〔問題〕
取引事例比較法に関する次の記述のうち、正しいものをすべて掲げた組合せはどれか。
イ 取引事例比較法は、市場において発生した取引事例を価格判定の基礎とするものであるから、多数の取引事例のほか売り希望価格、買い希望価格、精通者意見等の資料を幅広く収集する必要がある。
ロ 取引事例が特殊な事情を含み、これが当該事例に係る取引価格に影響していると認められる場合には、取引が行われた市場における客観的な価格水準等を考慮して適切に補正を行わなければならない。
ハ 事情補正のうち、金融逼迫や倒産時における法人間の恩恵的な取引は減額すべき特殊な事情に該当し、増額の補正を行う場合は特殊な事情に該当しない。
ニ 取引事例に係る不動産が近隣地域に存するものである場合には、地域要因の比較を行う必要はなく、個別的要因の比較を行えばよい。
ホ 対象不動産と取引事例の地域要因と個別的要因の比較については、それぞれの地域における地域要因が標準的な土地を設定して行う方法がある。
(1) イとロとハ
(2) イとロとニ
(3) イとニとホ
(4) ロとハとホ
(5) ハとニとホ
解答
解説
この問題は、総論第7章第1節「価格を求める鑑定評価の手法」から問われている問題です。
イ：正
取引事例比較法は、市場において発生した取引事例を価格判定の基礎とするものであるから、多数の取引事例のほか売り希望価格、買い希望価格、精通者意見等の資料を幅広く収集する必要がある。
「取引事例比較法で活用する資料」について述べられた選択肢であり、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意この手法の適用に当たっては、多数の取引事例を収集し、価格の指標となり得る事例の選択を行わなければならないが、その有効性を高めるため、取引事例はもとより、売り希望価格、買い希望価格、精通者意見等の資料を幅広く収集するよう努めるものとする【2186】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ロ：正
取引事例が特殊な事情を含み、これが当該事例に係る取引価格に影響していると認められる場合には、取引が行われた市場における客観的な価格水準等を考慮して適切に補正を行わなければならない。
「事情補正」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意取引事例が特殊な事情を含み、これが当該事例に係る取引価格に影響していると認められるときは、適切な補正を行い【368】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ハ：誤
事情補正のうち、金融逼迫や倒産時における法人間の恩恵的な取引は減額すべき特殊な事情に該当し、
この部分は正しい記載がされており、「金融逼迫や倒産時における法人間の恩恵的な取引【2200】」は基準には「減額すべき特殊な事情」として例示されています。
増額の補正を行う場合は特殊な事情に該当しない。
減額補正を行う場合と同様に、増額補正を行う場合も特殊な事情に該当します。
従って、「特殊な事情に該当しない」とする本肢は誤りです。
二：正
取引事例に係る不動産が近隣地域に存するものである場合には、地域要因の比較を行う必要はなく、個別的要因の比較を行えばよい。
「地域要因の比較の方法」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意取引事例に係る不動産が近隣地域に存するものである場合においては、対象不動産と当該事例に係る不動産との個別的要因の比較を行うものとする【371】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ホ：誤
対象不動産と取引事例の地域要因と個別的要因の比較については、それぞれの地域における地域要因が標準的な土地を設定して行う方法がある。
「間接的な比較方法」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意地域要因及び個別的要因の比較については、それぞれの地域における個別的要因が標準的な土地を設定して行う方法がある【372】
従って、「地域要因が標準的な土地」としている本肢は誤りです。
