〔問題〕
下記のⅠからⅢまでの設例について、不動産の類型に関する⑴から⑸までの記述のうち、誤っているものはどれか。
Ⅰ Aは、土地の所有者であるBとの間で借地借家法に基づく借地権設定契約を締結の上、戸建住宅を建設し、当該住宅をCに賃貸した。
Ⅱ 数年後、売買によりAはBから当該土地の所有権を取得した。
Ⅲ さらに数年後、AはCとの建物賃貸借契約を終了し、自ら居住を開始した。
⑴ 「借地権付建物(建物は貸家)」は、Ⅰの時点の現実の利用状態を所与とした建物及びその敷地の類型である。
⑵ 「借地権」は、Ⅰの時点の現実の利用状態を所与とした宅地の類型である。
⑶ 「底地」は、Ⅰの時点の現実の利用状態を所与とした宅地の類型である。
⑷ 「建付地」は、Ⅱの時点の現実の利用状態を所与とした宅地の類型である。
⑸ 「貸家及びその敷地」は、Ⅲの時点の現実の利用状態を所与とした建物及びその敷地の類型である。
解答
解説
この問題は、総論第2章第2節「不動産の類型」から問われている問題です。それぞれの時点の状況を簡単な図を描いて整理すると解きやすいでしょう。

⑴:正
「借地権付建物(建物は貸家)」は、Ⅰの時点の現実の利用状態を所与とした建物及びその敷地の類型である。
Ⅰの時点では、Bの土地をAが借りて建物を建て、建物をCに賃貸しています。
Ⅰの時点の現実の利用状態を所与とした建物及びその敷地の類型は、借地権付建物(建物は貸家)です。
「借地権付建物の定義」について、基準には以下のように記載されています。
基準・留意借地権付建物とは、借地権を権原とする建物が存する場合における当該建物及び借地権をいう【71】
従って、本肢の内容は正しいです。
⑵:正
「借地権」は、Ⅰの時点の現実の利用状態を所与とした宅地の類型である。
Ⅰの時点の現実の利用状態を所与とした宅地の類型は、借地権又は底地です。
「借地権の定義」について、基準には以下のように記載されています。
基準・留意借地権とは、借地借家法(廃止前の借地法を含む。)に基づく借地権(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)をいう【64】
従って、本肢の内容は正しいです。
⑶:正
「底地」は、Ⅰの時点の現実の利用状態を所与とした宅地の類型である。
Ⅰの時点の現実の利用状態を所与とした宅地の類型は、借地権又は底地です。
「底地の定義」について、基準には以下のように記載されています。
基準・留意底地とは、宅地について借地権の付着している場合における当該宅地の所有権をいう【65】
従って、本肢の内容は正しいです。
⑷:正
「建付地」は、Ⅱの時点の現実の利用状態を所与とした宅地の類型である。
Ⅱの時点では、Aの土地にAの建物があり、建物をCに賃貸しています。
建物とその敷地の所有者が同一であるため、現実の利用状態を所与とした宅地の類型は、建付地です。
「建付地の定義」について基準には以下のように記載されています。
基準・留意建付地とは、建物等の用に供されている敷地で建物等及びその敷地が同一の所有者に属している宅地をいう【63】
従って、本肢の内容は正しいです。
⑸:誤
「貸家及びその敷地」は、Ⅲの時点の現実の利用状態を所与とした建物及びその敷地の類型である。
Ⅲの時点では、Aの土地にAの建物があり、Aが建物を使用収益しています。
Ⅲの時点の現実の利用状態を所与とした建物及びその敷地の類型は、自用の建物及びその敷地です。
自用の建物及びその敷地の定義について、基準には以下のように記載されています。
基準・留意自用の建物及びその敷地とは、建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であり、その所有者による使用収益を制約する権利の付着していない場合における当該建物及びその敷地をいう【69】
従って、「貸家及びその敷地」としている本肢は誤りです。