解答
解説
この問題は、総論第9章第2節「記載事項」から問われている問題です。
イ:誤
貸家及びその敷地の鑑定評価において取引事例比較法を適用しなかった場合、その合理的な理由を記載しなくてもよい。
「適用しない手法に関する記載事項」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意対象不動産の種別及び類型並びに賃料の種類に応じた各論第1章から第3章に規定する鑑定評価の手法の適用ができない場合には、対象不動産の市場の特性に係る分析結果等に照らし、その合理的な理由を記載する【2433】
「貸家及びその敷地の鑑定評価」について基準には以下のように記載されています。
基準・留意貸家及びその敷地の鑑定評価額は、実際実質賃料(売主が既に受領した一時金のうち売買等に当たって買主に承継されない部分がある場合には、当該部分の運用益及び償却額を含まないものとする。)に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定する【684】
取引事例比較法は各論1章に規定された手法であるため、適用できない場合にはその合理的な理由を記載する必要があります。
従って、「記載しなくてよい」とする本肢は誤りです。
ロ:誤
同一の不動産の再評価を行う場合において内覧の全部又は一部の実施を省略することができると判断される場合には、当該判断根拠については記載しなくてもよい。
「実地調査を省略する場合の記載事項」について述べられた選択肢であり、基準には「実地調査の一部を実施することができなかった場合にあっては、その理由【588】」と、記載されています。
従って、「記載しなくてもよい」とする本肢は誤りです。
ハ:誤
農地の鑑定評価において収益還元法を適用しなかった場合、その合理的な理由を記載しなくてもよい。
「適用しない手法に関する記載事項」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意対象不動産の種別及び類型並びに賃料の種類に応じた各論第1章から第3章に規定する鑑定評価の手法の適用ができない場合には、対象不動産の市場の特性に係る分析結果等に照らし、その合理的な理由を記載する【2433】
「農地の鑑定評価」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意この場合における農地の鑑定評価額は、比準価格を標準とし、収益価格を参考として決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである【668】
従って、「記載しなくてよい」とする本肢は誤りです。
二:正
鑑定評価の依頼目的に対応した条件により特殊価格を求めた場合、正常価格の額を併記しなくてもよい。
「正常価格の併記の要否」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意正常価格又は正常賃料を求めることができる不動産について、依頼目的に対応した条件により限定価格、特定価格又は限定賃料を求めた場合は、かっこ書きで正常価格又は正常賃料である旨を付記してそれらの額を併記しなければならない【581】
基準及び留意事項において、特殊価格を求めた場合に正常価格を併記しなければならないという規定はありません。
従って、本肢の内容は正しいです。
ホ:正
実質賃料の鑑定評価を依頼された場合は、当該実質賃料が支払賃料と異なる場合であっても、支払賃料の額を併記しなくてよい。
「実質賃料の記載事項」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意支払賃料の鑑定評価を依頼された場合における鑑定評価額の記載は、支払賃料である旨を付記して支払賃料の額を表示するとともに、当該支払賃料が実質賃料と異なる場合においては、かっこ書きで実質賃料である旨を付記して実質賃料の額を併記するものとする【581】
鑑定評価で求める賃料は原則として実質賃料ですが、支払賃料の依頼があって一定の要件を満たす場合には、支払賃料も求めることができます。支払賃料を求める場合には実質賃料を併記する必要がありますが、実質賃料を求める場合には支払賃料を併記する必要はありません。
従って、本肢の内容は正しいです。