〔問題〕
賃料の種類に関する次のイからホまでの記述のうち、正しいものをすべて掲げた組合せはどれか。
イ 正常賃料が前提とする市場概念は、正常価格を求める際の市場概念と同一である。
ロ 正常賃料及び限定賃料は、新規の賃貸借等の契約において成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料(新規賃料)である。
ハ 限定賃料と継続賃料は、ともに特定の賃貸借契約の当事者間において成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料である。
ニ 新規の賃貸借等の契約に際して求める賃料は、一般的には正常賃料であるが、依頼目的及び条件により継続賃料を求めることができる。
ホ 賃貸借契約が期間満了によって終了した後、従前と同じ賃貸借当事者で賃貸条件を変更して新たに賃貸借契約を締結する場合、継続賃料を求めることが妥当である。
(1) イとロとハ
(2) イとロとニ
(3) イとハとホ
(4) ロとニとホ
(5) ハとニとホ
解答
解説
この問題は、総論第5章第3節「鑑定評価によって求める価格又は賃料の種類の確定」から問われている問題です。
イ:正
正常賃料が前提とする市場概念は、正常価格を求める際の市場概念と同一である。
「正常賃料の定義」について述べられている選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意正常賃料とは、正常価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等(賃借権若しくは地上権又は地役権に基づき、不動産を使用し、又は収益することをいう。)の契約において成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料(新規賃料)をいう【221】
これは、正常賃料は正常は同一の市場概念を前提とした新規賃料であるということです。
従って、本肢の内容は正しいです。
ロ:正
正常賃料及び限定賃料は、新規の賃貸借等の契約において成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料(新規賃料)である。
本肢は「賃料の性質」について述べられた選択肢です。
「正常賃料の定義」について基準には、以下のように記載されています。
基準・留意正常賃料とは、正常価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等(賃借権若しくは地上権又は地役権に基づき、不動産を使用し、又は収益することをいう。)の契約において成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料(新規賃料)をいう【221】
また、「限定賃料の定義」について基準には、以下のように記載されています。
基準・留意限定賃料とは、限定価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等の契約において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料(新規賃料)をいう【223】
これは、正常賃料も限定賃料も、新たな賃貸借等の契約において成立する新規賃料ということです。
従って、本肢の内容は正しいです。
ハ:正
限定賃料と継続賃料は、ともに特定の賃貸借契約の当事者間において成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料である。
本肢は「賃料の性質」について述べられた選択肢です。
限定賃料は、併合又は分割に係る特定当事者間でのみ経済合理性が認められる賃料です。継続賃料は、不動産の賃貸借等の継続に係る特定の当事者間において成立すると考えられる賃料です。
つまり、限定賃料と継続賃料は、ともに特定の賃貸借契約の当事者間において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料です。
本肢は「適正な賃料」としており、基準の記載【223】と異なりますが、選択肢のイとロが正で、二が明らかに誤りですので、消去法で正解できる問題となっています。
ニ:誤
新規の賃貸借等の契約に際して求める賃料は、一般的には正常賃料であるが、依頼目的及び条件により継続賃料を求めることができる。
「求める賃料の種類」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意不動産の鑑定評価によって求める賃料は、一般的には正常賃料又は継続賃料であるが、鑑定評価の依頼目的に対応した条件により限定賃料を求めることができる場合がある【219】
従って、「継続賃料を求めることができる」とする本肢は誤りです。
ホ:誤
賃貸借契約が期間満了によって終了した後、従前と同じ賃貸借当事者で賃貸条件を変更して新たに賃貸借契約を締結する場合、継続賃料を求めることが妥当である。
本肢は「求める賃料の種類」について述べられた選択肢です。
同じ賃貸借当事者で、条件を変更して新たに賃貸借契約を締結する場合は、再契約となります。この場合、契約を更新するわけではないため、求める賃料の種類は、新規賃料となります。
従って、「継続賃料を求めることが妥当である」とする本肢は誤りです。