〔問題〕
対象不動産の市場の特性に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) 居住用不動産に係る市場の特性は、地域の名声や品位にも影響を受けることがあり、需給動向の的確な把握においてはこれらの事項にも留意する必要がある。
(2) 業務用不動産の場合、需要者層及び供給者層は個人ではなく法人となる。
(3) 市場の特性の把握に当たっては、建設業者や金融機関等への聴聞のほか、農地の評価であれば農林水産省、ホテルの評価であれば経済産業省の担当窓口への聴聞が不可欠である。
(4) 市場参加者の属性については、需要者の年齢や家族構成は個人情報であり、昨今では収集が困難であることから把握の必要はない。
(5) 取引事例比較法の適用において、対象地の存する地域の地価変動が激しいと把握される場合においては、地域要因の変動が激しい近隣地域以外の地域から取引事例を選択して直接個別的要因の比較を行い、比準価格を試算すべきである。
解答
解説
この問題は、留意事項の総論第6章「地域分析の適用について」から問われている問題です。
(1):正
居住用不動産に係る市場の特性は、地域の名声や品位にも影響を受けることがあり、需給動向の的確な把握においてはこれらの事項にも留意する必要がある。
「需給動向の把握で留意すべき事項」について述べられた選択肢であり、留意事項には、「 同一需給圏内に存し、用途、規模、品等等が対象不動産と類似する不動産に係る需給の推移及び動向【2149】」が例示されています。
居住用不動産の同一需給圏の地域的範囲は、地域の名声や品位の影響を受けるため、これらの事項を把握する必要があります。
従って、本肢の内容は正しいです。
(2):誤
業務用不動産の場合、需要者層及び供給者層は個人ではなく法人となる。
本肢は「市場参加者の属性」について述べられた選択肢です。
不動産が業務用不動産の場合、需要者層及び供給者層は個人の場合もあれば、法人の場合もあります。主たる需要者は法人だとしても、現実の市場では、多様な需要者・供給者が想定できます。
従って、「需要者・供給者は個人ではない」とする本肢は誤りです。
市場の特性の問題において、「需要者(供給者)は〇〇のみ」であるという選択肢は基本的に誤りと考えて良いでしょう。
(3):誤
市場の特性の把握に当たっては、建設業者や金融機関等への聴聞のほか、農地の評価であれば農林水産省、ホテルの評価であれば経済産業省の担当窓口への聴聞が不可欠である。
「市場の特性の把握方法」について述べられた選択肢であり、留意事項には、不動産業者や金融機関等への聴聞のほか、「公的機関、不動産業者、金融機関、商工団体等による地域経済や不動産市場の推移及び動向に関する公表資料を幅広く収集し、分析することが重要である。【2152】」と、記載されています。
公的機関の農林水産省、経済産業省の担当窓口への聴聞公表資料を収集することが必要ですが、農林水産省、経済産業省の担当窓口への聴聞は基本的に不要です。
従って、「農林水産省、経済産業省の担当窓口への聴聞が不可欠である」とする本肢は、誤りです。
(4):誤
市場参加者の属性については、需要者の年齢や家族構成は個人情報であり、昨今では収集が困難であることから把握の必要はない。
「市場参加者の分析で把握すべき事項」について述べられた選択肢であり、留意事項には、「主たる需要者層及び供給者層の年齢、家族構成、所得水準並びに需要者の存する地域的な範囲【2145】」が例示されています。
これは、市場参加者の属性については、需要者の年齢や家族構成について把握する必要があるということです。
従って、「年齢や家族構成を把握する必要はない」としている本肢は誤りです。
(5):誤
取引事例比較法の適用において、対象地の存する地域の地価変動が激しいと把握される場合においては、地域要因の変動が激しい近隣地域以外の地域から取引事例を選択して直接個別的要因の比較を行い、比準価格を試算すべきである。
本肢は「取引事例の選択」について述べられた選択肢です。
取引事例比較法の適用において、近隣地域の地価変動が激しい場合は、対象不動産の価格も大きく変動している可能性があるため、近隣地域の事例を選択するべきです。
従って、「近隣地域以外の地域から収集する」としている本肢は誤りです。
また、価格が短期間で変化していると考えられるため、なるべく価格時点に近い時点で取引された事例を選択する必要があります。