〔問題〕
建物に係る個別的要因に関する次のイからホまでの記述のうち、誤っているものをすべて掲げた組合せはどれか。
イ 設計、設備等の機能性は、建物の再調達原価を求める際の工事費の算定時に必要とされる項目であるとともに、還元利回りに影響を及ぼすことはない。
ロ 建物の性能に係る耐震性については、建物の築年数や耐震補強工事の実施の有無により、対象不動産の価格形成に影響を及ぼす可能性がある。
ハ 維持管理の状態の良否は、建物の減価の度合い及び将来見込まれる修繕費用の多寡に影響を与えるものであり、対象不動産の価格形成に影響を及ぼす可能性がある。
ニ 有害な物質の使用の有無及びその状態は、対策工事費等の要否及びその多寡に影響を与えるものであり、対象不動産の価格形成に影響を及ぼす可能性がある。
ホ 建物が新築直後である場合には、当該建物は敷地と適応し、環境と適合していることになるので、建物の鑑定評価額が、その再調達原価を下回ることはない。
⑴ イとロ
⑵ イとホ
⑶ ロとハ
⑷ ハとニ
⑸ ニとホ
解答
解説
この問題は、総論第3章第3節「個別的要因」から問われている問題です。
イ：誤
設計、設備等の機能性は、建物の再調達原価を求める際の工事費の算定時に必要とされる項目であるとともに、還元利回りに影響を及ぼすことはない。
本肢は、「設計、設備等の機能性」について述べられた選択肢です。
設計、設備等の機能性は、再調達減価及び減価に影響を与えるものです。設計不良、設備の不足、能率の低下等の減価要因が見られる場合、取引事例比較法、収益還元法などにもマイナスの影響を反映する必要があるため、収益還元法の還元利回りにも反映する場合があります。
従って、「影響を及ぼすことはない」とする本肢は誤りです。
ロ：正
建物の性能に係る耐震性については、建物の築年数や耐震補強工事の実施の有無により、対象不動産の価格形成に影響を及ぼす可能性がある。
本肢は、「建物の耐震性」について述べられた選択肢です。
建物の性能に係る耐震性は、再調達減価及び将来発生する減価に影響を与えるものです。
昭和56年6月から適用されている新耐震基準に基づくものかを築年数によって、大体把握することができますが、昭和56年6月以降に建てられた建物だからと言って基準に基づいているとは限らないため、確認が必要です。耐震補強工事等が必要な場合は価格にマイナスの影響を与えることになります。
従って、本肢の内容は正しいです。
ハ：正
維持管理の状態の良否は、建物の減価の度合い及び将来見込まれる修繕費用の多寡に影響を与えるものであり、対象不動産の価格形成に影響を及ぼす可能性がある。
本肢は、「維持管理の状態」について述べられた選択肢です。
維持管理の状態は、将来発生する減価に影響を与えるものです。点検や部品の交換が適切に行われ、維持管理の状態が優れている場合には、将来大規模修繕を行う必要性が緩和されたり、新築同様の家賃水準を維持でき、価格にプラスの影響を与えます。
従って、本肢の内容は正しいです。
ニ：正
有害な物質の使用の有無及びその状態は、対策工事費等の要否及びその多寡に影響を与えるものであり、対象不動産の価格形成に影響を及ぼす可能性がある。
本肢は、「有害な物質の使用の有無及びその状態」について述べられた選択肢です。
有害な物質の使用の有無及びその状態は、将来発生する減価に影響を与えるものです。
対策工事が必要な場合には、価格にマイナスの影響を与えることになります。
従って、本肢の内容は正しいです。
ホ：誤
建物が新築直後である場合には、当該建物は敷地と適応し、環境と適合していることになるので、建物の鑑定評価額が、その再調達原価を下回ることはない。
本肢は、「建物が新築の場合の鑑定評価」について述べられた選択肢です。
建物が新築だからといって敷地と適応し、環境と適合しているとは限りません。
例えば、賃貸人の事情などによって環境と不適合な建物しか立てられない場合があり、この場合には環境との適合を欠くことによる減価が発生するため、再調達減価を下回ります。
従って、「再調達原価を下回らない」とする本肢は誤りです。
