解答
解説
この問題は、総論第1章第2節「不動産とその価格の特徴」から問われている問題です。
イ：誤
土地の人文的特性の1つである「併合及び分割の可能性」の併合の例として、借地権付建物の所有者が敷地の所有権を取得するケースがあげられる。
この部分は正しい記載がされており、「人文的特性」として基準には「併合及び分割の可能性【15】」が例示されています。
この場合、併合後の建物及びその敷地の正常価格は、併合前の借地権付建物の正常価格と底地の正常価格の合計に等しい。
借地権付建物の価格は、市場性の減退、担保価値の減退、非流動性を反映して形成されます。また、底地の価格も、契約減価を反映した低廉な賃料収入から市場性の減退、担保価値の減退を反映して形成されます。併合前の借地権付建物の正常価格と底地の正常価格の合計は併合後の建物及びその敷地の正常価格を下回るのが通常です。
従って、「併合前と併合後が等しい」としている本肢は誤りです。
ロ：誤
価格と賃料の間には、いわゆる元本と果実との間に認められる相関関係を認めることができるから、
この部分は正しい記載がされており、「価格と賃料の関係」について基準には以下のように記載されています。
基準・留意価格と賃料との間には、いわゆる元本と果実との間に認められる相関関係を認めることができる【20】
築年の経過した建物を新たに賃貸する場合において、自用の建物及びその敷地の最有効使用が「建物を取り壊して更地化すること」と判定されるときは、その果実としての賃料は、ゼロとなる。
「建物及びその敷地の賃料」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意建物及びその敷地の正常賃料を求める場合の鑑定評価に当たっては、賃貸借の契約内容による使用方法に基づく建物及びその敷地の経済価値に即応する賃料を求めるものとする【760】
これは、建物及びその敷地の賃料は最有効使用ではなく、契約内容による使用を前提とするということです。
従って、「賃料はゼロとなる」とする本肢は誤りです。
ハ：正
土地は人文的特性として「用途の多様性」を有し、異なった使用方法を前提とする需要が競合する。
この部分は正しい記載がされており、「土地の人文的特性」について基準には「用途の多様性【15】」が例示されています。
更地の最有効使用としては、それらのうちから1つの使用方法を判定することとなるが、一棟の建物内において、複数用途が併存する使用方法を最有効使用と判定することは有効といえる。
不動産の鑑定評価においては、要因分析を通じて、最有効使用を判定する必要があります。
更地の最有効使用の判定においては、効用が最大となる建物の用途を判定します。その際、「店舗部分を有する高層事務所用地」等のように、複数の用途が併存する使用方法を想定することが可能です。
従って、本肢の内容は正しいです。
ニ：正
不動産は他の不動産とともにある地域を構成し、当該地域は、他の地域と区別されるべき特性を有する。
この部分は「不動産の地域性」、「地域の特性」について述べられており、基準には以下のように記載されています。
基準・留意不動産は、また、その自然的条件及び人文的条件の全部又は一部を共通にすることによって、他の不動産とともにある地域を構成し【17】
基準・留意そのいずれもが、他の地域と区別されるべき特性をそれぞれ有する【18】
従って、この部分は正しい内容が記載されています。
不動産の種別の分類は、このような不動産の地域性と地域の特性が前提となっており、不動産の鑑定評価における各手順を通じて重要な事項となっている。
「不動産の種別の分類」について留意事項には、以下のように記載されています。
基準・留意不動産の種別の分類は、不動産の鑑定評価における地域分析、個別分析、鑑定評価の手法の適用等の各手順を通じて重要な事項となっており【2005】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ホ：誤
不動産には、所有権のほか、地上権、地役権、賃借権等各種の権利利益が存立することが可能であるが、
この部分は正しい記載されており、「不動産の価格の特徴」について基準には以下のように記載されています。
基準・留意二つ以上の権利利益が同一の不動産の上に存する場合には、それぞれの権利利益について、その価格（又は賃料）が形成され得る【21】
各々の価格(又は賃料)は別々の市場において形成されるため、相互に影響を及ぼさないことに留意が必要である。
権利利益は、別々の市場において形成されますが、相互に影響を与えあっています。
例えば、一つの宅地を権利に関して分割した借地権と底地の価格が挙げられる。仮に賃料の増額改定が行われる場合、底地の価格は上がり、借地権価格は下がると考えられます。
従って、「相互に影響を及ぼさない」としている本肢は誤りです。
