解答
解説
この問題は、基準総論1章の様々な範囲から問われている問題です。
イ:正
本肢は、総論第1章第1節「不動産とその価格」に関する問題となっています。
不動産のあり方は、自然的、社会的、経済的及び行政的な要因の相互作用によって決定され、
「不動産のあり方」について基準には、以下のように記載されています。
基準・留意不動産のあり方は、自然的、社会的、経済的及び行政的な要因の相互作用によって決定されるとともに経済価値の本質を決定づけている。一方、この不動産のあり方は、その不動産の経済価値を具体的に表している価格を選択の主要な指標として決定されている。【8】
つまり、不動産のあり方は価格形成要因の相互作用によって決まるということです。そして、不動産の価格は不動産のあり方の影響の下にあると同時に、不動産のあり方に影響を与えるという二面性を持っているということになります。
不動産の価格はこれら要因の影響の下にあると同時に選択指標としてこれらの要因に影響を与えるという二面性を持つ。
「不動産の価格の二面性」について基準には、以下のように記載されています。
基準・留意不動産の経済価値は、基本的には、その不動産に対してわれわれが認める効用、その不動産の相対的稀少性、その不動産に対する有効需要を動かす自然的、社会的、経済的及び行政的な要因の相互作用によって決定される。不動産の価格とこれらの要因との関係は、不動産の価格が、これらの要因の影響の下にあると同時に選択指標としてこれらの要因に影響を与えるという二面性を持つものである【11】
つまり、不動産の価格は価格形成要因の影響の下にあると同時に、価格形成要因に影響を与えるという二面性を持っているということになります。
従って、本肢の内容は正しいです。
ロ:正
本肢は、総論第1章第1節「不動産とその価格」と第2節「不動産とその価格の特徴」に関する問題となっています。
土地は一般の諸財と異なり、自然的特性や人文的特性を持っており、
「土地の特性」について基準には、「土地は他の一般の諸財と異なって自然的特性や人文的特性を持っている【13】」と、記載されています。
自然的特性は、土地本来の特性であり、自然的特性は、土地と人が関係を持つことによって生じる特性です。
土地の持つ特性を理解しなければならないのは、個々の不動産のあり方が、その基本的要素である個々の土地の影響を大きく受ける
「土地と人間の関係」について基準には、以下のように記載されています。
基準・留意土地を我々人間が各般の目的のためにどのように利用しているかという土地と人間との関係は、不動産のあり方、すなわち、不動産がどのように構成され、どのように貢献しているかということに具体的に現れる【7】
つまり、土地と人間との関係は、不動産のあり方(どのように構成されているか=類型、どのように貢献しているか=種別)に具体的に現れるということです。不動産のあり方は、土地の特性の影響を大きく受けます。
例えば、不動産の人文的特性の一つである、併合・分割の可能性があるがゆえに、宅地を権利面で分割した借地権と底地という類型(不動産のあり方)が存在します。
従って、本肢の内容は正しいです。
ハ:誤
本肢は、総論第1章第2節「不動産とその価格の特徴」に関する問題となっています。
不動産は、その自然的条件及び人文的条件の全部又は一部を共通にすることによって、他の不動産とともにある地域を構成し、その地域の構成分子としてその地域との間に協働、代替等の関係にたち、その社会的及び経済的な有用性を発揮する。
「不動産の地域性」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意不動産は、また、その自然的条件及び人文的条件の全部又は一部を共通にすることによって、他の不動産とともにある地域を構成し、その地域の構成分子としてその地域との間に、依存、補完等の関係に及びその地域内の他の構成分子である不動産との間に協働、代替、競争等の関係にたち、これらの関係を通じてその社会的及び経済的な有用性を発揮するものである。【17】
従って、不動産は地域との間に、依存、補完等の関係にたつため、「協働、代替、競争等の関係にたつ」とする本肢は誤りです。
ニ:誤
本肢は、総論第1章第2節「不動産とその価格の特徴」に関する問題となっています。
不動産が属する地域には、その規模、構成の内容、機能等に従って各種のものが認められるが、そのいずれもが、特定の自然的条件及び人文的条件との関係を前提とする利用のあり方の多様性を基準として理解されるものである。
「地域の特性」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意地域には、その規模、構成の内容、機能等に従って各種のものが認められるが、そのいずれもが、不動産の集合という意味において、個別の不動産の場合と同様に、特定の自然的条件及び人文的条件との関係を前提とする利用のあり方の同一性を基準として理解されるものである【18】
つまり、地域は「不動産の利用のあり方が同じである」ということを基準としてまとまりを持つということです。
従って、「利用のあり方の多様性を基準とする」とする本肢は誤りです。
ホ:誤
本肢は、総論第1章第2節「不動産とその価格の特徴」に関する問題となっています。
不動産の現実の取引価格等は、その不動産に係る不動産市場の特性、取引等における当事者双方の能力の多様性と特別の動機により、売り急ぎ、買い進み等の個別的な事情が存在することが多いため、
この部分は正しい内容が記載されており、「取引価格の特徴」について基準には、以下のように記載されています。
基準・留意現実に成立した取引事例等には、不動産市場の特性、取引等における当事者双方の能力の多様性と特別の動機により売り急ぎ、買い進み等の特殊な事情が存在する場合もある【309】
これは、不動産の現実の取引価格等は必ずしも適正な価格とは限らず、割高・割安で取引される場合があるということです。
このような場合には必ず事情補正を行う。
しかし、取引価格は必ずしも事情補正が必要とは限りません。「事情補正の判断」について留意事項には、以下のように記載されています。
基準・留意事情補正の必要性の有無及び程度の判定に当たっては、多数の取引事例等を総合的に比較対照の上、検討されるべきものであり、事情補正を要すると判定したときは、取引が行われた市場における客観的な価格水準等を考慮して適切に補正を行わなければならない。【2193】
つまり、事情補正が必要か否かは多数の事例と比較して判断しなければならないため、「必ず事情補正を行う」とする本肢は誤りです。
また、特殊な事情が介在し、適切に補正できない場合にはそもそも事例の選択を見送るため、事情を補正する必要がありません。