解答
解説
この問題は、総論第5章及び総論第8章から問われている問題です。
イ：誤
本肢は、総論第5章第3節「鑑定評価によって求める価格又は賃料の種類の確定」に関する問題となっています。
鑑定評価に当たっては、依頼者に対し依頼目的及び依頼が必要となった背景を明瞭に確認する必要があるが、当該内容が鑑定評価額に影響を与えることはない。
「依頼目的と価格の種類の関係」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意不動産の鑑定評価によって求める価格は、基本的には正常価格であるが、鑑定評価の依頼目的に対応した条件により限定価格、特定価格又は特殊価格を求める場合がある【199】
つまり、依頼目的等に応じて条件が設定され、条件によって求める価格の種類は異なるということです。価格の種類が異なると、前提となる市場や市場性が異なるため、同一の不動産でも鑑定評価額は異なる場合があります。
従って、「依頼目的が鑑定評価額に影響を与えることはない」とする本肢は誤りです。
ロ：誤
本肢は、留意事項の総論第８章「鑑定評価の手順について」に関する問題となっています。
鑑定評価書の提出先、開示先を依頼者に確認する際には、取引の相手先、親会社、債権者といった属性だけでなく、個別具体的な名称を特定する必要がある。
「提出先、開示先の記載」について留意事項には、以下のように記載されています。
基準・留意鑑定評価書が依頼者以外の者へ提出される場合における当該提出先及び鑑定評価額が依頼者以外の者へ開示される場合における当該開示の相手方の確認については、依頼目的に応じ、必ずしも個別具体的な名称等による必要はない【2390】
従って、「個別具体的な名称を特定する必要がある」としている本肢は誤りです。
ハ：正
依頼者に対し、「対象不動産、依頼者、提出先、開示先」の各々と「関与不動産鑑定業者」、及び「関与不動産鑑定士」との利害関係を確認する必要があるが、確認の結果、利害関係があることが判明した場合でも直ちに依頼を謝絶することまでは求められていない。
「不動産鑑定士の責務」について、基準に以下のように記載されています。
基準・留意縁故若しくは特別の利害関係を有する場合等、公平な鑑定評価を害する恐れのあるときは、原則として不動産の鑑定評価を引き受けてはならない【39】
つまり、公平な鑑定評価を行えない場合には鑑定評価を引き受けてはならないということです。しかし、特別の利害関係があっても、利害関係を明確にすることで公平な鑑定評価を行える場合には、依頼を引き受けてもよいということです。
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ニ：誤
本肢は、総論第5章第1節「対象不動産の確定」に関する問題となっています。
想定上の条件及び調査範囲等条件の設定は、不動産鑑定士が条件設定に係る妥当性の検討を行った上で設定するものであるため、事前に依頼者の合意を要するものではない。
「条件設定」について述べられた選択肢であり、基準には「条件設定をする場合、依頼者との間で当該条件設定に係る鑑定評価依頼契約上の合意がなくてはならない【191】」と、記載されています。
従って、「依頼者の合意が不要である」とする本肢は誤りです。
ホ：誤
本肢は、留意事項の総論第９章「鑑定評価報告書について」に関する問題となっています。
鑑定評価の基本的事項の確定に当たり依頼者に確認した事項は、依頼者において承知の内容であり、鑑定評価書が依頼者の内部においてのみ利用される場合には、鑑定評価書への記載を要しない。
「対象不動産の確認の記載」について述べられた選択肢であり、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意総論第８章により確認した事項については、後日疑義が生じることのないように、当該事項とともに確認方法（書面によるものか、口頭によるものかの別等をいう。）及び確認資料について記載する。【2429】
従って、「確認した事項は鑑定評価報告書への記載を要しない」とする本肢は誤りです。
