解答
解説
この問題は、総論第5章第1節「対象不動産の確定」から問われている問題です。
(1)：正
対象確定条件を設定するに当たっては、鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点から当該条件設定の妥当性を確認しなければならないが、
この部分は正しい記載がされており、「対象確定条件の設定要件」について基準には以下のように記載されています。
基準・留意対象確定条件を設定するに当たっては、対象不動産に係る諸事項についての調査及び確認を行った上で、依頼目的に照らして、鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点から当該条件設定の妥当性を確認しなければならない【181】
未竣工建物等鑑定評価ではない場合には、実現性及び合法性の観点からの妥当性の確認までは求められていない。
「未竣工建物等鑑定評価」について基準には以下のように記載されています。
基準・留意未竣工建物等鑑定評価を行う場合は、上記妥当性の検討に加え、価格時点において想定される竣工後の不動産に係る物的確認を行うために必要な設計図書等及び権利の態様の確認を行うための請負契約書等を収集しなければならず、さらに、当該未竣工建物等に係る法令上必要な許認可等が取得され、発注者の資金調達能力等の観点から工事完了の実現性が高いと判断されなければならない【182】
これも本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
(2)：誤
土壌汚染の有無につき、調査範囲等条件を設定して当該要因を価格形成要因から除外して鑑定評価を行うに当たっては、鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないと判断されることに加え、土壌汚染の除去についての実現性を確認する必要がある。
「調査範囲等条件の設定要件」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意調査範囲等条件を設定することができるのは、調査範囲等条件を設定しても鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないと判断される場合に限る【187】
従って、「実現性の確認が必要」とする本肢は誤りです。
(3)：誤
個別的要因についての想定上の条件を設定する場合における実現性の確認に当たっては、所有者等の現況を変更する権限を持つ者に、現況の変更を行う意思や着手の確認を行う必要があるが、現況を変更するために必要な資力の確認までは求められていない。
述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
「実現性の確認」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意実現性とは、設定された想定上の条件を実現するための行為を行う者の事業遂行能力等を勘案した上で当該条件が実現する確実性が認められることをいう。【2082】
条件を実現するための資金がない場合には事業を遂行することができないため、資力についても確認する必要があります。
従って、「資力の確認は求められていない」とする本肢は誤りです。
(4)：誤
現況が貸家及びその敷地である不動産について、賃借人の存しない自用の建物及びその敷地であるものと想定して鑑定評価を行う場合は、権利関係に係る個別的要因について想定上の条件を付加する場合に該当する。
「対象確定条件」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意対象不動産の権利の態様に関するものとして、価格時点と異なる権利関係を前提として鑑定評価の対象とすることがある【180】
現況が貸家及びその敷地である不動産について、賃借人の存しない自用の建物及びその敷地であるものと想定して鑑定評価を行う場合は、対象確定条件に該当します。
従って、「想定上の条件を設定する場合に当たる」としている本肢は誤りです。
(5)：誤
不動産鑑定士は、依頼目的、利用者の範囲、条件設定の要件等を総合的に検討し、条件設定を行うことが妥当であると判断した場合は、依頼者との間で合意がなくても、条件設定を行うことができる。
「条件設定の要件」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意条件設定をする場合、依頼者との間で当該条件設定に係る鑑定評価依頼契約上の合意がなくてはならない【191】
従って、「合意がなくても行うことができる」とする本肢は誤りです。
