解答
解説
この問題は、総論第4章から問われている問題です。
(1):正
不動産の価格は一般の財と同様にその需要と供給との相互関係によって定まるが、一方で地理的位置の固定性や不増性、用途の多様性等の不動産の特性を有するために、その需要と供給及び価格の形成には、これらの特性の反映が認められる。
「需要と供給の原則」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意一般に財の価格は、その財の需要と供給との相互関係によって定まるとともに、その価格は、また、その財の需要と供給とに影響を及ぼす。【140】不動産の価格もまたその需要と供給との相互関係によって定まるのであるが、不動産は他の財と異なる自然的特性及び人文的特性を有するために、その需要と供給及び価格の形成には、これらの特性の反映が認められる。【141】
例えば、土地は不増性を有するため、需要が増加しても他の財と異なり、供給はあまり増加しません。
従って、本肢の内容は正しいです。
(2):正
収益分析法の適用に当たっては、収益配分の原則を活用している。
「収益配分の原則」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意土地、資本、労働及び経営(組織)の各要素の結合によって生ずる総収益は、これらの各要素に配分される。したがって、このような総収益のうち、資本、労働及び経営(組織)に配分される部分以外の部分は、それぞれの配分が正しく行われる限り、土地に帰属するものである【157】
「収益分析法」について、基準には以下ように記載されています。
基準・留意収益分析法は、一般の企業経営に基づく総収益を分析して対象不動産が一定期間に生み出すであろうと期待される純収益(減価償却後のものとし、これを収益純賃料という。)を求め、これに必要諸経費等を加算して対象不動産の試算賃料を求める手法である(この手法による試算賃料を収益賃料という。)【491】
これは、売上高から販売費・一般管理費及び経営者に帰属する利益等を控除して不動産に帰属する純収益を求め、必要諸経費等を加算する手法であり、収益配分の原則を活用したものです。
従って、本肢の内容は正しいです。
(3):正
収益還元法の適用における還元利回り及び割引率の算定に当たっては、変動の原則を活用している。
「変動の原則」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意不動産の価格も多数の価格形成要因の相互因果関係の組合せの流れである変動の過程において形成されるものである。したがって、不動産の鑑定評価に当たっては、価格形成要因が常に変動の過程にあることを認識して、各要因間の相互因果関係を動的に把握すべきである。特に、不動産の最有効使用(Ⅳ参照)を判定するためには、この変動の過程を分析することが必要である【144】
一方、「還元利回り」について、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意還元利回りは、市場の実勢を反映した利回りとして求める必要があり、還元対象となる純収益の変動予測を含むものであることから、それらの予測を的確に行い、還元利回りに反映させる必要がある【2282】
「割引率」について、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意割引率は、市場の実勢を反映した利回りとして求める必要があり、一般に1年を単位として求める。また、割引率は収益見通しにおいて考慮されなかった収益予測の不確実性の程度に応じて異なることに留意する【2331】
還元利回りと割引率は、収益の変動予測の不確実性を反映して求める必要があり、変動の原則を活用して求めます。
従って、本肢の内容は正しいです。
(4):正
不動産の価格は、その不動産の最有効使用を前提として把握される価格を標準として形成されるが、この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。
「最有効使用の原則」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(以下「最有効使用」という。)を前提として把握される価格を標準として形成される。この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである【149】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
(5):誤
鑑定評価に当たっては、不動産の価格に関する諸原則の法則性を認識し、活用すべきであるが、
この部分は正しい記載がされており、「価格に関する諸原則の活用」について基準には以下のように記載されています。
基準・留意不動産の経済価値に関する適切な最終判断に到達するためには、鑑定評価に必要な指針としてこれらの法則性を認識し、かつ、これらを具体的に現した以下の諸原則を活用すべきである【136】
不動産鑑定評価基準においては、「試算価格又は試算賃料の調整」における「各試算価格又は試算賃料が有する説得力に係る判断」として、「不動産の価格に関する諸原則の当該案件に即応した活用の適否」の検討が求められている。
「不動産の価格に関する諸原則の当該案件に即応した活用の適否」は、「各試算価格又は試算賃料が有する説得力に係る判断」ではなく、基準には「各試算価格又は試算賃料の再吟味」として記載されています。
従って、「各試算価格又は試算賃料が有する説得力に係る判断」とする本肢は誤りです。