〔問題〕
取引事例比較法等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 対象不動産に取引事例比較法及び賃貸事例比較法を適用する場合において、取引事例と賃貸事例の両事例が同一地点にあっても、対象不動産の存する地域と取引事例及び賃貸事例が存する地域との地域格差が異なる場合がある。
(2) 戸建住宅地の更地の評価において、地域要因の比較をする場合には、例えば汚水処理場等の嫌悪施設等の有無を考慮する。
(3) 更地の鑑定評価において配分法を適用する場合における取引事例は、敷地が最有効使用の状態にあるものを採用すべきである。
(4) 採用した取引事例のうち、1つは転勤に伴う売り急ぎの取引事例であった。この事例は取引価格に影響をしていると認められるため、事情補正に当たり増額すべき特殊な事情と判断した。
(5) 同一需給圏内の代替競争等の関係にある不動産に係る取引事例と対象不動産との価格形成要因の比較を行う場合、各不動産の存する用途的地域の類似性が認められる際は、個別的要因の比較のみを行うこととなる。
解答
解説
この問題は、総論第7章第1節「価格を求める鑑定評価の手法」から問われている問題です。
(1)：正
対象不動産に取引事例比較法及び賃貸事例比較法を適用する場合において、取引事例と賃貸事例の両事例が同一地点にあっても、対象不動産の存する地域と取引事例及び賃貸事例が存する地域との地域格差が異なる場合がある。
「地域要因の比較における留意点」について述べられた選択肢であり、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意賃料を求める場合の地域要因の比較に当たっては、賃料固有の価格形成要因が存すること等により、価格を求める場合の地域と賃料を求める場合の地域とでは、それぞれの地域の範囲及び地域の格差を異にすることに留意することが必要である【1218】
従って、本肢の内容は正しいです。
(2)：正
戸建住宅地の更地の評価において、地域要因の比較をする場合には、例えば汚水処理場等の嫌悪施設等の有無を考慮する。
「住宅地の地域要因」について述べられた選択肢であり、基準には、「汚水処理場等の嫌悪施設等の有無【92】」が例示されています。
嫌悪施設の有無やその立地等は、居住の快適性が重視される住宅地の価格形成に大きく影響するため、慎重に分析する必要があります。
従って、本肢の内容は正しいです。
(3)：正
更地の鑑定評価において配分法を適用する場合における取引事例は、敷地が最有効使用の状態にあるものを採用すべきである。
「配分法を適用する際の留意点」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意なお、配分法及び土地残余法を適用する場合における取引事例及び収益事例は、敷地が最有効使用の状態にあるものを採用すべきである。【631】
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
(4)：正
採用した取引事例のうち、1つは転勤に伴う売り急ぎの取引事例であった。この事例は取引価格に影響をしていると認められるため、事情補正に当たり増額すべき特殊な事情と判断した。
「事情補正に当たり増額すべき特殊な事情」について述べられた選択肢であり、基準では、「相続、転勤等により売り急いで取引が行われたとき【2198】」が例示されています。
従って、本肢の内容は正しいです。
(5)：誤
同一需給圏内の代替競争等の関係にある不動産に係る取引事例と対象不動産との価格形成要因の比較を行う場合、各不動産の存する用途的地域の類似性が認められる際は、個別的要因の比較のみを行うこととなる。
「地域要因の比較」について述べられた選択肢であり、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意取引事例等として同一需給圏内の代替競争不動産に係るものを選択する場合において、価格形成要因に係る対象不動産との比較を行う際には、個別的要因の比較だけでなく市場の特性に影響を与えている地域要因の比較もあわせて行うべきことに留意すべきである【2176】
これは、同一需給圏内の代替競争不動産の事例を採用する場合にも地域要因の比較を行う必要があるということです。
従って、「個別的要因の比較のみを行う」とする本肢は、誤りです。
