解答
解説
この問題は、総論第7章第2節「賃料を求める鑑定評価の手法」から問われている問題です。
イ：正
宅地の賃料を積算法で求める場合、基礎価格は更地としての経済価値に即応した価格を下回ることもある。
「基礎価格」について述べられた選択肢であり、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意積算賃料を求めるに当たっての基礎価格は、賃貸借等の契約において、賃貸人等の事情によって使用方法が制約されている場合等で最有効使用の状態を確保できない場合には、最有効使用が制約されている程度に応じた経済価値の減分を考慮して求めるものとする【2505】
契約による減価がある場合には、更地としての経済価値を下回ることがあります。
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ロ：誤
建物及びその敷地の賃料を積算法で求める場合、対象不動産に関する減価償却費は、償却後の純収益に対応する期待利回りを用いるときには、積算法の適用において加算する必要諸経費等に計上しない。
「減価償却費」について述べられた選択肢であり、基準には「償却前の純収益に対応する期待利回りを用いる場合には、計上しない【479】」と、記載されています。
償却前の純収益に対応する期待利回りを用いるときには、二重計上を防ぐため、減価償却費は必要諸経費等に計上しない。
従って、「償却後の純収益」とする本肢は誤りです。
ハ：誤
賃貸事例比較法は、新規賃料を求める場合の手法であり、継続賃料を求める場合の手法ではない。
「賃貸事例比較法」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意不動産の賃料を求める鑑定評価の手法は、継続賃料にあっては差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法等がある【451】
従って、「継続賃料を求める手法でない」とする本肢は誤りです。
二：正
利回り法における継続賃料利回りは、直近合意時点における基礎価格に対する純賃料の割合を踏まえて求めるが、当該割合とならないこともある。
「継続賃料利回りの求め方」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意継続賃料利回りは、直近合意時点における基礎価格に対する純賃料の割合を踏まえ、継続賃料固有の価格形成要因に留意しつつ、期待利回り、契約締結時及びその後の各賃料改定時の利回り、基礎価格の変動の程度、近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等における対象不動産と類似の不動産の賃貸借等の事例又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃貸借等の事例における利回りを総合的に比較考量して求めるものとする【512】
期待利回りや賃料改定時の利回り等の他の利回りを比較考量するため、純賃料利回りと一致するとは限りません。
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ホ：誤
スライド法における変動率は、直近合意時点から価格時点までの間における経済情勢等の変化に即応する変動分を表すものであり、
この部分は正しい記載がされており、「変動率」について基準には以下のように記載されています。
基準・留意変動率は、直近合意時点から価格時点までの間における経済情勢等の変化に即応する変動分を表すものであり【518】
土地及び建物価格の変動、物価変動、整備された不動産インデックスを勘案して求めるが、所得水準の変動を示す各種指数は勘案する必要はない。
「変動率の求め方」について基準には以下のように記載されています。
基準・留意継続賃料固有の価格形成要因に留意しつつ、土地及び建物価格の変動、物価変動、所得水準の変動等を示す各種指数や整備された不動産インデックス等を総合的に勘案して求めるものとする【518】
従って、「所得水準を示す指数を勘案する必要がない」とする本肢は誤りです。
