〔問題〕 下記の【前提条件】に基づき、対象不動産について、実際に支払われている月額実質賃料を求める場合の計算結果として正しいものはどれか。
【前提条件】
用途 |
7階建オフィスビル内の一室(事務所) |
契約面積 |
250㎡ |
月額支払賃料 |
750,000円(3,000円/㎡) |
月額支払共益費 |
375,000円(1,500円/㎡) ※うち125,000円(500円/㎡)は実質的に賃料に相当する |
保証金 |
月額支払賃料の1ヵ月分 (退去時に全額返還され、利息は付かない) |
権利金 |
月額支払賃料の2ヵ月分(退去時に返還されない) |
運用利回り |
年2% |
平均入居期間 |
5年(近隣地域の事務所の平均入居期間) |
権利金の運用益及び償却額 |
※年賦償還率を使用して求めるものとし、年2%の年賦償還率は以下の通りとする。 期間 5年 0.2122 |
(1)3,500円/㎡
(2)3,505円/㎡
(3)3,611円/㎡
(4)4,111円/㎡
(5)4,833円/㎡
解答
解説
この問題は、総論第7章第2節「賃料を求める鑑定評価の手法」から問われている問題です。
「実質賃料の定義」について、基準には以下のように記載されています。
基準・留意実質賃料とは、賃料の種類の如何を問わず賃貸人等に支払われる賃料の算定の期間に対応する適正なすべての経済的対価をいい、純賃料及び不動産の賃貸借等を継続するために通常必要とされる諸経費等(以下「必要諸経費等」という。)から成り立つものである【455】
実質賃料は、支払賃料に預り金的性格を有する一時金の運用益及び賃料の前払い的性格を有する一時金の運用益及び償却額を加算して求めます。
「支払賃料の定義」について、基準には以下のように記載されています。
基準・留意支払賃料とは、各支払時期に支払われる賃料をいい、契約に当たって、権利金、敷金、保証金等の一時金が授受される場合においては、当該一時金の運用益及び償却額と併せて実質賃料を構成するものである【456】
ここでは、選択肢が単価であるため、単価のまま求めます。
本文では共益費のうち、実質的に賃料に相当する500円/㎡を加算する必要がある点に注意する必要があります。
本問の預り金的性格を有する一時金は保証金であり、前払い的性格を有する一時金は権利金です。
保証金の運用益は一時金の額に運用利回りを乗じて求めます。
3000円/㎡×1×0.02÷12=5円/㎡
権利金の運用益及び償却額は一時金の額に年賦償還率を乗じて求めます。
3000円/㎡×2×0.2122÷12=106.1円/㎡
実質賃料は、支払賃料に保証金の運用益、権利金の運用益及び償却額、共益費の賃料相当分を加算して
3000円/㎡+5円/㎡+106.1円/㎡+500円/㎡≒3,611円/㎡
となります。
従って、(3)が正解となります。