〔問題〕
不動産の種類に関する次のイからホまでの記述のうち、誤っているものをすべて掲げた組合せはどれか。
イ 建付地は宅地の類型であるため、宅地に転換しつつある地域のうちにある土地の類型が建付地となることはない。
ロ 港湾、高速交通網等の利便性を指向する大工場地について、例えば「産業基盤指向型工業地」のように土地の種別を細分化することも可能である。
ハ 不動産の属する地域は固定的なものではないので、林地から農地へ転換しつつある地域や、 農地地域のうちにあって細分されたある種別の地域から、農地地域のうちにあって他の細分 された地域へと移行しつつある地域が存在する。
ニ 不動産は通常、土地とその定着物をいい、駐車場の設備やガスタンクも当然に含まれることから、対象不動産を自用の建物及びその敷地と判断した場合は、これらの設備の所有権も必ず含んだ評価となる。
ホ 林地地域とは、林業生産活動のうち木竹を除く特用林産物の生育の用に供されることが、自然的、社会的、経済的及び行政的観点からみて合理的と判断される地域をいう。
(1) イとロ
(2) ロとニ
(3) ハとホ
(4) イとニとホ
(5) ロとハとホ
解答
解説
この問題は、総論第2章第1節「不動産の種別」と第2節「不動産の類型」から問われている問題です。不動産の種別・類型は不動産の経済価値の本質を決定づけるため、重要な論点となっています。
イ：誤
建付地は宅地の類型であるため、宅地に転換しつつある地域のうちにある土地の類型が建付地となることはない。
本肢は「誤」が正解です。しかし建付地は宅地の類型の1つであるため、宅地に転換しつつある地域のうちにある土地(宅地見込地)、つまり宅地でない土地の類型が、宅地の類型となることはありません。本肢が誤であることに疑念は残りますが、選択肢の二とホが誤であることから、消去法で正解できます。
ロ：正
港湾、高速交通網等の利便性を指向する大工場地について、例えば「産業基盤指向型工業地」のように土地の種別を細分化することも可能である。
「種別の細分化」について述べられた選択肢であり、基準では「港湾、高速交通網等の利便性を指向する産業基盤指向型工業地等の大工場地【258】」の同一需給圏の範囲が例示されています。
つまり、「産業基盤指向型工業地場地」という工場地の種別の細分化は可能ということであり、本肢の内容は正しいです。
土地の種別は地域の種別に従うため、地域の種別を細分化して捉えることで、土地の種別の細分化が可能となります。地域の種別をなるべく細分化して捉えることで、同一需給圏の範囲、需要者の属性や行動基準をより的確に把握でき、鑑定評価の精度を一段と高めることができます。
ハ：正
不動産の属する地域は固定的なものではないので、林地から農地へ転換しつつある地域や、 農地地域のうちにあって細分されたある種別の地域から、農地地域のうちにあって他の細分 された地域へと移行しつつある地域が存在する。
「地域の種別」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意宅地地域、農地地域、林地地域等の相互間において、ある種別の地域から他の種別の地域へと転換しつつある地域及び宅地地域、農地地域等のうちにあって、細分されたある種別の地域から、その地域の他の細分された地域へと移行しつつある地域がある【50】
従って、本肢の内容は正しいです。
基準・留意不動産の属する地域は固定的なものではなくて、常に拡大縮小、集中拡散、発展衰退等の変化の過程にある【22】
不動産の属する地域は可変的であるため、動態的な観点から地域の種別を判定する必要があります。
ニ：誤
不動産は通常、土地とその定着物をいい、駐車場の設備やガスタンクも当然に含まれることから、対象不動産を自用の建物及びその敷地と判断した場合は、これらの設備の所有権も必ず含んだ評価となる。
不動産は通常、土地とその定着物をいいますが、この「定着物」は基本的に建物をいい、駐車場の設備やガスタンクは含まれません。
従って、対象不動産を自用の建物及びその敷地と判断した場合に、「これらの設備の所有権を必ず含んだ評価」とする本肢は誤りです。
ホ：誤
林地地域とは、林業生産活動のうち木竹を除く特用林産物の生育の用に供されることが、自然的、社会的、経済的及び行政的観点からみて合理的と判断される地域をいう。
「林地地域の定義」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意林地地域とは、林業生産活動のうち木竹又は特用林産物の生育の用に供されることが、自然的、社会的、経済的及び行政的観点からみて合理的と判断される地域をいう【49】
従って、「木竹を除く」とある本肢は、誤りです。
