〔問題〕
個別的要因に関する次のイからホまでの記述のうち、正しいものをすべて掲げた組合せはどれか。
イ 個別的要因は、不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因をいい、土地、建物等の区分に応じて分類される。
ロ 宅地に共通する個別的要因として接面街路の幅員が挙げられるが、一般的に街路幅員が広いほど利便性や快適性は高まるため、住宅地であっても商業地であっても、その要因が価格形成に与える影響の程度は同等である。
ハ 建物の個別的要因を把握する際には、省エネルギー対策の状況について特に留意する必要があるが、昨今環境問題に対する需要者意識の高まり等により、その要因が価格形成に与える影響の程度は変化しているため、変動の原則や予測の原則に基づき日常からその動向に注意を払う必要がある。
ニ 地域要因と重複する個別的要因については、地域分析を適切に行えば、その要因に係る個別的な価格形成も反映できるため、個別的要因の分析を省略することができる。
ホ 商業地における個別的要因の主なものとして、商業地域の中心への接近性や顧客の流動の状態との適合性等が挙げられる。
(1) イとハ
(2) イとホ
(3) イとハとホ
(4) ロとハとニ
(5) ロとニとホ
解答
解説
この問題は、総論第3章第3節の「個別的要因」から問われている問題です。
イ:正
個別的要因は、不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因をいい、土地、建物等の区分に応じて分類される。
「個別的要因の定義」について述べられた選択肢であり、基準には「個別的要因は、不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因をいう。【107】」と、記載されています。
個別的要因は、土地に関する個別的要因、建物に関する個別的要因、建物及びその敷地に関する個別的要因に分けられて例示されています。土地の個別的要因は、土地の種別ごとに分けられて例示されており、建物の個別的要因は、建物の用途ごとに重視すべき要因が分けられて例示されています。
これは、不動産の類型、土地の種別、建物の用途ごとに需要者の属性は異なり、不動産に期待する効用も異なるためです。
従って、本肢の内容は正しいです。
ロ:誤
宅地に共通する個別的要因として接面街路の幅員が挙げられるが、一般的に街路幅員が広いほど利便性や快適性は高まるため、住宅地であっても商業地であっても、その要因が価格形成に与える影響の程度は同等である。
本肢は、「宅地(住宅地、商業地、工業地)に共通する個別的要因」について述べられた選択肢です。
住宅地では一般的に接面街路の幅員が広いほど日照、通風を確保できることから、快適性が高まるため、自動車も通りやすいことから利便性も高まり、価格にプラスの影響を与えます。 しかし、幅員が広すぎると排気ガス騒音、振動等が発生することから、快適性が阻害されて特に優良住宅地域では価格にマイナスの影響を及ぼします。
商業地であっても、接面街路の幅員が広いほど、斜線制限や許容容積率などの規制の影響を受けないために収益性が優れ、価格にプラスの影響を与えます。しかし、幅員が広すぎると商業地域の繁華性を分断することとなり、価格にマイナスの影響を及ぼす場合があります。
このように、個別的要因は、同一の要因でも土地の種別によって異なる影響を及ぼすため、「価格形成に与える影響の程度は同等である」とする本肢は誤りです。
ハ:正
建物の個別的要因を把握する際には、省エネルギー対策の状況について特に留意する必要があるが、昨今環境問題に対する需要者意識の高まり等により、その要因が価格形成に与える影響の程度は変化しているため、変動の原則や予測の原則に基づき日常からその動向に注意を払う必要がある。
「建物の各用途に共通する個別的要因」について述べられた選択肢であり、留意事項には「省エネルギー対策の状況」が例示【2044】されています。省エネルギー対策の状況は、東日本大震災以降特に需要者の意識が高まっている要因です。
現実の市場参加者が重視する要因によって価格に与える要因は変化するため、変動の原則【143】や予測の原則【166】に基づき、市場参加者の観点から価格形成要因の推移や動向等を動的に把握することが必要【74】です。
従って、本肢の内容は正しいです。
ニ:誤
地域要因と重複する個別的要因については、地域分析を適切に行えば、その要因に係る個別的な価格形成も反映できるため、個別的要因の分析を省略することができる。
「価格形成要因の分析」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意価格形成要因の分析に当たっては、収集された資料に基づき、一般的要因を分析するとともに、地域分析及び個別分析を通じて対象不動産についてその最有効使用を判定しなければならない。【557】
これは、最有効使用の判定を行うには一般的要因の分析、地域分析及び個別分析が必要ということです。
地域分析は要因が地域の不動産に与える影響を調べるものであり、個別分析は要因が対象不動産に与える影響を調べるもので、分析の視点が異なります。つまり、地域要因と重複する個別的要因についても、地域分析個別分析を行う必要があります。
従って、「個別的要因の分析を省略することができる」とする本肢は誤りです。
ホ:正
商業地における個別的要因の主なものとして、商業地域の中心への接近性や顧客の流動の状態との適合性等が挙げられる。
「商業地における個別的要因」について述べられた選択肢であり、基準には、「商業地域の中心への接近性」や「顧客の流動の状態との適合性」が例示されています【115】。
従って、本肢の内容は正しいです。