〔問題〕
証券化対象不動産に係るDCF法の収益費用項目について、次のイからホまでの記述のうち、正しいものをすべて掲げた組合せはどれか。
イ 収益費用項目には、経常的な収益及び費用を計上する必要があり、5年に一度の収入や3年に一度の支出は含まれない。
ロ 運営収益には、対象不動産に設置された自動販売機収入やアンテナ収入、看板等の広告施設収入が含まれるが、賃借人に帰属する収入は含まれない。
ハ 運営費用のうち水道光熱費とは、「対象不動産の運営において電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用」をいい、水道光熱費収入に対応する費用を計上することから、共用部分に係る水道光熱費は含まれない。
ニ 運営費用のうち公租公課とは、対象不動産の所有者が負担する固定資産税及び都市計画税をいい、固定資産税のうち償却資産に係るものは含まれない。
ホ 対象不動産の取得に係る借入金の元本返済額は、運営費用のその他費用に計上する。但し、不動産投資において典型的な投資家が想定する借入金割合を基本とすることが必要である。
(1) イのみ
(2) ロのみ
(3) イとハ
(4) ロとホ
(5) ニとホ
解答
解説
この問題は、各論第3章第第5節「ＤＣＦ法の適用等」から問われている問題です。
イ：誤
収益費用項目には、経常的な収益及び費用を計上する必要があり、5年に一度の収入や3年に一度の支出は含まれない。
本肢は、「収益費用項目の構成要素」について述べられた選択肢です。
収益費用項目にはその他収入や修繕費がありますが、これらには更新料の収入や外壁コンクリートの補修費用など、臨時的に発生する費用も計上します。
従って、「数年に一度の収入や支出を含まない」とする本肢は誤りです。
ロ：正
運営収益には、対象不動産に設置された自動販売機収入やアンテナ収入、看板等の広告施設収入が含まれるが、賃借人に帰属する収入は含まれない。
本肢は、「運営収益の構成要素」について述べられた選択肢です。
収益費用項目は賃貸人が受け取る収益、賃貸人が支払う費用というように賃貸人の目線から計上するため、運営収益に賃借人に帰属する収入は含まれません。
従って、本肢の内容は正しいです。
ハ：誤
運営費用のうち水道光熱費とは、「対象不動産の運営において電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用」をいい、
この部分は正しい記載がされており、「水道光熱費の定義」について基準には「対象不動産の運営において電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用【818】」と、記載されています。
水道光熱費収入に対応する費用を計上することから、共用部分に係る水道光熱費は含まれない。
水道光熱費は、水道光熱費収入と共益費収入から支出する費用を計上します。
従って、「共用部分に係る水道光熱費は含まれない」とする本肢は誤りです。
ニ：誤
運営費用のうち公租公課とは、対象不動産の所有者が負担する固定資産税及び都市計画税をいい、固定資産税のうち償却資産に係るものは含まれない。
「公租公課の定義」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
「固定資産税(土地・建物・償却資産)、都市計画税(土地・建物)【818】」と、記載されています。
従って、「償却資産の固定資産税は含まれない」としている本肢は誤りです。
ホ：誤
対象不動産の取得に係る借入金の元本返済額は、運営費用のその他費用に計上する。
この部分は正しい記載がされており、借入金の元本返済額はその他費用に計上します。
但し、不動産投資において典型的な投資家が想定する借入金割合を基本とすることが必要である。
この部分は、「元本返済額」について述べられています。
その他費用への計上に当たっては、投資家が想定する借入金割合ではなく、市場における標準的な借入割合を基本とします。
従って、「投資家が想定する」としている本肢は誤りです。
