解答
解説
この問題は、主に総論7章第1節「価格を求める鑑定評価の手法」から問われている問題です。
イ：正
本肢は、各論台3章第1節「証券化対象不動産の鑑定評価の基本的姿勢」に関する問題となっています。
不動産鑑定士が共同し、複数の不動産の鑑定評価を行う場合には、鑑定評価の手法の適用において採用する各査定値について、対象不動産相互間の論理的な整合性を図る必要がある。
「複数の不動産鑑定士が共同して評価を行う場合」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意証券化対象不動産の鑑定評価を複数の不動産鑑定士が共同して行う場合にあっては、それぞれの不動産鑑定士の役割を明確にした上で、常に鑑定評価業務全体の情報を共有するなど密接かつ十分な連携の下、すべての不動産鑑定士が一体となって鑑定評価の業務を遂行しなければならない【775】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ロ：誤
本肢は、各論第3章第5節「ＤＣＦ法の適用等」に関する問題となっています。
証券化対象不動産の収益価格を求めるに当たっては、DCF法と直接還元法の両方を適用することが適切であり、得られた各価格を関連づけて求めることとされている。
「収益価格を求める手法」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意証券化対象不動産の鑑定評価における収益価格を求めるに当たっては、ＤＣＦ法を適用しなければならない。この場合において、併せて直接還元法を適用することにより検証を行うことが適切である【808】
従って、「各価格を関連づける」としている本肢は誤りです。
ハ：誤
本肢は、第4節「特定価格を求める場合に適用する鑑定評価の手法」に関する問題となっています。
証券化対象不動産は、収益性を重視した価格形成がなされていると考えられるため、鑑定評価の手法の適用において、原価法、取引事例比較法の適用は原則として不要である。
「証券化対象不動産の鑑定評価で適用する手法」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意基本的に収益還元法のうちＤＣＦ法により求めた試算価格を標準とし、直接還元法による検証を行って求めた収益価格に基づき、比準価格及び積算価格による検証を行い鑑定評価額を決定する【726】
従って、「原価法、取引事例比較法の適用は不要である」としている本肢は誤りです。
二：誤
本肢は、総論7章第1節「価格を求める鑑定評価の手法」に関する問題となっています。
DCF法の復帰価格の算定において使用する還元利回りと、直接還元法で使用する還元利回りは、原則として同率を用いることとされている。
「最終還元利回り」について述べられた選択肢であり、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意最終還元利回りは、価格時点の還元利回りをもとに、保有期間満了時点における市場動向並びにそれ以降の収益の変動予測及び予測に伴う不確実性を反映させて求めることが必要である【2357】
DCF法の復帰価格の算定において使用する還元利回りは最終還元利回りと言います。最終還元利回りは、不確実性を反映するため、基本的に直接還元法で使用する還元利回りよりも大きくなる傾向にあります。
従って、「同率を用いる」としている本肢は誤りです。
ホ：正
本肢は、総論7章第1節「価格を求める鑑定評価の手法」に関する問題となっています。
DCF法と直接還元法はともに収益還元法の手法であり、いずれの手法によって求めた価格も理論的には同一水準となるべきものである。
本肢は、「DCF法と直接還元法の違い」について述べられた選択肢です。
DCF法は、純収益及び復帰価格の変動予測を明示しているため、収益価格を求める過程に関する説得力に優れます。しかし、直接還元法においても純収益の変動予測は純収益を標準化する過程または還元利回りを求める過程において織り込まれているため、DCF法と直接還元法のいずれの手法によって求めた価格も理論的には一致します。
従って、本肢の内容は正しいです。
