解答
解説
この問題は、総論第2章第1節「不動産の種別」と第2節「不動産の類型」を中心に多数の範囲と絡めて問われている問題です。
(1)：誤
地域の種別は、宅地地域、農地地域、林地地域等に分けられ、
この部分は正しい内容が記載されており、「地域の種別」について基準には、「地域の種別は、宅地地域、農地地域、林地地域等に分けられる。【46】」と、記載されています。
それぞれの地域の種別に応じた適切な鑑定評価の方式を選択する必要がある。
鑑定評価の方式は「宅地地域の鑑定評価」というような地域の種別でなく、宅地の類型・建物及びその敷地の類型に応じて、又は宅地以外の土地の種別(農地・林地)に応じて選択します。
従って、「地域の種別に応じて選択する」としている本肢は誤りです。
(2)：誤
土地がA社所有、建物がB社所有で、土地建物ともC社に賃貸されている不動産について、依頼目的及び条件設定の妥当性を考慮の上、所有者が同一人であり各賃貸借契約がないものとする対象確定条件下で自用の建物及びその敷地としての評価を行うこととした場合、
この部分は正しい内容が記載されており、「対象確定条件の例」について基準には、以下のように記載されています。
基準・留意対象不動産の権利の態様に関するものとして、価格時点と異なる権利関係を前提として鑑定評価の対象とすることがある【180】
本肢は現況は借地権付建物ですが、自用の建物及びその敷地として鑑定評価を行うという対象確定条件が設定されています。
対象建物の実際支払賃料をもとに収益還元法における純収益を査定する必要がある。
「収益還元法の有効性」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意この手法は、文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産以外のものには基本的にすべて適用すべきものであり、自用の不動産といえども賃貸を想定することにより適用されるものである。
つまり、自用の建物及びその敷地は賃貸を想定することにより、収益還元法を適用することができるということです。新しく賃貸することを想定するため、純収益の査定においては、積算法や賃貸事例比較法等により求めた新規賃料をもとにを求めるのが適切であると考えられます。
従って、「実際支払賃料をもとに査定する必要がある」とする本肢の内容は誤りです。
(3)：誤
林地を林地以外のものとするための取引に当たって鑑定評価を求められた場合、依頼目的から宅地へと転換しつつある地域と判断されることから、
そもそも、前提として林地を林地以外にするための取引であっても、地域の種別は依頼目的や現況に応じて判断するのではなく、合理的な用途として不動産鑑定士が判定する必要があります。従って、「依頼目的から宅地見込地と判断される」とする本肢は誤りです。
さらに、林地地域から農地地域への転換、つまり農地見込地である可能性も考えられます。
宅地の地域要因をより重視すべきである。
本問の対象不動産が仮に宅地見込地であるとしても、本肢には誤りがあります。「重視すべき地域要因」について基準には、以下のように記載されています。
基準・留意ある種別の地域から他の種別の地域へと転換し、又は移行しつつある地域については、転換し、又は移行すると見込まれる転換後又は移行後の種別の地域の地域要因をより重視すべきであるが、転換又は移行の程度の低い場合においては、転換前又は移行前の種別の地域の地域要因をより重視すべきである【105】
つまり、転換・移行の進行度によって重視すべき地域要因が異なるということです。転換・移行が進んでいる場合には、転換・移行後の種別の地域の地域要因を重視し、転換・移行が進んでいない場合には転換・移行前の種別の地域の地域要因をより重視すべきです。
従って、転換後の「宅地地域の地域要因を重視すべき」とする本肢は誤りです。
(4)：正
不動産鑑定評価基準では、基本的に種別及び類型に応じた鑑定評価の手法等を活用する必要があるとされており、対象不動産の種別及び類型に応じた不動産鑑定評価基準各論各章の規定並びに価格形成要因の分析により把握した市場の特性等と適用した手法との関係を鑑定評価報告書へ記載する必要がある。
「鑑定評価報告書の記載内容」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意適用した鑑定評価の手法について、対象不動産の種別及び類型並びに賃料の種類に応じた各論第1章から第3章の規定並びに地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等との関係を記載しなければならない。【599】
従って、本肢の内容は正しいです。
(5)：誤
対象不動産が農地である場合、通常は土壌汚染の有無及びその状態が価格形成に重大な影響を及ぼすことから、土壌汚染が存しないものとする想定上の条件が設定できない場合には依頼者に土壌汚染に係る詳細なレポートの提供を求め、当該資料の提供がなかった場合は依頼を謝絶しなければならない。
本肢の「土壌汚染の有無及びその状態」は、基準において「不動産鑑定士の通常の調査の範囲では、対象不動産の価格への影響の程度を判断するための事実の確認が困難な特定の価格形成要因【919】」として例示されています。
「事実の確認が困難な価格形成要因の扱い」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意価格形成要因について、専門職業家としての注意を尽くしてもなお対象不動産の価格形成に重大な影響を与える要因が十分に判明しない場合には、原則として他の専門家が行った調査結果等を活用することが必要である。【558】
土壌汚染の有無及びその状態は、原則として他の専門家が行った調査結果等を活用する必要があるため、真っ先に想定上の条件を設定しようとする本肢は誤りとなります。
