〔問題〕
借地権及び底地の鑑定評価に関する次のイからホまでの記述のうち、正しいものをすべて掲げた組合せはどれか。
イ 借地権及び底地の鑑定評価に当たっては、借地権の価格と底地の価格とは密接に関連し合っているので、その関連性のほか、更地としての価格及び建付地としての価格との関連についても理解する必要がある。
ロ 他人の農地や山林をそのままの状態で使用する権利は、不動産鑑定評価基準における借地権に含まれない。
ハ 借地権取引の慣行について、借地権単独で取引の対象となっている都市又は地域では、建物の取引に随伴して取引の対象となることはない。
ニ 宅地の賃貸借契約等に関連して、借地権者から借地権設定者へ支払われる一時金には、預り金的性格を有するものや借地権の設定の対価とみなされるもの、借地権の譲渡等の承諾を得るためのものがあるが、いずれも、名称の如何を問わず借地権価格を構成するものである。
ホ 借地権者から借地権設定者へ支払われる一時金のうち、借地権の譲渡等の承諾を得るための一時金は、通常、権利金と呼ばれる。
(1) イとロ
(2) イとハ
(3) ロとニ
(4) ハとホ
(5) ニとホ
解答
解説
この問題は各論1章第1節「土地」から問われている問題です。
イ：正
借地権及び底地の鑑定評価に当たっては、借地権の価格と底地の価格とは密接に関連し合っているので、
「借地権価格と底地価格の関係」について述べられた選択肢であり、基準には「借地権及び底地の鑑定評価に当たっては、借地権の価格と底地の価格とは密接に関連し合っている【637】」と、記載されています。
その関連性のほか、更地としての価格及び建付地としての価格との関連についても理解する必要がある。
基準の「総合的に勘案すべき事項」には、「当該借地権の存する土地に係る更地としての価格又は建付地としての価格【654】」が挙げられています。
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ロ：正
他人の農地や山林をそのままの状態で使用する権利は、不動産鑑定評価基準における借地権に含まれない。
「借地権の定義」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意借地権とは、借地借家法（廃止前の借地法を含む。）に基づく借地権（建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権）をいう【64】
つまり、建物の所有を目的としない本肢は借地権に該当しないということです。
これは本肢の内容と合致しており、本肢の内容は正しいです。
ハ：誤
借地権取引の慣行について、借地権単独で取引の対象となっている都市又は地域では、建物の取引に随伴して取引の対象となることはない。
「借地権取引の慣行」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意借地権取引の慣行について、借地権が単独で取引の対象となっている都市又は地域と、単独で取引の対象となることはないが建物の取引に随伴して取引の対象となっている都市又は地域とがある【639】
「借地権単独で取引の対象となっている都市又は地域」というのはあくまでも地域の傾向であり、地域の傾向とは異なって、借地権が建物の取引に随伴して取引の対象となる場合はあります。
従って、「建物の取引に随伴して取引の対象とならない」とする本肢は誤りです。
ニ：誤
宅地の賃貸借契約等に関連して、借地権者から借地権設定者へ支払われる一時金には、預り金的性格を有するものや借地権の設定の対価とみなされるもの、借地権の譲渡等の承諾を得るためのものがあるが、いずれも、名称の如何を問わず借地権価格を構成するものである。
「一時金と借地権価格・底地価格の関係」について述べられた選択肢であり、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意一時金が借地権価格又は底地価格を構成するか否かはその名称の如何を問わず、一時金の性格、社会的慣行等を考察して個別に判定することが必要である。【2458】
従って、「一時金は名称を問わず借地権価格を構成する」としている本肢は誤りです。
ホ：誤
借地権者から借地権設定者へ支払われる一時金のうち、借地権の譲渡等の承諾を得るための一時金は、通常、権利金と呼ばれる。
本肢は、「一時金の名称」について述べられた選択肢です。
借地権の譲渡等の承諾を得るための一時金は、通常、名義書換料又は譲渡承諾料と呼ばれます。
従って、「権利金」としている本肢は誤りです。
「権利金の意義」について留意事項には、「借地権の設定の対価とみなされ、通常、権利金と呼ばれているもの【2457】」と、記載されています。
