解答
解説
この問題は、総論第7章第1節「価格を求める鑑定評価の手法」から問われている問題です。
イ：正
対象不動産の再調達原価を求める際に、当該不動産が価格時点において一般に入手することが困難な建築資材等からなる場合には、原則として同等の有用性を持つものに置き換えて求めた原価（置換原価）を再調達原価とみなすものとする。
「置換原価」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意建設資材、工法等の変遷により、対象不動産の再調達原価を求めることが困難な場合には、対象不動産と同等の有用性を持つものに置き換えて求めた原価（置換原価）を再調達原価とみなすものとする【325】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ロ：誤
減価修正において、耐用年数に基づく方法による減価額を求める場合には、維持管理の状態にかかわらず、特に経過年数を重視して算定すべきである。
「耐用年数に基づく方法」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意経済的残存耐用年数とは、価格時点において、対象不動産の用途や利用状況に即し、物理的要因及び機能的要因に照らした劣化の程度並びに経済的要因に照らした市場競争力の程度に応じてその効用が十分に持続すると考えられる期間をいい、この方法の適用に当たり特に重視されるべきものである【352】
耐用年数に基づく方法においては、経済的残存耐用年数は特に重視すべき年数です。また、対象不動産の劣化の進行度は維持管理の状態の影響を強く受けるため、耐用年数に基づく方法の適用においては、維持管理の状態に留意する必要があります。
従って、「維持管理の状態に関わらず」、「耐用年数を重視して」とする本肢は誤りです。
ハ：誤
機能的要因による減価には、建物と敷地との不適応、設備の不足及びその能率の低下等のほか、
この部分は正しい内容が記載されており、「機能的要因」について基準には、以下のように記載されています。
基準・留意機能的要因としては、不動産の機能的陳腐化、すなわち、建物と敷地との不適応、設計の不良、型式の旧式化、設備の不足及びその能率の低下等があげられる【345】
代替、競争等の関係にある不動産又は付近の不動産との比較における市場性の減退等も含まれる。
「市場性の減退」は、機能的要因ではなく、経済的要因です。
「経済的要因」について基準では、「代替、競争等の関係にある不動産又は付近の不動産との比較における市場性の減退【347】」が例示されています。
従って、「機能的要因」とする本肢は誤りです。
ニ：正
対象建物の再調達原価を求めるに当たり、対象建物と類似の不動産に関する建設事例等の収集が困難であったため、直接法のみを適用した。
「再調達減価の求め方」について述べられた選択肢であり、基準では以下のように記載されています。
基準・留意再調達原価を求める方法には、直接法及び間接法があるが、収集した建設事例等の資料としての信頼度に応じていずれかを適用するものとし、また、必要に応じて併用するものとする。【330】
つまり、直接法と間接法は併用する必要はないということです。建設事例等の収集が困難な場合には、直接法のみを適用して再調達原価を求めることができます。
従って、本肢の内容は正しいです。
ホ：誤
建物引渡しまでの資金調達費用は発注者が本来負担すべき費用であるから、発注者が直接負担すべき通常の付帯費用に含まれるが、開発リスク相当額は、発注者が直接負担すべき通常の付帯費用に含まれない。
「付帯費用」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意通常の付帯費用には、建物引渡しまでに発注者が負担する通常の資金調達費用や標準的な開発リスク相当額等が含まれる場合があることに留意する必要がある【326】
つまり、付帯費用には開発リスク相当額等が含まれるということです。
従って、「開発リスク相当額は付帯費用に含まれない」とする本肢は誤りです。
