上の現物出資の目的となる不動産の鑑定評価等、鑑定評価が鑑定評価書の利用者の利益に重大な影響を及ぼす可能性がある場合には、原則として、鑑定評価の対象とする不動産の現実の利用状況と異なる対象確定条件、地域要因又は個別的要因についての想定上の条件及び調査範囲等条件の設定をしてはならない。
従って、「条件を付して」とする本肢は誤りです。
ロ:正
入手したエンジニアリング・レポートについては、鑑定評価への活用に際してその内容を客観的に検討・分析し、その妥当性を主体的に判断する必要があるが、
この部分は正しい記載がされており、「エンジニアリング・レポートの活用の判断」について留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意エンジニアリング・レポートの活用に当たっては、不動産鑑定士が主体的に責任を持ってその活用の有無について判断を行うものであることに留意する必要がある【2523】
入手したエンジニアリング・レポートの活用の有無に関わらず、当該エンジニアリング・レポートについて鑑定評価を行う上での対応方針を鑑定評価報告書に記載しなければならない。
「エンジニアリング・レポートに関する記載事項」について基準には以下のように記載されています。
基準・留意エンジニアリング・レポートの内容を鑑定評価に活用するか否かの検討に当たっては、その判断及び根拠について、鑑定評価報告書に記載しなければならない【799】
これも本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ハ:誤
専門性の高い個別的要因について、直近に行った鑑定評価の価格時点と比較して重要な変化があると認められる場合であっても、同一の不動産鑑定士が同一の証券化対象不動産の再評価を行う場合で、依頼者の承諾を得た場合には、内覧の全部又は一部の実施について省略することができる。
「内覧の省略の可否」について述べられた選択肢であり、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意同一の証券化対象不動産の再評価を行う場合における物的確認については、本留意事項Ⅵ3.(1)に定めるところにより、内覧の全部又は一部の実施について省略することができる。この場合においては、各論第3章第4節Ⅲ(3)の表に掲げる専門性の高い個別的要因についても、直近に行った鑑定評価の価格時点と比較して重要な変化がないと認められることが必要である【2522】
従って、「省略できる」とする本肢は誤りです。
ニ:正
鑑定評価報告書には、エンジニアリング・レポートの調査が行われた日及び作成された日のほか、エンジニアリング・レポートを入手した日についても記載しなければならない。
鑑定評価報告書には、エンジニアリング・レポートの調査が行われた日及び作成された日のほか、エンジニアリング・レポートを入手した日についても記載しなければならない。【801】
「エンジニアリング・レポートに関する記載事項」について、基準には「エンジニアリング・レポートの調査が行われた日及び作成された日【801】」、「入手した日【802】」が記載されています。
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ホ:正
不動産鑑定評価基準各論第3章において、「鑑定評価に必要となる専門性の高い個別的要因に関する調査」として具体的に挙げられている要因は、「公法上及び私法上の規制、制約等(法令遵守状況調査を含む。)」、「修繕計画」、「再調達価格」、「有害な物質(アスベスト等)に係る建物環境」、「土壌汚染」、「地震リスク」、「耐震性」、「地下埋設物」の8項目である。
「鑑定評価に必要となる専門性の高い個別的要因に関する調査」について述べられた選択肢であり、基準には以下のものが記載されています。
基準・留意公法上及び私法上の規制、制約等(法令遵守状況調査を含む。)、修繕計画、再調達価格、有害な物質(アスベスト等)に係る建物環境、土壌汚染、地震リスク、耐震性、地下埋設物【803】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。