〔問題〕
価格時点に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) 不動産の鑑定評価に当たっては、価格時点を定めずに不動産の鑑定評価を行うことがある。
(2) 過去時点の鑑定評価は、対象不動産の確認等が可能であれば、鑑定評価に必要な要因資料及び事例資料の収集が不可能な場合であってもできることがある。
(3) 価格時点を将来時点とする鑑定評価は、対象不動産の確定、価格形成要因の把握・分析など、すべて想定又は予測することとなり、不確実にならざるを得ないので認められていない。
(4) 価格時点を現在時点として設定した場合においても、継続賃料を求める鑑定評価の場合には、過去時点における対象不動産の価格を求める場合がある。
(5) 土地と建物からなる複合不動産の鑑定評価においては、土地と建物のそれぞれについて価格時点を定める必要がある。
解答
解説
この問題は、総論第5章第2節「価格時点の確定」から問われている問題です。
(1):誤
不動産の鑑定評価に当たっては、価格時点を定めずに不動産の鑑定評価を行うことがある。
「価格時点の確定の要否」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意不動産の鑑定評価を行うに当たっては、不動産の価格の判定の基準日を確定する必要があり、この日を価格時点という【194】
従って、「価格時点を定めずに鑑定評価を行える」とする本肢は誤りです。
(2):誤
過去時点の鑑定評価は、対象不動産の確認等が可能であれば、鑑定評価に必要な要因資料及び事例資料の収集が不可能な場合であってもできることがある。
「過去時点の鑑定評価の可否」について述べられた選択肢であり、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意過去時点の鑑定評価は、対象不動産の確認等が可能であり、かつ、鑑定評価に必要な要因資料及び事例資料の収集が可能な場合に限り行うことができる【2094】
従って、「資料の収集が不可能な場合もできる」とする本肢は誤りです。
(3):誤
価格時点を将来時点とする鑑定評価は、対象不動産の確定、価格形成要因の把握・分析など、すべて想定又は予測することとなり、不確実にならざるを得ないので認められていない。
「将来時点の鑑定評価の可否」について述べられた選択肢であり、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意特に必要がある場合において、鑑定評価上妥当性を欠くことがないと認められるときは将来の価格時点を設定することができるものとする【2096】
従って、「認められていない」とする本肢は誤りです。
(4):正
価格時点を現在時点として設定した場合においても、継続賃料を求める鑑定評価の場合には、過去時点における対象不動産の価格を求める場合がある。
本肢は、「過去時点の価格を求める場合」について述べられた選択肢です。
継続賃料を求める手法の1つである利回り法で継続賃料利回りを求める場合に、直近合意時点の基礎価格を求めたり、基礎価格の変動を求める必要があります。
「継続賃料利回りの求め方」について基準には以下のように記載されています。
基準・留意継続賃料利回りは、直近合意時点における基礎価格に対する純賃料の割合を踏まえ、継続賃料固有の価格形成要因に留意しつつ、期待利回り、契約締結時及びその後の各賃料改定時の利回り、基礎価格の変動の程度、近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等における対象不動産と類似の不動産の賃貸借等の事例又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃貸借等の事例における利回りを総合的に比較考量して求めるものとする【512】
従って、本肢の内容は正しいです。
(5):誤
土地と建物からなる複合不動産の鑑定評価においては、土地と建物のそれぞれについて価格時点を定める必要がある。
基準及び留意事項において、複合不動産の鑑定評価で、土地と建物の価格時点をバラバラに求めなければならないとする規定はありません。
従って、「それぞれについて価格時点を定める必要がある」とする本肢は誤りです。