解答
解説
この問題は、総論第3章第3節の「個別的要因」の他、多数の範囲から問われている問題です。
イ:誤
建物が商業施設である場合に特に留意すべき個別的要因として、基準階床面積、天井高、床荷重、情報通信対応設備・空調設備・電気設備等の状況及び共用施設の状態等がある。
「建物が商業施設である場合に留意すべき個別的要因」について述べられた選択肢であり、留意事項には「各階の床面積、天井高等に留意する必要がある。【2061】」と、記載されています。
本肢で例示されている個別的要因は、「建物が事務所である場合に留意すべき個別的要因」です。
「建物が事務所である場合に留意すべき個別的要因」について留意事項には、以下のように記載されています。
基準・留意基準階床面積、天井高、床荷重、情報通信対応設備・空調設備・電気設備等の状況及び共用施設の状態等に留意する必要がある。【2059】
ここから、本肢の内容は商業施設で重視すべき要因ではなく、事務所で重視すべき要因となっていることがわかります。
商業施設と情報通信対応設備・空調設備等があまり関係がないことから、留意事項の内容を覚えていない場合であっても、本肢は誤りだとわかります。
ロ:正
建物及びその敷地に関する個別的要因として、敷地内における建物、駐車場、通路、庭等の配置、建物と敷地の規模の対応関係等建物等と敷地との適応の状態、修繕計画・管理計画の良否とその実施の状態がある。
建物及びその敷地に関する個別的要因として基準では、「敷地内における建物、駐車場、通路、庭等の配置、建物と敷地の規模の対応関係等建物等と敷地との適応の状態」「修繕計画・管理計画の良否とその実施の状態」が例示されています。【132】
従って、本肢の内容は正しいです。
建物と敷地の適応の状態については、均衡の原則【152】を活用して、「容積率を適切に充足しておらず、敷地に無駄な空間が生じていないか」等を分析する必要があります。
修繕計画・管理計画の良否とその実施の状態については、不動産が土地と建物一体として適切に管理されているかを分析する必要があります。
ハ:正
鑑定評価によって求める価格の種類は、正常価格とならないこともある。
「求める価格の種類」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意不動産の鑑定評価によって求める価格は、基本的には正常価格であるが、鑑定評価の依頼目的に対応した条件により限定価格、特定価格又は特殊価格を求める場合があるので、依頼目的に対応した条件を踏まえて価格の種類を適切に判断し、明確にすべきである。なお、評価目的に応じ、特定価格として求めなければならない場合があることに留意しなければならない。【199】
つまり、鑑定評価によって求める価格の種類は、正常価格とならないこともあるということです。
従って、本肢の内容は正しいです。
ニ:誤
対象不動産の類型は、必ず「自用の建物及びその敷地」、「貸家及びその敷地」、「借地権付建物」のいずれかになる。
「建物及びその敷地の類型」について述べられた選択肢であり、基準には以下のように記載されています。
基準・留意建物及びその敷地の類型は、その有形的利用及び権利関係の態様に応じて、自用の建物及びその敷地、貸家及びその敷地、借地権付建物、区分所有建物及びその敷地等に分けられる。【68】
区分所有建物及びその敷地の類型や、基準に挙げられているもの以外の類型も考えられるため、本肢は誤りです。
ホ:正
対象不動産の鑑定評価額は、収益価格で決定されることもある。
「鑑定評価の手法の適用」について述べられた選択肢であり、留意事項には以下のように記載されています。
基準・留意地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価方式の考え方が適切に反映された一つの鑑定評価の手法を適用した場合には、当該鑑定評価でそれらの鑑定評価方式に即した複数の鑑定評価の手法を適用したものとみなすことができる。【2423】
つまり、対象不動産の市場の特性を反映した複数の方式の考え方が反映されている1つの手法のみで決定することができるということです。
従って、鑑定評価額が収益価格のみで決定されることもあり、本肢の内容は正しいです。