〔問題〕
底地の鑑定評価に関する次のイからホまでの記述のうち、誤っているものをすべて掲げた組合せはどれか。
イ 底地の鑑定評価に当たっては、前提となる借地権の取引慣行と成熟の程度の違いにより、適用する手法が異なる。
ロ 借地権設定者に帰属する経済的利益は、当該宅地の賃貸借等の期間に応じて異なるものである。
ハ 将来において一時金の授受が見込まれる場合には、当該一時金の経済的利益も借地権設定者に帰属する経済的利益を構成する場合があることに留意すべきである。
ニ 底地の価格は、借地権の付着している宅地について、借地権の価格との相互関連において借地権設定者に帰属する経済的利益を貨幣額で表示したものである。
ホ 底地を当該借地権者が買い取る場合と第三者が買い取る場合では、底地の鑑定評価額が異なることはない。
(1) イとロ
(2) イとホ
(3) ロとニ
(4) ハとニ
(5) ニとホ
解答
解説
この問題は、各論第1章第1節「土地」から問われている問題です。
イ:誤
底地の鑑定評価に当たっては、前提となる借地権の取引慣行と成熟の程度の違いにより、適用する手法が異なる。
「底地の鑑定評価」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意底地の鑑定評価額は、実際支払賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格及び比準価格を関連づけて決定するものとする【661】
底地の鑑定評価は、1通りなので、取引慣行と成熟度によって適用する手法が異なることはありません。
従って、「適用する手法が異なる」とする本肢は誤りです。
ロ:正
借地権設定者に帰属する経済的利益は、当該宅地の賃貸借等の期間に応じて異なるものである。
「借地権設定者に帰属する経済的利益」について述べられた選択肢です。
普通借地権が付着している底地は、更新可能性が高いため、支払賃料から必要諸経費等を控除した賃料の算定期間に対応する経済的利益が大きくなります。定期借地権の付着している底地の価格で、期間の満了に近づいている場合には、期間の満了とともに復帰する不動産の経済的利益が大きくなります。
従って、本肢の内容は正しいです。
ハ:正
将来において一時金の授受が見込まれる場合には、当該一時金の経済的利益も借地権設定者に帰属する経済的利益を構成する場合があることに留意すべきである。
「借地権設定者に帰属する経済的利益」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意将来において一時金の授受が見込まれる場合には、当該一時金の経済的利益も借地権設定者に帰属する経済的利益を構成する場合があることに留意すべきである【660】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ニ:
底地の価格は、借地権の付着している宅地について、借地権の価格との相互関連において借地権設定者に帰属する経済的利益を貨幣額で表示したものである。
「借地権設定者に帰属する経済的利益」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意底地の価格は、借地権の付着している宅地について、借地権の価格との相互関連において借地権設定者に帰属する経済的利益を貨幣額で表示したものである【659】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ホ:誤
底地を当該借地権者が買い取る場合と第三者が買い取る場合では、底地の鑑定評価額が異なることはない。
「限定価格となる場合」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意底地を当該借地権者が買い取る場合における底地の鑑定評価に当たっては、当該宅地又は建物及びその敷地が同一所有者に帰属することによる市場性の回復等に即応する経済価値の増分が生ずる場合があることに留意すべきである【662】
底地を借地権者が買い取る場合は増分価値が発生する場合があります。増分価値を反映して価格を求める場合は、限定価格として求めるべきであり、第三者が買い取る場合と異なります。
従って、「異なることはない」とする本肢は誤りです。