〔問題〕
不動産の価格形成要因に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
⑴ 不動産の鑑定評価を行うに当たっては、価格形成要因を市場参加者、特にどのような買い手が対象不動産を購入するのかという観点から明確に把握する必要がある。
⑵ 一般的要因とは、一般経済社会における不動産のあり方及びその価格の水準に影響を与える要因であり、地域分析や個別分析の判定の基礎となる。
⑶ 一般的要因のうち、社会的要因は不動産に働きかける外部要因として理解されるもので、宅地及び住宅に関する施策の状態や不動産の取引に関する規制の状態が含まれる。
⑷ 一般的要因の分析については、必ずしも鑑定評価報告書に記載する必要がない。
⑸ 一般的要因及び地域要因の分析に必要な資料は平素からできるだけ広くかつ組織的に収集しておくべきであり、個別的要因の分析に必要な資料は、対象不動産の種類、対象確定条件等案件の相違に応じて適切に収集すべきである。
解答
解説
この問題は、総論第3章第1節「一般的要因」から問われている問題です。
⑴:正
不動産の鑑定評価を行うに当たっては、価格形成要因を市場参加者、特にどのような買い手が対象不動産を購入するのかという観点から明確に把握する必要がある。
「地域要因における市場分析」、「個別分析における市場分析」について述べられた選択肢であり、基準にはそれぞれ以下のように記載されています。
基準・留意地域分析における対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、同一需給圏における市場参加者がどのような属性を有しており、どのような観点から不動産の利用形態を選択し、価格形成要因についての判断を行っているかを的確に把握することが重要である。あわせて同一需給圏における市場の需給動向を的確に把握する必要がある【271】
基準・留意個別的要因の分析においては、対象不動産に係る典型的な需要者がどのような個別的要因に着目して行動し、対象不動産と代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度をどのように評価しているかを的確に把握することが重要である【278】
鑑定評価に当たっては、市場参加者の属性や行動基準などを把握し、不動産鑑定士ではなく市場参加者の観点から価格形成要因の分析を行う必要があります。
したがって、本肢の内容は正しいです。
⑵:正
一般的要因とは、一般経済社会における不動産のあり方及びその価格の水準に影響を与える要因であり、
この部分は正しい記載がされており、「一般的要因定義」について基準には以下のように記載されています。
基準・留意一般的要因とは、一般経済社会における不動産のあり方及びその価格の水準に影響を与える要因をいう【77】
地域分析や個別分析の判定の基礎となる。
「一般的要因の活用」について、基準には以下のように記載されています。
基準・留意対象不動産の地域分析及び個別分析を行うに当たっては、まず、それらの基礎となる一般的要因がどのような具体的な影響力を持っているかを的確に把握しておくことが必要である【229】
これも本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
⑶:誤
一般的要因のうち、社会的要因は不動産に働きかける外部要因として理解されるもので、宅地及び住宅に関する施策の状態や不動産の取引に関する規制の状態が含まれる。
「宅地及び住宅に関する施策の状態」や「不動産の取引に関する規制の状態【86】」は、基準には社会的要因ではなく、行政的要因として例示されているので、本肢は誤りです。
⑷:正
一般的要因の分析については、必ずしも鑑定評価報告書に記載する必要がない。
「決定の理由の要旨」について述べられた選択肢であり、基準には「地域分析及び個別分析に係る事項【594】」が挙げられています。
つまり、一般的要因の分析について記載する必要があるという規定はないということです。
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
⑸:正
一般的要因及び地域要因の分析に必要な資料は平素からできるだけ広くかつ組織的に収集しておくべきであり、個別的要因の分析に必要な資料は、対象不動産の種類、対象確定条件等案件の相違に応じて適切に収集すべきである。
「資料の収集」ついて述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意一般資料及び地域資料は、平素からできるだけ広くかつ組織的に収集しておくべきである。個別資料は、対象不動産の種類、対象確定条件等案件の相違に応じて適切に収集すべきである【551】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。